8.町へ
本日23時に9話を投稿します。
もし宜しければ其方もご覧下さい。
ソーリスさんとの情報交換、というよりも一方的に情報をもらっただけだが、とにかく話が終わった。オレが熊を倒せるかは、まるで信用してもらえ無かったので、話を進めるために『液体操作』を見てもらい、川の水を溶解液に変えて石を溶かすと、「これは、凄まじいですね……」と青い顔をして 呟いていた。無理やりだが、たぶん納得してもらえただろう。
食糧はウサギがあるし、飲み水も川から汲めばいいので、明日の朝まで大人しくしておこう、ということになった。ソーリスさんに兎を食べれることは確認したら問題なく食べれるそうだ。
夕食はウサギの丸焼き。火打石で火を起こそうと頑張ったのだが、上手く点けられず、ソーリスさんに点けて貰った。ちょっと恥ずかしい。
ウサギの丸焼きは、調味料が何もないので素材の味しか感じられないが、ほどよく脂も有り十分おいしかった。ソーリスさんはほとんど食事をとっていなかったようで、2人で一匹は多かったかなと思ったが、調理した3分の2は食べれた。残りは明日の朝に焼き直せば食べれるだろう。ソーリスさんとはスキルについて少し話をして時間を潰した。
この世界では、1LVだと初心者に毛が生えた程度、2LVでようやく一端、3LVで熟練の人のスキルレベルだそうだ。4LVはその道を極めた人、5LVは国に1,2人居れば良い方の国宝級、伝説級の人になるそうだ。
「私は『弓術』を鍛えているのですが、中々上手くいかなくて…」
少し悲しそうに微笑んだソーリスさんは、洞窟の奥に弓を置いているらしい。ソーリスさんは、もう1年近く『弓術』のレベルが上がっていないそうだ。と言っても、1~2LVまでは手習い程度で覚えられるらしいのだが、3LVになるためには3年から5年の月日の修練が必要で、才能やステータスでも変わってくるらしいので、そんなに悲嘆に暮れる必要は無いと思う。努力次第だろう。
そうこうしている内に夜になり就寝することになったが、ソーリスさんは暗闇でもある程度スキルで距離や気配が分かるそうなので洞窟奥にいてもらい、オレは洞窟入口で見張りをすることにした。
(うん、月明かりで周りも見える。これなら問題ないな)
たき火をしようかとも思ったが、そんなに寒くもないし、夜に火は目立って寄ってくる獣もいるかもしれないので止めた。
「子供に無茶ばかりさせられません」と、ソーリスさんとは3時間おきに見張りを交代することになったのだが、正直それまで暇だ。この洞窟の周りは多少開けているので、もし動物でも魔物でもすぐに発見できるだろう。…そういえばステータスを朝に一度確認したきり見ていない。時間もあるし、確認しておこう。
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l名前:トモヤ
l種族(状態):人族(怪我<足裏・小>)
lLV:7(779/1200)
lHP:71/72(10UP)
lMP:24/24(5UP)
l攻撃力:52(7UP)
l守備力:63(6UP)
l行動力:58(7UP 状態『怪我<足裏・小>』の為-5補正)
l幸運 ;-425(11UP 称号『転生者』の為-500補正)
l
l???
l-神様へのチケット
l-1週間無事だよチケット(残り 48:36:51)
l
l祝福スキル
l-逃走吸収 (2/5LV)
l-徴収贈与(1/5LV)
l-時間停止(1/5LV)
l
lユニークスキル
l-鑑定の魔眼(1/5LV)
l-絶対記憶(1/5LV)
l-液体操作(2/5LV)
l
lスキル
l-狩猟<野生>(1UP 1/5LV)
l-統率(0/5LV)
l-擬態(0/5LV)
l-剣術(1/5LV)
l
l称号
l-転生者<ヘルモード>
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おお、レベルが1上がっている。あれだけ狼やウサギを倒したかいがあったな。それにしても、ソーリスさんとそんなにレベルが離れていないのに、ほとんどのステータスが2倍以上の差がある。幸運はもう知らん。ヘルモードのステータスアップの補正で上がっているのか?
ほかにも、元々持っていたスキルのレベルは、狩猟<野生>のみ上昇している、いくつかスキルが増えている。一つ一つ確認して行こう。
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l狩猟<野生>(1/5LV コスト無し スキル )
l-野生動物が本能で理解している狩猟技術スキル。
l-森にいる限り、『隠密』『探知』『鷹の目』『聴香』を、狩猟<野生>スキルレベル-1で
l 発動可能。
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おお、『絶対記憶』云々が消えている。再現行動ってのは、ああいう真似事で問題ないみたいだな。まぁ、このスキルはもう少しレベルを上げないと使えないけど、森にいる間は役に立ちそうだから、積極的に上げていこう。先ほどの話が本当なら、2LVまではすぐだと思うし。1つのスキルで4つのスキルを発動できるって、中々お得だ。後は0LVの時は何となく使っている感覚しかなかったが、1LVになると本能的にどうやって使うかが分かるようになった。スキル上げがやりやすくなったな。
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l統率(0/5LV コスト無し スキル )
l-1人以上の同行者がいる場合発動できる。
l-同行者がスキル保有者の指示に従う時にのみ、全ステータスに常時+5補正
l-このスキルを使用するには、『絶対記憶』を利用した、再現行動が必要。
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うーん、全ステータスに+5か……。正直微妙かな?とも思ったが、100人位の同行者がいれば、合計で+500だし、人数がいれば強い、ってスキルかな。使う予定は今のところ未定だな。ソーリスさんとも、明日町につけば分かれてしまう。優先度は低めだ。
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l擬態(0/5LV コスト無し スキル )
l-適正装備時、常時発動可能。
l-周囲の環境に溶け込み、『隠密』スキルに+1補正。
l-このスキルを使用するには、『絶対記憶』を利用した、再現行動が必要。
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適正装備ってなんだ?軍隊が使っているギリースーツとかだろうか。そういえば、狼の毛皮は緑色だったな。
てことは、環境に溶け込める恰好にならなければレベル上げも難しいのか。
困ったな。町で売ってるかな、ギリースーツ。自作するか?そこまでしてあげるべきスキルか分からないけど。
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l剣術(1/5LV コスト無し スキル )
l-剣類の装備時、常時発動可能。
l-剣の扱いが上達する。以下の『アーツ』が使えるようになる。
l
l○『パワースラッシュ』-消費MP1 魔力を剣に纏った一撃。CT10秒。
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実は兎を倒し始めた段階で、剣の扱いが上手くなった実感があった。何かしらのスキルが取れたのだろうとは思っていたが、割と直球なスキルが習得出来た。折角だし、接近戦では剣を使っていこうかな?
