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40.依頼

8000文字くらいで少し長めです。

途中で少し気持ち悪い所があるかもしれません。


あらすじ:『山賊王』オードの正体は女の人でした。

「ふーん、余り以外とは思って無さそうね」


オードはそう言うと、ゆっくりと足を組みなおした。

そんな何気ない動作にさえ存分に色気を纏っており、ある程度歳を重ねた男性はこれだけでオードという女に対して情欲を抱く事になるだろう。

ただ、今このオードと対面しているのは年若い娘であるエミリーであり、そんな動作に対しても特に何か思うところは無かった。


「何に対してですか?今、その男を殺したことですか?」


僅かに首を傾げ疑問を投げかけるオードに、エミリーは疑問で言葉を返した。

そんな問いかけにオードは少し詰まらなそうに、「此奴とは『賭け』をしていただけよ」と何でもないように答えた。

碌でもない賭け何だろうな、と少しげんなりとしたエミリーを他所に、オードは楽しそうに回答の言葉を口にした。


「そうじゃなくて、『オード』の正体が実は女だって事。『私』の事を知ってる連中の殆どは男だって思い込んでるはずなんだけど」

「いえ、逆に納得しました。裏のお仕事を纏める貴方には国内外にも敵は多い。その敵の視線をそらすために自らの経歴を男だと思い込ませる為に自らの生い立ちを改ざんし、意図的に流布したのでは?」


そんなエミリーの予測に、オードは微笑むばかりで言葉はないが、エミリーをそんな様子を是ととらえた。

敵の情報操作の上手さを褒めるべきか。それとも情報の裏付けを怠ったアーチルドを呪うべきか。

一先ず、エミリーは道中の馬車で下した評価を一段階下げる結果となった。

ともかく、目の前の女性の未来はそんなに明るいものではなし、頭の中でアーチルドの腹に2,3発ボディーブローを叩き込んで満足したエミリーは、「それじゃあ」と切り出して来たオードの言葉に耳を傾ける。


「遅ればせながらお仕事の話を進めましょうか。もう自由領軍の司令官さんから聞いているかもしれないけれど、私の依頼はファガス大森林の調査偵察、その道案内をお願いしたいの」


マーシャルの曰く、調査というのは建前で実際にはダンジョンの占領が目的である。

それ自体は、今のところエミリーの想定内であり計画に支障は無い。というよりも計画の一部だから是非にでも続けて欲しいとさえ思っていた。

エミリーは、再び笑顔を顔に張り付け、少しずつオードに探りを入れて行く。


「確かに、そこまではマーシャルさんから聞いています。それで、具体的には何をすれば良いのですか?」

「魔族の軍が拠点を構えそうな所を重点的に案内してほしいの。森の開けている所、水場なんかを案内して頂戴。貴方たちは森に住んでいるのでしょう?町の住人が知らない『重要な場所』があれば、必ず教えてね?」


つまり、隠している重要な場所…ダンジョンに案内しろと言外に言っているのだ。

オードの顔は変わらず笑顔だが、その眼は獲物を狙う鷹の様だ。

性別の違いでは面食らったが、性格的にはおおむね予想通りの様だ。この女は王国の貢献など全く考えていない。私用で使う気満々だ、とエミリーは直観的にそう思った。


「何の目的でこの調査を行うのですか?」

「軍事秘密なんだけど、王国軍は今はとある事情で南の方に部隊を派遣しているの。そっちが収まればまた元の部隊が帰ってくるのだけど、引き継ぎの際に実績が有れば上のご機嫌が取れるのよ」

「そもそも、砦の守備隊が森に調査する必要があるのですか?魔族軍が町を突破した時に食い止めるのが、砦守備隊のお役目なのでは?」

「魔族軍の侵攻を止めることが出来ずに町に侵攻されたときに、援軍として呼ばれる可能性も有るでしょ?そうなったら、町の魔族軍をキレイした後に森側にまで追撃することもあるかもしれないし、森に帰っちゃう部隊にちょっかいもかけられる。って考えたら、一回は見とかないとね」


