始まりの日
初めまして。今回が初投稿になります。けい、と申します。相当緊張して前書きを書いてる状況です笑
まだまだ駄文とは思いますが、少しでも楽しんでいただけると幸いです。
桜舞う春四月-新生活の始まりに胸踊らせる人が多いのであろう中、俺-中村圭次はデスクの上で大量の資料に囲まれて、多忙に追われていた。
「なんなんだこの仕事量は…聞いてないよー天使サーン。」
「そう言われましても…これも神の仕事のうちですので。」
「そうだぜ、だいたいこの程度の仕事でごちゃごちゃ抜かすなよなせっかく生き返らせて貰ってんだからよ。ま、実際は死んでるままなんだけどな!ははははは!」
困ったような笑顔をうかべてこちらを見つめるのがシロ、男のような話し方で気が強そうなのがクロ、どちらもそれはもうものすごい美人な姉妹であり、姉のシロはその名の通り透き通った肌で少したれ目の金髪おっとりさんである。
妹のクロはこれまた名の通りの色黒で姉とは少し対照的な凛とした顔立ちといったところだ。出来るキャリアウーマンなどにいそうであるが…仕事のスピードはお察しといったところである。
こんな子達に囲まれて幸せだと思った時が俺にもあったものだがこいつら…クセの塊である。
姉はおっとり系毒舌、妹はクール系アホときたもんだから手に負えん。
「それにしても、圭次さんがここにいらしてからもう一月ですか、早いものですね」
「にしても一月で随分慣れたもんだよな、最初なんか私らをみてあんなに慌ててよー」
確かにあの慌てようといったら…
爆笑ものだよな!
などと俺を小馬鹿にしつつ笑う姉妹にうるせえ!とペンを投げつける。頭にクリーンヒットを受けたクロの反撃を華麗にスルーし騒ぐクロをシロが小馬鹿にし、ますます騒ぐ。そんなもう既に日常と化した茶番を繰り広げたところで俺はあの日のことを思い出していた。
今からちょうど一月と一日前、そう、俺が神になった日のことを-
「ここはどこだ。」
目が覚めたとき、俺は知らない場所にいて目の前には知らない少年がいた。地球の上に立っているような、そんな幻想的な場所だった。全く状況が呑み込めず、ぽかんとしていたところで男が口を開く。
「初めまして、中村圭次君!」
「ふふふ、ぽかんとしちゃって、状況が呑み込めてませんって感じかな?」
「いや、呑み込めないというか全てが分からんことだらけなんだけど…えーとまず君は誰でここはどこなんだ?」
目の前でわざとらしく首をかしげる少年に俺は努めて冷静に問いかける。
「おや、あまり動じないんだねぇ、感心だなあ。」
「いや、そんなことはないさ、本当はかなりパニックになって騒ぎ立てたいくらいなんだ、早く説明を頼む。」
俺はわりと正直な性格なのであった。
「あはは!まあそうだよね。それでは君が暴れる前に説明をはじめようか。」
「ああ、そうしてくれるとありがたいな。」
「そうだね、まずここはどこで僕は誰かという質問についてだけれど…簡単に答えるとここは神域と呼ばれる場所で僕はこの世界の創造神と呼ばれる存在だ。」
「はい?紙?」
「神だね」
「そうか、あの神か…」
ええええええええ!!!!!!??
本当に夢でも見ているのだろうか、俺はこんな夢を見るほど疲れていたのであろうか。しかしむしろそれくらいでなければ俺はこの状況を納得出来ない。いや、しかし…
「くすくす、またその顔だね、理解が追いついていない。」
「すんなり納得できる話でもねえだろ…まあそれにしてもこんな状況だし信じるしかねえよな。あんたが俺達の世界を作ったカミサマってわけだ。」
「そういうことだね。」
「なるほど、で、そのカミサマが俺になんのようなんだ?」
「そうだね、正しくそれが本題だ。きみ、ここに来る直前に何があったか覚えてるかな?」
「忘れるはずがない!」
蘇る記憶を打ち消し叫ぶ。
「神ならそういうの全部知ってんだろうが。」
「うん、そうだね。僕が言うのもなんだけど辛い人生だったね中村圭次。」
まだ興奮を消しきれないまま、
「ふん、そう思うなら救済の一つでも欲しかったもんだね、カミサマ。」
そう言うと少年、もとい創造神は不敵に笑う。
「ははは、それはシステム上出来ないんだよね申し訳ないけれど。」
1ミリも申し訳ないとは思っていなさそうな態度に小さくため息をつき、説明の続きを促す。
「ああ、そうそう説明の途中だったね。そう、確かに君は不幸だったんだ。不幸な生い立ちで生まれ、生きて、そしてそのままに…死んじゃった。23歳という若さでね。」
「…ああ、あながち間違っちゃいないな。もっとも幸せを知らないわけではなかったと思うがな。」
