第三話 再会 2
ハルくんに引っ張られて、夏紀君がいる病室から外に出て来た。
「ちょ、ちょっとハルくん!痛いよっ」
病室からずっと腕を掴まれてて、腕が痛かった。
「………」
「痛いってば!晴斗!」
「あ、悪い」
「まったく、どうしたのよ」
私は掴まれてた腕をさすりながら、少しだけ怒ってしまった。大人気ない。
「お前、気付かなかったのか?」
「なにを?」
なにがあったのか、私は全然気付かなかった
「夏紀かなり機嫌悪かった」
「そう、だった?」
ただ、起きたからぼーっとしてるだけだと思った。
「ああいう場合、そっとしとくのが一番いいだろ?」
「うん……、でもよかったよ、何ともなくて」
「あんな派手だったのに、目立った外傷無しって、奇跡だよな〜」
本当によかった、貴方がいなくなったら、学校ばかりか普段の生活もつまらなくなる。
貴方のことが大切だと思う人なら、それ以上に辛い生活しかないと思うんだ。
「よし!んじゃ帰るか?瑞穂?」
「うん!」
* * *
病室からでた後、お父さん達の所へ向かった。
ナツくんがいる場所から、エレベーターで四階降り、廊下を真っ直ぐ進むと、ソファーに人影があった。
「ミユちゃん?」
私が呼ぶとこちらを向いた、妹の心優が浮かない表情をしていた。
「お姉ちゃん…」
「どうしたの?お父さん達は?」
「中で先生の話聞いてる」
そう心優はドアを指を指した。中から話し声が聞こえてきた。少し深刻そうな話だ。
「ナツくん、どこか悪いの?」
「ううん、悪くはないんだけど、家庭事情」
心優が何を言いたいのか、すぐにわかった。私達とナツくんの関係、そして彼には絶対に知られてはいけないこと
「私ね、たまにわからなくなるの」
「………」
「もし本当のことを知ったら、お兄ちゃんは……」
真実、それはナツくんを除く家族四人の秘密
「いなくなっちゃうかもね」
「お姉ちゃんはそれでいいの?」
嫌に決まっている、いなくなるなんてきっと耐えられない、だけど
「いつかは知らなくちゃいけないんだよ」
「でも私は……嫌だよぅ」
そう言って心優は、泣いた。私だっていなくなったら絶対に泣くと思う。でも、泣くのは、ナツくんが真実を知り、いなくなるという事実があった後だ。
「でもね、知ったとしても、いなくならないかもしれないでしょう?」
「うん……」
「私はそう願ってる」
そう、願うしかないんだよ、真実を知った彼の支えになれれば、もしかしたら、私達の願いが現実になるかもしれない。
* * *
カーテンを開けると、先程の夢にも出て来た少女にそっくりな少女が、ベットの上で上半身だけ起こして座っている。
「……蒼空」
「おや、誰かと思ったらキミか、また逢ったね」
「ああ、昨日振りだな」
昨日にここの病院の屋上で出逢った。しかもその前には夢で似た奴に、偶然なのか運命なのかどうなんだろう。
「それはそうとキミね、折角心配して来ているのに、あの態度はどうかと思うが」
「……ちょっと、苛々しててな」
「まぁでも、私が口出しすることじゃないがな」
やはり疑問だ、彼女が本当に大切な人なのか、でもハッキリしてる事がある、嫌いではない、まだ逢って二回目だがそれだけはわかる。
「突っ立ってないで、ここに座ったらどうだ?」
「ん?ああ」
蒼空はベットの隣にある椅子に指をさし、俺もお言葉に甘え座ることにした。
「それでどうかしたのか?入院なんて」
「……下校途中に、跳ねられたらしい、車にな」
「また景色でも観てたのか?」
何気に失礼だ、まぁ確かに出逢いはそうだったけど、いつでも景色を観てる暇人じゃない、多分。
「いや、お前のこと考えてたら、跳ねられたんだ」
仕返しとばかりに、言ってみたが……
「その言葉は嬉しいね、でも裏を返せば私のせいになるな、すまない」
「………」
何かもっと違う反応を期待した俺が馬鹿だった。
「それで、私の何を考えてたんだ?」
「いや、もういいよ」
「なんだ気になるではないか、言ってくれないか?」
「……じゃあ言うけど、笑うなよ」
蒼空の目力に負け話すことになった。
昨日病院の屋上で出逢う前に夢で逢ったこと、夢で逢った少女が蒼空にそっくりだったこと、さっき目覚める前にも逢ったことなどを、簡単に説明した。
蒼空は笑わずに、真剣に聞き、相槌などをうったりしていた。
「……名前は、聞いたのか?」
「夕方の夕に、海で夕海[ユウナ]って言ってた」
「夕海………」
彼女はその言葉を呟くと考え込んだ。
「蒼空?どうした?」
「………すまない、ちょっと疲れた。休ませてもらうよ」
「あ、ああ」
蒼空はそう言った後、体を横にして布団を被った。
俺も椅子から立ち、カーテンを閉めた後、向かいの自分のベッドに戻り、俺もベッドに体を預けた。