46.石畳のベッド
ダンジョンマスターを倒したオレ達は、折角なのでダンジョンを軽く見て回ることにした。
もし、熊やらなんやらを生み出す装置とかがあればダンジョンとしての機能が生きたままになってしまう。
と、懸念していたのだが、その考えはすぐに否定されることになった。
このダンジョンはあまりにも狭すぎた。
部屋の奥は真っ暗で見えなかったのだが、実際の大きさはバスケットボールのコート位で、階段や通路は見つけられなかった。
ソーリスの『超聴覚』や、エミリーの『観察眼』でも何も引っかからなかったわけだから、間違いないだろう。
だが、なにも無かったという訳では無かった。
ダンジョンマスターが使っていたカンテラを拝借し辺りをうろついてみると、部屋の隅には生活感丸出しの家具が一式置かれてあった。
他には、怪しげな魔法陣っぽい石畳に刻まれた模様と、テーブルに置かれていたこのあたりの精巧な地図が一枚。
カッサバさん曰く、魔法陣はMPを注ぎ込むことで発動するものらしいので一旦は放置しておいて問題ないとのことだ。
後は木製食器等の雑貨があるくらいで、めぼしい物は無さそうだ。
いかにもダンジョン関係な品を除ければ、世捨て人が森に住み着いているような質素な感じだ。
いや、オレ達も町から離れて狩猟小屋で生活している訳だし、似たようなものか。
「ダンジョンマスターがすぐに出てくる訳っすねー。これじゃあ、隠れようが無いじゃん」
テーブルにあった地図を撮みヒラヒラと空に泳がせていたエミリーが、拍子抜けしたかのように言った。
金熊ありきの警備体制だったのだろうが、確かにもうちょい何かあっても良いよな。
「せめて、罠のひとつも置いておけば良いのに」
「あーでも、プライベート空間に罠なんて置きたくなかったんじゃない?私も自分の部屋に落とし穴とかあったら嫌だし」
「それもそっか……あれ?ここダンジョンだよな」
確かにここはダンジョンマスターの家なんだが、それでもダンジョンな訳だからもうちょっとこう……。
まぁ考えても仕方がないし、後で調べれば何かわかるだろう。
そうしてエミリーが中心になって部屋を調べている中、いよいよなにも無い事が判ると、カッサバさんはいかにも不機嫌そうに「フン」と鼻を鳴らした。
「糞詰まらん」
カッサバさんは吐き捨てるようにそう言った。
期待していた戦いがいのある魔物満載のダンジョンは何処にもなく、その迷宮の主であるダンジョンマスターもあっさり倒されてしまった。
カッサバさんの言葉を借りれば『糞詰まらない』結果に、カッサバさんは御菓子を買ってもらえなかった子供の様に唇を尖らせている。
その表情は余りおじいちゃんな人がしていい顔じゃない気もするが、突っ込むと藪蛇な気がする。
見かねてエミリーがカッサバさんの背中を「楽でよかったじゃん」と叩いたが、そもそもカッサバさんは楽がしたい訳じゃ無いんだし、その励ましは意味ないと思うが。
エミリーとカッサバさんのかみ合わないやり取りを見て、ソーリスはクスクスと笑っていた。
……なんか、いつの間にやら休憩時間のようになっているな。
丁度いいからステータスを確認しておくか。
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l名前:トモヤ
l種族(状態):人族(健康)
lLV:40(9UP 81M/127M)
lHP:216/345(69UP)
lMP:1/119(24UP)
l攻撃力:395(91UP)
l守備力:333(58UP)
l行動力:408(126UP)
l幸運 ;-167(73UP -500補正)
l
l???
l-神様へのチケット
l
l祝福スキル
l-徴収贈与(2/5LV)
l-時間停止(2/5LV)
l
lユニークスキル
l-鑑定の魔眼(2/5LV)
l-絶対記憶(2/5LV)
l-液体操作(2/5LV)
l-暗殺者の素質(2/5LV)
l
lスキル
l-短剣術(2/5LV) -狩猟<野生>(2/5LV)
l-爪術(0/5LV) -土魔法(0/5LV)
l-剣術(2/5LV) -擬態(2/5LV)
l-弓術(2/5LV) -倉庫(2/5LV)
l-探知(0/5LV) -消火陣(0/5LV)
l-死霊使い(3/5LV) -空歩(1UP 1/5LV)
l-突撃(0/5LV) -料理(NEW 1/5LV)
l-波動化(NEW 0/5LV) -精密(NEW 0/5LV)
l
l称号
l-転生者<ヘルモード>
l-『血の呪術師』
l-魂の契約者;主
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今回獲得出来た経験値は、金熊へ使った『逃走吸収』の分と、ダンジョンマスターを倒した分のみだ。
金熊を倒した分の経験値は、カッサバさんに渡っているようで、先の魔族軍や赤青熊コンビの青の方を倒した分も含めて、現在カッサバさんのレベルは43になっている。
かなりオレも経験値を稼いでいる筈だが、今だカッサバさんには水をあけられている。
とはいえ、たとえ同レベルでも、カッサバさんとオレとでは戦闘経験の差が大きい。
搦め手を使わないガチンコの勝負ならカッサバさんに勝てる可能性は限りなく低い。
そんなカッサバさんの得意としよく使っている『縮地法』はソーリスに渡しているためステータスから消えており、『徴収贈与』の効果でて『料理』というスキルを貰った。
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l料理(1/5LV コスト無し スキル )
l-食品の調理に補正がかかる料理技術スキル。
l-調理技術が向上する。
l-調理した食品の味にプラス補正。
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このスキルは、ソーリスが狩猟小屋に住み始めてから、食事を作るエミリーを手伝い習得したスキルだ。
何時だったかソーリスに料理が出来るのかどうか聞いたことがあるのだが、生まれ故郷では狩りをした獲物を母親に調理してもらっていたそうで、町に住んでいた時には外食のみで自炊の経験があまりない……という話をソーリスが恥ずかしそうに話していたのが何とも印象的だった。
そうして得た、この数週間ほどの努力の結晶であるスキル『料理』を交換したままというのは何とも忍びない。
オレが持っていても使う機会もないし、後でソーリスに返さないと。
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l 天歩(2/5LV 消費MP:1 スキル )
l-常時発動可能。
l-足の裏から魔力を放出し、空中歩行する移動法。
l-空中での行動力に+30補正。
l-移動距離、速度はスキルレベルとスキル保有者のステータスに依存する。
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金熊と戦った時に結構使ってたから『天歩』もレベルアップしていた。
空中にいる時限定で行動力に補正がかかるみたいだ。
実際にジャンプしてステータスを確認してみると、空中にいる時に若干体が軽くなるような気がする。
あるかどうかは分からないが、空中戦の時には重宝するんじゃなかろうか。
後の目ぼしいスキルは全部金熊から得た0LVのものばかりなので後回しだ。
(今が丁度お昼ぐらいだから、『向こう』に付くのは全力で走って……)
これからの行程を考えていると突然、糸が切れたマリオネットの様に体から力が抜け、思わず両膝をついてしまう。
意識が明滅し、思考が混濁し、視界から色が欠けて行く。
これが『時間停止』を気軽に使えない原因。
何時かソニック・オーガと戦った時に『時間停止』をつかった時と同じで、MPが1になった反動だ。
これは耐えられそうにない。
畜生、時間差で来るなんて聞いてないぞ。
後何秒持つ?
「カッサバさん、オレ限界みたいなんで、金熊とダンジョンマスターの遺体だけ『倉庫』で回収お願……」
あ、ヤバい。もう無理だこれ。
ああー。




