42.金熊戦:作戦の要
あらすじ:金熊と戦闘中。衝撃波をやり過ごす事に成功…?
文字数が伸びない…。
今回も短めです。
「割れるぞ!」
「うわ、マジで?」
カッサバさんが叫び、氷塊の硬さを知っているエミリーが呆れた様に呟くと、氷塊にひと際大きなひびが入った。
次第に日々が大きくなり、ついにガラガラと大小の氷片となって崩れ落ちると衝撃波にのみ込まれて散っていく。
しかも、衝撃波によって飛んで来る石礫や巨木は未だに収まってはいなかった。
その中でもひと際大きな巨木がこちらに向かってくる。
「破っ!」
オレの横をすり抜けるように、いつの間にか前に出ていたカッサバさんの気合一喝。
この強風の中でも自然体を崩さず、その構えから放たれた正拳突きを巨木へ叩き込む。
大木は大きく撓むと耐えきれなくなったのか真っ二つに折られ、勢いのまま後方へと流れて行った。
「呵っ!破っ!」
次々と飛んでくる飛来物をカッサバさんが迎撃していく。
石を砕き、木を受け流し、空気の激流に対しても揺るぎはない。
連続した拳撃により一切を通さないその様は、まるで巨大な一枚の壁があるようだった。
相変わらず頼りになる人だ。
やがて衝撃波の勢いが収まると、カッサバさんが構えを解いた。
「ふむ、途切れたか」
カッサバさんは少しつまらなそうに呟いた。飛来物を捌くのは、思ったよりも楽しかったのかもしれない。
相変わらず面白い人だな。
「行きます。カッサバさんはエミリーと森へ」
「うむ」
短く言葉を交わして俺は金熊へと顔を向けた。
既に金熊は振りかぶっている。距離は変わらず50m程。
このまま氷塊を使って前進しても良いが、先ほどと同じように壊されてもカッサバさんの様に防げるとは限らない。
オレ一人ならば回避に集中したほうが無難かな。
俺は脚に力を籠めると、前方ではなく垂直に飛び上がった。
(『天歩』)
すぐさまスキル『天歩』を使い辺りの木々のさらに上に出る。
1つの足場でMPは1消費される。多用は出来ないので跳躍するかのように空中を駆けた。
さあ、金熊。森にいるカッサバさん達より、オレの方が見えている分狙いやすいだろう?
挑発するかの様にそのまま空中を移動しつつ熊の元へ行こうとすると、あと少しというところで熊の腕が振るわれた。
「グガァァァァアアア!」
熊から気合の咆哮が聞こえる。
これだけ衝撃波を外されてイラついているのかもしれない。
悪いがその一撃も当たってやれないぞ。
オレは再び脚に力を籠める。だが、今度は上に向かうのでも前に進む為にでもない。
向かうべき方向は下、地面の方だ。
空中に逃げたままでは素早さやMP消費の面で不利になる。
それならば、重力という加速装置が使える下方へ逃げれば良い。
空中で上空を蹴りつけるように踏み込む。踏み込みの強さと重力が相まって、凄いスピードで落下していく。
それに少し遅れて上の方で耳を劈くような風切り音が聞こえた。衝撃波は無事に回避できたようだ。
だが、落ちる速さに対応できずに、ドサリと地面に叩きつけられるように着地してしまった。
(止まるな、動き続けるんだ)
落ちた痛みを感じる前に金熊の方へ走る。痛みに呻いていても的になるだけだ。
そんな俺の警戒とは他所に、金熊は避け方を予測していなかったのか少し慌てて構えなおしていた。
そしてついに金熊との距離が10m以下になる。
『氷塊』を秘策その1とするならば、オレの用意した秘策その2……その『射程圏内』に入った。
「『倉庫』」
人語を理解しているのか、金熊が驚いているように見える。もしかしたら、金熊は『倉庫』の事を知っていたのかもしれない。
そうだとしたら、『倉庫』の特性ではあり得ない現象に驚いているだろう。
何故なら、生き物などを収容することが出来ないアイテム収納スキルである『倉庫』を使って、『人』を取り出して見せたのだから。
だが、それが可能となる人物がオレ達の中で一人だけ存在するのだ。
オレはその人の前に立ち、ククリナイフを構えた。
「頼むよ」
「…はい!」
これが今回の秘策中の秘策、それが『ソーリス』だ。
ソーリスはオレのヘマで一度死んでおり、『霊死使い』のスキルにより疑似的に蘇っている『ゾンビ』だ。
認めたく無いが、本質的にはソーリスは生物ではなく無機物である『死体』だ。
ならば、『倉庫』に入ってもらうことも可能なのではないか。
事前に検証し見たところ、ソーリスが『倉庫』に入れることが分かった。
出る際の状態も問題が無い事は確認済みだ。
……この作戦も思いついたは良いものの、ソーリスを『倉庫』の中に入れるという、物の様に扱う事に対して釈然としない気持ちを抱いていた。
だが、そうして次策を練ろうとした所、そのソーリス本人から「旦那様、また私に遠慮されてますね?」と半ば無理やり実行に移されたのだった。
(何と言うか、最近ソーリスにはオレの心情を悉く見破られている気がする。いや、別にそれで不都合なことは無いんだけど)
この緊迫した場面で考える事かと自分に突っ込みつつも、ソーリスは万全の心構えだったようで、突然目の前に現れた金熊に動揺することも無く『キッ』と金熊をにらみつけると素早く腕を掲げた。
「『逃走吸収』!」
瞬間、金熊の体が黒い光によって包まれた。




