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52.ソーセージウェポン

「な、何だ、何が起きた――手下どもはどこだ!?」



辺りを見回していたひげもじゃの男がヒステリックに叫ぶ。

その男に腕を絡めていた女は、その叫びに煩そうに顔をしかめそっと離れた。

『山賊王オード』を守るように囲んでいた護衛たちは、最早どこにも見当たらない。

男の傍らにる女、真の『山賊王』ことパトリシア・オードは一度当たりを見渡すとため息をつき、顔をこちらに向けた。


「参ったわね……今からでも交渉は出来ない?」

「致しかねます」

「でしょうね。まあ、しょうがないわ」


オードがオレから目線を外さず、腰を落とした構えをとる。

右手足を引き、左手足を前に。

左足のかかとをやや浮かし、左手は開いたまま肩と同じ高さまで挙げている。

あまりか詳しくはないが、中国の拳法のような構えだ。

その目に油断はない。だが、男と同じく状況を上手く呑み込めていないのか、先ほどまで微笑みを浮かべていた顔から表情が消え失せ、こちらを探るようにオレを見つめていた。


それも当然だろう。

周りにいた荒々しい、軍というよりただの無法者の集団だった男たちが一瞬で消え失せたのだ。

そりゃあ混乱するだろう。原因であるオレですらちょっとビビる。

――オレが使ったスキルは熊男から『徴収』した『ダンジョンメーカー』。

その能力の一つが『罠設置』であり、『落とし穴』

だ。

ダンジョンメーカーの能力をフル活用したオプションメガ盛りの超高性能な『落とし穴』なのだが、実際に設置するのはめちゃくちゃ大変だった……。

いやまあ、結果良ければすべて良しとしよう。


「カッサバとエミリーはどこに行ったの?」


オードがオレに問うが、それに馬鹿正直に答える気はない。

「どこだと思います?」と返すが無言のまま、オードの表情に寸分の変化もなし。

状況は圧倒的に不利なはずだが、どう出てくる?。


「あ、姉さん! ここは連携して逃げるしかありませんぜ! 二手にバラけて来た道を戻りやしょう!」


ひげもじゃの男が、ここまで進んできた獣道を指さしながらオードに逃げるよう必死に乞う。

この異常な状況に相当焦っているのか、もう『山賊王』の演技もとっぱらってしまっている。

だが、オードはそちらのほうを見ようともせず、後ろ手にあった右手が蛇のように動く。

何か仕掛けてくる気かとオレも身構えるたのだが、その心配は杞憂だった。

その腕はひげもじゃの男の腹に突き刺さったからだ。

特別早くはなかったが、意識の間隙を突くような一撃だ。



オードは一瞥もせず破かれた腹から手を引き抜くと、長い腸が引き釣り出され、それと同時に血が噴き出す。

ひげもじゃの男は驚愕したように眼を見開きオードを凝視しているが、血を流しすぎたせいか何かを呟きながら膝から崩れ落ちた。

あまりにも突然の凶行にオレが動けずにいると、オードは「はんっ」とひげもじゃの男を見下ろしながら笑った。


「『何故』なんて私に問うからあんたはダメなんだよ、トトン……あれ? 名前あってたかしら?」


「ねえ、こいつの名前ってわかる?」と、オードがオレに聞いてくる。

が、オレがその問いに答えることはない。ていうか知らんし。

というか人の腹から血がぶしゅぶしゅでてるの止めてもらってよいですかね?

正直ドン引きなんですけど。


(うへー、『格闘術』の魔拳か……えぐいことをするなぁ)


あまりはっきりとはしないが、腹に突っ込まれる一瞬だけ手に光が見えた。

その光はカッサバさんの使うアーツによく似ているので、恐らく間違いない。

オードの使ったアーツのほうが色が薄く見えたのはカッサバとの力量の差だろうか?

