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9.駆鬼

本日2話目の投稿です。

8話をご覧になっていない方は、先に8話をご確認下さい。

オレを…集落を襲った怪物が冒険者の一団と戦闘を繰り広げている。右眼で見た限り、冒険者達のレベルはそこそこに高いようで、怪物たちに対応出来ているみたいだが、10人ほどの冒険者に比べて、化け物たちの数が多い。

怪物たちは、オレが見た細身の赤黒い筋肉の鎧を全身に纏ったやつだ。あの時は、混乱していたしあまり怪物を観察する余裕などなかったが、あの叫び声やシルエットは間違いなくあいつ等だ。『逃走吸収』の効果が継続していると仮定して、あの時のような逃げ出したい気持ちが起きないってことは、あの日の母を殺した奴は居ないのか?


「…あれは『ソニック・オーガ』ね。数は20、今見えるので全部なはずよ」


ソーリスさんが、青い顔でオレに情報を教えてくれた。ドラム村を襲ったのも恐らくあの怪物たちだ。もしかしたらソーリアさんのトラウマになっているのかもしれない。それでも気丈にも観察し、情報を伝えてくれる。強い人なんだな、と素直に思えた。


「『魔族』が率いていて、どこかに伏せている可能性もあるのでは?」

「可能性はあるかもしれないわね。でも、少なくとも、この周辺ではないわ。私の耳で聞いても何も聞こえないもの」


そういいながら、ソーリスさんは弓を背中から下し矢を番えた。緊張からか、手が少し震えている。

にしても、『超聴覚』ってそんなことまでわかるのか。万能探知能力だな。


「私の力量だと、牽制ぐらいにしかならないと思うけど、ここから援護するわ。あなたはどうする?」

「すいません、少し待って下さい。調べたいことがあります」


ソーリスさんに待ってもらうように言ったと同時に、背中に背負った剣を抜きソニック・オーガに『鑑定の魔眼』を発動する。


○一一一一一一一一一一一一○

l名前:ソニック・オーガ(ノーネーム)

l種族(状態):鬼種(隷属)

lLV:11(1518/4800)

lHP:60/60

lMP:5/5

l攻撃力:58

l守備力:37

l行動力:69

l幸運 ;11

lスキル

l-爪術(2/5LV)

l-咆哮(2/5LV)

○一一一一一一一一一一一一○


毛熊よりレベルが下だが、毛熊と互角以上のステータスだ。HPが低いぐらいか?それでもHPもリーダー狼ぐらいはある。あの一匹一匹がこのステータスかよ…。


「ソーリアさん、私は今からオーガの後ろに回り込み挟撃します。あの道の狭さだと、オーガも2,3体でしか同時に対応出来ないはずです」


オーガの大きさは4つ足歩行時の状態で、縦横1.5mほどだ。初めて見たときは筋肉の塊で力で押し通すような印象を受けたが、今見ると絞った筋肉で、機動性を生かした戦法を得意としているように見える。

街道は2つの高台に挟まれているため、足を止めて戦っている奴もいた。その機動性は生かし切れていない。地形はこちらの方が有利だ。


「分かった、タイミングは任せるわ」

「では、私が出た3秒語にお願いします。……行きます!」


草むらに身をひそめていたオレは、ソニック・オーガの一番後ろに回り込み、最後尾のオーガに切りつけた。


「『パワースラシシュ』!」


初めて実戦での『アーツ』の発動だったが、上手く成功したようだ。剣から青白いオーラのようなものが出ている。

だが、オレの胴体を切断しようとした一撃は、後ろを向いていたオーガの右腕、二の腕から下を切断する事できたのだが、胴体にはほとんど食い込まず、斬られたことに気付いたソニック・オーガに、身をよじられただけでわずかに食い込んでいた剣を外された。左腕から繰り出された、裏拳の一撃を何とか躱す。


「ギャォォォオオオ!!」


片腕を斬られ、どうやらご立腹らしい。ソニック・オーガが悍ましい咆哮を上げた。オレはややオーガから離れて、様子を伺う。次の瞬間、オーガの左肩に矢が突き刺さった。ソーリスさんからの援護だろう。

いくつもの突然の出来事に、ソニック・オーガが思わず後ろに蹈鞴を踏んだ瞬間にオレは一歩踏み込んだ。首を狙い剣を振ると、ソニック・オーガの首と胴体が分かたれ、血が勢いよくあふれ出す。後ろに倒れ込んだソニック・オーガに気付き、3匹のオーガがこちらに振り向いた。


(悪いがその血、使わせて貰うよ!)