「そう、そのおかげかもね、君が恨みを残さなかったのは。」
「どういう意味だ」
また神は笑う。
「かなり不幸なまま死んでしまった人は大概が世界に恨みを残し、成仏出来ずにしがみついてしまうんだ。
君たちが悪霊なんて存在になるか、迷える魂になる、という形でね。
そしてその悪霊は言うまでもなく世界に悪い影響を及ぼしてしまうんだ。しかもあろうことか、ある悪い奴らの影響で悪霊たちが力をつけていてね、くわえてこちらには有効な手段もない。お手上げなんだよ。」
「なるほど…ある程度状況は分かったがそれじゃ俺を呼んだ説明になってないな。悪霊と俺については分かったがそれとここによんだこととどうつながる?」
この後の回答に悪い予想をしつつも俺は問いかける。
「おや?案外鈍いね?いや、実はもう気づいてたりするのかもね。
まあいい、その疑問にもお答えしよう。君の予想のとおり、その悪霊たちを君になんとかしてもらいたいのさ!」
「…」
「…」
「何か反応はないのかい?」
しょげたように下を向く神に答えてやる。
「いやなんとかっていわれても俺にそんな危ないヤツらを何とかする力はねえし、まずやり方とかもわからん。」
「ああ、その点は心配いらない。君には僕達神が神たる力、神力を授けるからね。
やり方も難しくない。メインの仕事は悪霊になる可能性のある迷える魂を浄化することだからね。
悪霊に対し立ち向かうのはレアケースだろう。
要するに君の主な仕事は魂の相談役みたいなものさ。たまに実力行使もあるだろうけどね。
どうだい?簡単だろう?このまま死んで転生の渦に流れ込むより断然いいと思うけど。」
「その転生の渦ってのはよく分かんねえが…
まあハエとかに転生するよりは自分を保てる方が良いのかもな…とも思うが、しかしなんだその仕事は?まるで神じゃねえか。
あんたも創造神ならそんな仕事ほかの神か天使なんかに任せればいいんじゃねえのか?」
「そう思うのも無理ないがあいにく神は僕1人しかいなくてね、すごく忙しいんだ。
しかも迷える魂の救済、これがメインの仕事だと言ったけれど、これには魂と心を通わせるのが必須条件でね。
僕には難しいしこういうのは同じような境遇の人の方がやりやすいものだろう?
加えて君はすごく魂が強い。闇に落ちることもないだろう。
そういう所を僕は推したわけさ。」
「なるほどな、良くわかったよ。」
「そうか、ではどうだい?僕のお願い聞き入れてくれるかな?」
神の説明を聞く中で俺の心は決まっていた。要は俺と似たような境遇の人たちを助けるって事だろう?
いかにもめんどくさそうな仕事だ、そう思える性格なら楽なんだろうな。
つくづく自分のこういう所が損だなと思う。
自分すら救えないくせに他人を救おうとしてしまう。お節介なんだろうな、と心の中で笑う。
「ああ、やってやるよ、その面倒な仕事をな。」
「そうか、ありがとうすごく嬉しいよ!これで二人目の神様誕生だね!」
…は?
「ちょっと待て、神様?なに?俺って神様になるの?」
「え?そうだよ?当たり前じゃない神力を得るってのはそういうことなんだからさ。
「は、ははははは。」
まさか神になる日が来るとは思わなかったかったな。
もう笑うしかないがそんな中決意を固める。
今から俺がやるのはいわば自分への救済でもあるのだから。
「よし、決意も固まったみたいだし神力を与えて君の仕事場まで転送するよ。
そこに2人の天使を置いたからね。ちょっとクセが強いけど君なら大丈夫だろう。
では、健闘を祈るよ、新たな神、中村圭次。」
言い終わると同時に俺の視界は白に包まれる。
「ここはどこだ」
目を覚ますと知らない家の中だった。そして顔の前には女の子が2人。
状況が思い出せなかった俺は…
「ぎゃああああああ!!!!!!」
「ひっ!姉さん!?なんだこいつ!叫びだしたぞ!」
「落ち着いて、クロきっと異常なのよ。」
今にして思えば2人の顔が異様に近かったのが原因だが、この件を俺は最後までからかわれることになる。
何はともあれ、ここから俺の神生活は始まったのであった。
「不幸だった青年。そんな魂が神となって迷える魂たちを救っていく、か。ふふふ、一体どう転ぶんだろうねえ。不安かもしれないけれど心配しなくていい。どんな結果になろうとも僕はそれを歓迎できるからね。」
始まりの日、いかがでしたでしょうか?
まだ導入部分ですがこの作品は愛、幸や不幸、などをテーマに書いていきたいと思っています。
つまらないと感じる方も多いでしょうが、たくさんのコメント頂けるととても幸いです。