それよりも、『アーツ』のほうだ。これは所謂必殺技のようなものじゃなかろうか。やばい、ちょっとワクワクする。他のスキルにも憶えれるスキルがあれば是非欲しい。試しに一回使ってみたら、剣に青白いオーラのようなものを纏うことが出来た。が、これは如何やら斬撃中にしか使えないようで、ずっと維持することは出来ないみたいだ。残念。CTはクールタイムの略だな。試してみると確かに連射出来ない。10秒間が長いか短いかは分からないが、使いどころを見極めないとな。
良し、大体こんなとこかな。一日で結構な収穫じゃないか?レベルも上げられ、人に会って情報も手に入れた。明日には町に向かえるし、そのあとは存分にレベル上げだ。
夜中のテンションだからか、ステータス確認後『狩猟<野生>』を意識し続け、訓練してみたがレベルは上がらなかった。MPが満タンまで回復したら、何か適当なものを『鑑定の魔眼』を使用し、こちらもレベル上げに励む。そうしているとソーリスさんが交代に来たので、見張りを変わってもらった。オレはソーリスさんほど耳も目も良くないので、余り奥には入らず、月明かりが届くか届かないかの辺りで寝た。その夜は特に何も起こらず、2度交代しながら見張りをつづけ、夜が明けた。
『絶対記憶』の記憶の整理は今日は無かった。細かく睡眠を取ったからか?
朝食に、昨夜焼いたウサギの残りを頂いた。オレは昨日から装備は変わっていないが、ソーリスさんは、昨日持っていなかった弓と矢筒を背負っていた。洞窟の奥に置いてあった物だ。
まだ少し眠たそうなソーリスさんに、オレは声を掛けた。
「それでは、移動を開始しましょう。町へは本日中にたどり着けそうですか?」
「はい。この川は、大きさから町の近くの川に間違いありません。本日中にはたどり着けるでしょう」
「分かりました。……あと、私に敬語は不要ですよ?歳も下ですので」
「あ…それなら私も」
「目上の人には敬語を使うのが癖でして。なんちゃって敬語ですけどね」
少しおどけた様に言うと、ソーリスさんは少し困ったように微笑んだ後、「分かったわ」と言ってくれた。
オレも笑顔で「宜しくお願いします」と言うと、オレを先頭に歩き始めた。
川沿いに下り、歩いて2,3時間が経過した。歩き始めの頃は、この森のことなどを聞いて会話もあったのだが、「会話は必要最低限のみにしないと体力を削られるわよ」とソーリスさんから助言を受け、それ以降は、黙々と歩いている。ステータスが上がり、体力も増えたと思うがまだ体格は7歳児。しかも生まれて3日目だ。生後3日目で熊と狼に襲われる。どんな人生だよ。
オレの人生計画はともかくとして、無茶するときはするが今はソーリスさんもいるし、なるべく慎重なほうがいい。ソーリスさんがスキルで辺りを索敵出来るとはいえ、オレも出来る限り警戒はしておこう。
そんなことを考えていると、ソーリスさんがオレの後ろから声を掛けてきた。
「御免、ちょっと待って」
「どうしました?」
「何か……大きな音がするの。私は、『超聴覚』というスキルを持っていて、非常に耳が良いんだけど…」
敬語をやめて、喋りやすそうになったソーリスさんが、目を閉じウサギ耳に手を当てて音を聞くのに集中している。ピンと立った耳を、アンテナの様にして、少し首を振っているのが面白い。
「これは……鐘の音!?町が…カーネルの町が魔物に襲われている合図よ!」
如何やら、厄介な時に来てしまったらしい。だが逆にチャンスか?助ければ町に好感を持って貰えるかもしれない。
「急ぎましょう。案内をお願いできますか?」
「分かった。私の足は速いから、出来るだけ合わせて」
「分かりました」
ステータス上ではオレの方が足速いはずだけど。走り始めたソーリスさんの後ろを走ると、確かに言うだけあって、かなり足が速い。森も走りなれているようで、すごいスピードで走っていた。少し走ると、オレの耳にも鐘の音が聞こえ始めた。遠くの方には石を積み上げた壁のようなものも見える。高さ3mほどだろうか。結構高い。
「あっちに町門があるわ。門を破られていたら、町の中にすでに魔物が入り込んでいるかもしれないけど…」
ソーリスさんの顔にも緊張が見える。オレ達は、身を低くしながら、森を進み、町門が見える高台のような場所に移動すると、そこで人の叫び声と、不気味な人ならざる叫び声が聞こえてきた。この身の毛もよだつ叫び声には、聞き覚えがある。そこで見たのは、ソーリスさんと同じような恰好をした冒険者と、ドラム村を襲った怪物たちだった。
オレは、反射的に剣を握った。母を殺された恨みは、ここで果たさせてもらおう。