忘れていた思い出
麗奈は中学生になった。
何がきっかけかは分からないが、友達数名から無視され仲間外れにされるようになった。
いや、もともと友達でもなかったかもしれない。辛い過去だったからだろうか。記憶から自然と消していたが、20年経ってその頃の記憶が蘇ることとなった・・・
ふと卒業アルバムを開いていくと、見たくないページが目に入ってきた。給食の時間を収めた1カット。1ページの半分を占めたその写真の真ん中に、一人うつむいている少女が写っていた。
麗奈だった。
麗奈はすぐにアルバムを閉じて、段ボールにしまった。
麗奈は強がって、学校でも家でも極力気丈に振る舞っていた。周りの友達も見て見ぬフリ。双子の妹も同級生だから、当然気付いているはずなのに知らん顔。
そんな異変にもちろん親も気付かない。
私には興味もなければ、いじめられていると知れば「お前が悪い」と言われるだろう。
母は教師なのだ。自分の娘がいじめられているなんて世間に知られたら恥だと思うだろう。人一倍世間体を気にする人だから。
姉と妹のことは「自慢の娘」だと思っているが、私に対しては「厄介者」「ダメな子」と突き放していた。
実際、私はダメな子だった。
ピアノ・バレエ・プール・習字・そろばん、塾はどれも続かないし、すぐキレるし、姉妹にひどいことばかりしていた。
自分でもそんな自分が嫌いだった。
ただ愛されたい。
ただ抱きしめてほしい。
ただ話を聞いてほしい。
ただ認めてほしい。
ただ大切にされたい。
ただ甘えたい。
ただ私の存在に気付いてほしい。
それが素直に伝えられなかった。
素直になれない私は、可愛くなかった。