まあいいや、確認すればわかる。


(『鑑定の魔眼』)


○一一一一一一一一一一一一○

l名前:パトリシア

l種族(状態):人族(健康)

lLV:33(56488/1990000)

lHP:73/73

lMP:129/129

l攻撃力:100

l守備力:84

l行動力:180

l幸運 ;164

lユニークスキル

l-淫蕩瘴気(3/5LV)

lスキル

l-格闘術<蛇頭流>(2/5LV)

l-性交術(4/5LV) -捕縛術(3/5LV)

l-直感(2/5LV)  -偽装術(3/5LV)

l-薬学(2/5LV)  -拷問術(2/5LV)

l-演技(2/5LV)  -祈祷(1/5LV)

l称号

l-傀儡の応報

l-『山賊王』

○一一一一一一一一一一一一○


なんか、存外にステータスが貧弱な気もするが、人間なんてものは大体こんなものなんだろう。

人という種族の中では、ステータスがどれか100を超えていたら相当強いのは間違いない。

だが、それでもオレやカッサバさんとは比べるべくもない。


であれば、重要なのはスキルのほうだ。

こちらは今まで出会った人の中では最多のスキル数なのではなかろうか。

その多彩のスキルの中でも一際目につくのは『 淫蕩瘴気』ではあるが、恐らくこれは下にもある『性交術』と一緒でエロスキルの類なのでは?

ユニークスキルではあるので油断するわけではないが、第二次成長期前であるオレの前では聊か効力が薄いと思う。


必然的に見るべきスキルはわかりやすい戦闘系スキルである『格闘術』ではあるのだが、面白いことに『格闘術』には<蛇頭流>とかいう流派っぽいものが付いていた。

これは、俺の持つ『狩猟<野生>』と同様、通常の『格闘術』とは何かしら分別されたものと見たほうがいい。

あのひげもじゃの男の腹を貫いたアーツには要警戒。

そんなオレの警戒をよそに、ブチリと腸が足で捻じ切られた。

断面から見えるウン……『内容物』を見ないように目をそらしたいところだが、そうなるとオードからも目をそらしてしまうことになってしまう。

そんな葛藤の中、オードがぴしゃりと腸で地面を叩くと、『内容物』が一部こぼれた。

勘弁してくれ。オレはいったい何と戦ってるんだ……。


「しってる?人の腸の長さはドラゴンの全長より長いのよ?」

「恥ずかしながら、ドラゴンを存じ上げないもので」

「あらそう。なら覚えておきなさい」


ヒュンヒュンと腸を空中に泳がせる様はまるでカウボーイ宛ら、次第にその速度は増して行き、辺りに土煙を上げ始めた。

尋常じゃないほどの速度、回転量だ。

構えはあまり先ほどと変わっていない。引いた右手で腸を引き、突き出した左手で腸を回して円を描く。

ふと先ほどのスキル構成を思い出す。


(あれがもしかしてロープの代わりだとしたら……『捕縛術』か?)


であれば、あの腸は死体遊びの一環ではなく、まさかの武器か。

そこまで思い立った瞬間、不意にオードの左手がパッと開かれた。

瞬間、回転の勢いをそのまま、高速で腸の先端が突き刺すように飛来してきた。

オレは咄嗟に『天歩』を発動し宙に逃げ場を求めるが、腸がオレのいた場所を掠めると、なんと方向を変えオレに向かってくる。


さらに『天歩』を使い距離を取る。

バク転で弧を描くように後退―――ついてくる。

重力に身を任せて落ちる―――ついてくる。

木の幹や枝を使い不規則に―――うっそ、追いつかれた!


太い枝を選ぶ一瞬の逡巡の中、反応が遅くなり左足首に腸が巻き付いたと思った瞬間に勢いよく引っ張られる。

かなりの勢いのまま1度、2度地面にたたきつけられ、3度目のバウンドで宙高く舞い上がり、どさりと元居たところまで引き戻された。骨は折れていないだろうが、全身に痛みが走る。

やばい、思ったより『捕縛術』が強い。

地面に伏せたオレを見ながら、オードが勝ち誇るように言った。


「腸を持つ私こそがドラゴンよ、坊や」

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