第三話 再会 4
「おい、まだか?遅刻するぞ?」
「す、すまない、もう少しだ」
あれから、戻ってきた蒼空と一緒に外出届を書いて提出した後に、蒼空は電話で"学校に行く"と親御さんに伝えていた。
親の承諾を得ると、時間もそろそろいい具合になってきたから、行く準備をしているんだが、カーテン越しにいる蒼空が、"着替える"と言ったまま約10分が経過しているのに出て来ない。
「いい加減開けるぞ〜?」
「ま、待て!開けちゃダメだ!」
蒼空の制止を無視して、カーテンを開けると……まだ下着姿の蒼空がいた。
「っ!……悪い」
俺はカーテンを閉め、一応謝罪した。
少し待つと、再びカーテンを開けて蒼空が出て来た。顔が合わせづらい
「その…悪い」
「大丈夫だ、私が遅いのも悪いんだし……」
この人顔は笑ってるけど、目が笑ってなくて怖いんですけど……。
「ごめん……」
「もういい過ぎたことだ、さぁ、気を取り直して、学校へ行くぞ」
「……ああ」
気を取り直して?病院から学校へ向かった。
はずなのに……
「なんで車なんだよ?」
「私は体が弱いって言ったろ?」
何故こんな話をしてるかというと、病院の前に停まってる車のせいだ。
「そりゃ聞いたけどさ……」
「ここから学校まで大体7?ぐらいあるぞ?」
「車で行こう」
だって7?もあるんだよ?歩きで行ったら何時間掛かるんだよ?遅刻確実じゃん。
「はははっ、流石は籐波くんだ」
何が流石なのかよく分からんが……
「そろそろ行かなきゃ遅刻するぞ」
「あ、ああ」
それから車に乗り込み、学校へと向かった。
* * *
「ねぇ!ナッちゃん大丈夫なの?」
「ああ、昨日行ったけど、何ともなかったな」
朝からこれだ、楓と言いクラスの男女問わず、俺が自分の席についても、夏紀のことを何かと俺に聞いてくる。別に何でも知ってるわけじゃないのによ
いいねぇ〜、俺と違って愛され者は……嫌になってくるよ、お前と一緒にいることがさ……。
「ハルは大丈夫だったの?」
「えっ?あ、ああ」
「そう、よかった」
なんで、なんで俺の心配をするんだよ?周りは彼奴のことだけ想えばいいのに………。
俺は彼奴のようにはなれない、もう決心は付いたんだ。
だから俺を想う言葉や気持ちはいらねーよ。偽善としか思えないんだよ。
でも自分では付けたはずなのに……やっぱりお前が羨ましいんだよ、夏紀……。
* * *
周りでは一時間目を行っている最中、教室に向かう廊下途中で蒼空が口を開いた。
「聞きたいことがあるんだが」
「ん?どうかしました?」
「……何で、敬語なんだ?」
遅刻したけどなんとか学校に着き、一応職員室に向かって教師に昨日の事を説明した。勿論敬語でね、でもそれから蒼空が何故か変な目で見てきた。まぁ理由分かったけどね。
「……あ〜、これ?どう思う?」
「私個人の意見では、普通の方がいいと思うが」
「やっぱり?そろそろ止めようと思ってたし、止めるか」
「うん、そっちの方がいいと思うよ」
蒼空は理由を聞かず、この話は終わった。多分この性格が、俺が蒼空を気に入ってる部分なんだろうな
っていうか俺こんな簡単に止めちゃうんだ敬語、二ヶ月も使ってたから愛着湧いたり………しないな、少しウザかったし、じゃあ何で使ってるかって?仕方ないじゃん、色々あったんだから
会話をしている内に、一年生の教室辺りに着いた。
「そういえば、蒼空って何組だ?」
「私は四組だよ」
「ふ〜ん、じゃあ隣だな、俺三組だし」
言い忘れてたけど、最奥は全学年、四組になっている。
「あの…そのことなんだが」
「どした?」
蒼空は何か言いたそうなんだが言ってくれなきゃ伝わらないよ
「休み時間とか行っていいかな?」
「どこに行くんだよ?」
「……キミはホントに鈍いな、はっきり言うぞ?私は友人と言える人がいないんだよ」
なるほどね〜、何で俺ってそういうの気付かないんだろう?二日位しか来てないんだし当たり前だよな……なんか気まずい空気が流れた。気がする。
「まぁ、別に良いんだけどさ〜」
「やっぱり、迷惑かな…?」
この人絶対勘違いしてるよな〜、分かりやすいように落ち込んじゃってるし、なんかこういう顔を見ると罪悪感があるような……。
「そうじゃなくて、授業中とか休み時間、大半寝てるんだよ、俺」
「えっ?」
大体こういう顔するよな、ぽか〜って言うかさ、多分次蒼空が何言うか分かる気がする。
「キミは何しに学校に来てるんだ?」
予想的中、俺は少し笑ってしまった。
呆れてるな、そりゃそうだろ、だってこのまま行けば進級だって出来ないし。
「それよく言われる。まぁあれだ、日課?かな?」
「……はぁ〜、私はそろそろ教室に入るよ」
「お、おう」
何かバカには付き合いきれない、みたいな感じで教室入って行っちゃったよ……俺も行くか
そう思い、意を決して教室の扉を開けた。
「遅刻しました〜」




