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第三話 再会 5

扉を開けて教室に入ると、周りの視線が集中する。


気にせずに自分の席まで歩いていくと、瑞穂に声を掛けられた。



「な、夏紀君!?大丈夫なの?」



荷物を机に置き、椅子に座った後、瑞穂の質問に答えた。



「ああ、昨日は悪かったな、大分心配掛けた」


「い、いや無事でよかったけど、その…口調が」


「あ〜これ?まぁ……気分転換、かな?」


「へ〜、そうなんだ〜」



いやそんなんで信じるなよそこ、まぁ瑞穂らしいけどさぁ




そういえば瑞穂は人を疑うことをしない、いや知らないんじゃないかって思う。小さい頃に俺や晴斗に騙されても、すぐに忘れるし騙されたことに気付かない事もあった。何でこんなに無垢に育ったんだろう?弟はあれなのに……。




気付けば授業も再開して、周りも集中しだした。



………何か静かだと思ったら、前席の晴斗と楓が仲良く突っ伏して寝ているからだった。楓が寝ることは珍しい、多分今の授業のせいだろう。朝の一時間目から古典の授業、周りを見ると数名程寝ている姿がある。




ってか暇だな〜、古典の先生頑張って言ってるけど、何言ってかわからねーし、前の二人寝てるし、隣の瑞穂は授業真面目に受けてるし、はぁ〜、そう言えば蒼空って二回しか学校来てないのに授業ついてこれてんのか?





そんな事を思って、ぼーっと外を見てると授業が終わった。




終わった後も外を見ていたら、誰かに肩をたたかれた。ってか教室騒がしいな



「籐波君、早速来たぞ」


「ん?あ、蒼空か?」



たたかれた方を振り向くと、先程別れた蒼空が立っていた。



「授業、ちゃんと受けたのかい?」


「えっ?あ〜、まぁな」


「そうか、籐波君だってやればできるんだよ」



うぅ、なんか良心が痛むと言うか、何故そんなに笑顔なんだ蒼空?お前も少しは人を疑った方がいいと思うぞ?



「ど、どうも……、あっ!そういえば蒼空って、授業とか大丈夫なのか?」



さっきの授業中に考えていたこと、そのことを蒼空に聞いてみた。



「ああ、前に病院でやった内容だったから」


「え?それって……」


「病院では、やることが限られているからね」



蒼空はそう言って、少しだけ悲しそうな表情をした。だから何で俺はそう言う事に気付かないんだ。



「……悪い」


「どうしてキミが謝るんだ?」


「あ、いや、なんとなく」


「それにしても……私はこう、見られるのは好きじゃないんだが」



蒼空が周りを見渡して言った。俺も周りを見回すと色んな奴と目が合う。

なんかこのクラスの奴は、人を見るのが好きだよな?そんなに人間観察って楽しいか?


まぁ見てて飽きないのはいるよ?瑞穂とかね……いや、あれはどっちかって言うと、心配?なんだよな、なにかと危なっかしいんだよな


……まぁその話は置いといて、確かに周りの奴が気になるのも無理はない、昨日車に跳ねられて、今日学校を休むと思ってた奴が、見知らぬ女子生徒を連れ込んでる…って言うとあれだけど、でもその通りだしな〜


……じゃなくて!しかもその女子生徒が前にも言ったとおり、庇護欲満点の美人さんだから注目するのも無理はない。



「まぁ、蒼空は美人さんだからな」


「っ……」



思ったことを言ってみると、顔が少し赤くなり俯いた。……なんで?ってか蒼空もこういう顔するのか、ちょっと面白いかも



「それは……その……嬉しいけど、冗談、だろ?」


「冗談じゃねーよ、ん、悪い、ちょっとトイレ行ってくるわ」



席を立って蒼空に譲ると、教室を出てトイレに向かった。






* * *






「私が……美人?」



彼がトイレに行った後も、言われた言葉を頭の中で繰り返し、小さいながらも声に出ていた。



私が美人?有り得ないよ、普通の女の子を見たってこんなに痩せているのは私くらいだ。それとも、彼は痩せた子がタイプなのだろうか?それは……ちょっと照れるけど、でも私は「痩せている」ではなく、「痩せすぎている」だから……。学校の制服のスカートから出ている足が、自分でも分かるくらいに細いんだ。


だけど昔は頑張ったんだ。少しでも太るように食べたけど、食べた物が全部出てしまい逆に痩せてしまった。泣いたよ……いっぱい泣いた。それでも、泣いた分だけまた痩せた。それが分かって今度は呆れて笑ってしまった。涙を流し、乾いた声で、ただ笑っていた。


それでも、周りには気を使われたくない一心で、前より明るく振る舞って生活はしてみたけど、病院からの外出時に見られる周りの人の奇異の視線、この視線のせいで私は外出を嫌うようになったんだ。


それと、私と同じ病室の子で、私より早く退院する時にその子や家族に向けられる、担当医や看護婦の笑顔、私には向けられることのない笑顔、それが何より嫌だった……。



あとは誰も来ない面会人。唯一の家族である父は外国での仕事関係で半年に一度、来るか来ないか分からない、双子の姉である「夕海」姉さんは産まれてすぐに亡くなり、母も私達を産んだ後に息を引き取った。



帰って来ない家族や友人、頼れる人や相談する人がいない私は何度も死のうとした。だけど怖くて出来なかった。死ぬのが怖いんじゃない、死んだ後、もし母さんや姉さんに逢えるのなら合わせる顔がないから……。



私の信念はこんな物なのだろうか?……私はただ、普通の子のように、学校へ行って、友達を作って、皆と勉強をして、部活や委員会をやってみたり、休日にはオシャレをして友達と買い物を楽しんだり、そして……出来れば恋なんかして、失恋したり、色々な事があって恋人が出来て、デートをしてみたい。ただそれだけなのに、私には叶わない夢なんだ。



それが分かっているから、だからその生活に絶望して、死のうとしたのに……出来なかった。怖くて、怖くて、やっぱり生きたいって願っちゃうんだ。情けないよ……。





そして、あの日も死のうとしたんだ。だけど、結局怖くなり止めてしまった。その後、気を静めるために病院にある、立ち入り禁止の屋上へ行くと彼に出逢ったんだ。



だけど私はその時、凄く苛ついていた。死のうとしたときも自分の生きたいという心に邪魔をされて、一人になって気分を落ち着かそうと屋上に来てみると誰か分からない人に邪魔をされる。最悪だよ……。


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