『液体操作』を発動し、血を操る。MP2を消費し、15ℓ分の血を操る。ソーリスさんにはバラしてしまったし、ほかの冒険者にもバレてしまってもあまり大差ないだろう。、油断していたらソニック・オーガに殺されてしまう。


(空中に5つの水球を作り、全て濃硫酸に。その後、オーガの頭を狙う)


ソニック・オーガから出きった血は、5つの水球に形どり宙に浮く。触れただけで大ダメージの、実にえげつない武器の完成だ。透明だと分かりにくいので、血の色だけはそのままだ。いきなり出てきた水球を見て先手必勝とでも思ったのか、左から此方にとびかかって来たソニック・オーガの顔面に、操作した水球をブチ当てた。あっけなく頭の大部分を溶かし、叫び声も上げれずに絶命する。半端なくスプラッタな光景だが、昨日の狼でだいぶ慣れた。それを見た残り2匹のソニック・オーガは、左右に分かれて挟みこむようにして、爪で牽制しつつ攻撃の機会をうかがう。

生憎だが、こちらは待つつもりなどない。3つの玉を右のソニック・オーガの盾として、もう一つを左のソニック・オーガへ使う。水玉を操作し左のソニック・オーガへ真正面から飛ばすも、高い行動力を生かしあっさりと避けられる。が、まるでブーメランのようにUターンした水玉は、そのままソニック・オーガの後頭部に吸い込まれるように直撃した。

後頭部が消失し白目を剥いて、ソニック・オーガは、うつ伏せに倒れ込む。それを見て激高したのか、右のソニック・オーガが狂ったように叫ぶと、身を出来る限り低くし、水球の盾に触れずに突破を試みる。が、そこにソーリアさんが放ったであろう矢がソニック・オーガの背中に突き立てられ、思わず地面に伏してしまう。それをオレは見逃さず、ソニックオーガに駆け寄り頭に剣を振り下ろし止めを刺す。ソーリスさん、自信が無いようなことを言っていたが大した腕じゃないか。


これで4匹。ふと前の集団を見てみると、ほとんどのソニック・オーガがオレの方を向いていた。

良く見えないが、前方の冒険者達もよくやったのだろう。ソニック・オーガは数えるほどになっていた。もしかしたら、撤退しようとしてオレがいるから出来なくなって固まっているのかもしれない。


「ガァァアアアア!」


どうやら冒険者と戦って玉砕よりも、俺を強行突破して撤退を選んだようだ。5匹のソニック・オーガがオレの方に突っ込んできた。これは水球では対応できないかな。


(3個の水球を全て網状に展開)


水球を全て崩し、1枚の網状にする。横幅5mほど、縦で3mほどの大きなものを5m前方に展開した。網目は大きいがとにかく大きいものを作った。道の幅は大体6mくらいなので左右から抜けるのは難しいだろう。

恐らく、先ほどまでの水球を使用したオレの戦い方を見ていたのであろう。2匹が突っ込むのをやめ、再びこちらを伺ってくる。残りの3匹は、網ごと引きちぎるつもりなのか爪を振るい、そのまま突っ込んできた。勿論、水のネットが千切れることはない。爪の先端から体にかけて、強酸を浴び全身を溶かした。よほど痛いのか、地面に体を擦り付けるように悶えている。先ほどの水球の様に、頭を溶かし切っているわけではないので、即死はしていないが、恐らく戦いを継続するのは無理だろう。

その状況を見ていた残り2匹は左右に別れ、ネットの両端を無理やりくぐろうとしていた。脱出は難しいだろうと思ったが、2匹とも体の一部を溶かしながら、何とか脱出に成功した。そこで再びソーリスさんが右のソニック・オーガに射かけ、見事に頭に矢が突き刺さった。いい仕事をしてくれる。それを見た瞬間、オレは左を走り抜けようとしたソニック・オーガに駆け寄り、切りかかる。狙いは足だ。

が、それを読んでいたのか、ソニック・オーガは高く跳躍する事で斬撃を回避した。空中に視線を向けると、勝ち誇ったかのように口端を上げ笑っているように見えた。

逃がす気はない。初めて使うが、実験台になってもらう。


(『時間停止』!)


『時間停止』を使った瞬間、景色から色が消え失せた。あらゆるものの時間がおよそ2秒弱止まる。オレはソニック・オーガと同じように跳躍し、背中に向かって、思い切り剣を突き出した。剣が滑るようにソニック・オーガの体内に入り込み、貫通すると胸から切っ先が飛び出した。

瞬間、再び世界に色が戻る。同時に、跳躍していたソニック・オーガが、空中で体勢を崩し、オレ諸共体を地面に叩きつけ、剣を体に生やしながら転がった。オレは立ち上り、突き刺したソニック・オーガの方を見てみると、ピクピクと体を小刻みに動かしており虫の息のようだった。

それにしても頭が回らない。何だこれは。意識が朦朧としながらも、如何にかソニック・オーガの背中から剣を抜くと、ついに動かなくなった。


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