エミリーはアロア自由領と王国の関係性には詳しくないが、貿易などの経済面はともかく、政治面では殆ど冷戦状態になっていることは判っていた。

そんな間柄で、果たして援軍の要請をするかどうかはエミリーには分からなかったが、可能性の有無を考えれば、確かに無いと言い切ることはできない。

得体のしれない魔族軍に町を分け渡すよりは、同じ人間である王国に差し出した方がまだマシだとも思える。

この理由を盾にすれば、森への王国軍出兵という危険性のある行動を町が止めるのも難しいのかもしれない。

寧ろ町にハト派の有力者が居れば援軍要請の手形だと思い、もろ手を挙げて歓迎するだろう。

そういえば、この世界に鳩や鷹って存在するのだろうか、と別の思考に捕らわれそうになるのをエミリーは頭を振って切り替えて、続きの質問を口にした。


「調査範囲はどれ程をお考えで?」

「さっきも言ったけど、判明している重要な場所、施設がある所は全て見て回りたいわ。それによっては範囲が広がっちゃうと思うし、日程も伸びる事になるわ」

「何名程で向かうのですか?」

「調査の目的上、部隊単位の運用になるから、この砦にいる私の部下の殆どを連れて行くわ。そうね…大体600名程ね」


ちょっと多いけど600名程度なら問題無いかな、と考えながらエミリーは話を続ける。


「……最後に、当方はある重要な施設の所在を確認しています。その件についてはどれ程御知りになっていますか?」

「ふふっ、漸くね。私が判っていることは、貴方たちが所在を掴んでいるだけで未調査って事ぐらいかしら。ああ、後付け加えるとしたら、此方の方で施設や場所は改めて調査したいから余り勝手な真似はしないでね?まぁ、1日2日でどうなる所じゃないと思うけど」


オードがそう言うと、徐に立ち上がりサイドテーブルに置いてある空のガラスのコップを一つ掴み、

今だ蠢いている『黒革のオブジェ』にツカツカと近づいて行った。

正面に立ったオードは、恐らく顔の部分である所に触ると、『カチャリ』という何かが外れた音と共に顔を覆っていた黒革が床に落ちた。

エミリーがオブジェからはみ出た様に露出する頭を見てみると、それは予想された通り若い女性だった。

顔の造形は整ってはいる様に見えるが、頭は丸刈りにされ、その眼には生気が無く、焦点もあっていない。

良く見てみると歯が全て抜かれており、だらりと広げられた口からは抉れた歯茎と舌が見えるだけだった。

禁薬とやらを使用しているのか、または別の要因か、そこに居る女性はまるで廃人の様であった。


「『これ』は、私たちがまだ『前の事業』を営んでいた時、訪問した村にいた用心棒でね?中々の腕で2,30人くらい部下が斬られちゃったの」


カッサバが「25以上」とぼそりと呟いたのがエミリーの耳に届くのと同時、オードの右手が素振りも無くその手練れだと言った女の腹にどすり、と勢いよく突き入れた。

今だ手足は黒革に包まれており、それを防ぐことも出来ずに女の体はくの字に折れる。

レベル30のオードの拳を常人が受ければ重症ではあるが、同じく高レベルな手練れの女は強い痛苦を感じる程度であった。


「……ぁっ!ぅ…ぉぉ…!」


焦点の定まらない瞳はそのままに、うめき声にもならない空気を吐き出すような『音」が口内から聞こえる。

だが、そんな声を無視して再びオードが右手は振りかぶられ、再び腹に突き入れた。

それが繰り返される。1発、2発、3発と続き、エミリーは途中で数えるのを止めた。


「別に、それに、怒って、いる訳じゃ、ないの。……ふー、私は、強い人が、好きだっし!…『これ』はね、私と、一対一で戦って、負けたら村から手を引くって条件で……うふふ、やって、あげて、私が勝ったんだけど、卑怯だとか何とかいいながら『勝負は無効だ!』って……それって、契約違反よね?」


緩急をつけながら、淡々と拳撃を繰り出し時たま膝などを腹に叩き込んでいくオード。

先ほどの男との賭けを思うと、まともな勝負であったとは思えない。

オードの話から恐らく正義感が強く、愚直な性格だったのであろう女の顔にその面影はもう無かった。

もう女は痛みに呻くばかりで碌な反応も無かった。時々何もしていないときに痙攣したようにビクリと体を震わせているのが、女の状態の深刻さをエミリーに伝えていた。


「貴方たちは『違う』のよね?…そうでしょう?」


振り返りもせずにオードが小さな声で、誰に言ったのか疑問を口にした。

それに対し、エミリーも同じく小さな声で答える。


「善処します」

「……」


エミリーが横目でオードの方を見たその時、此方を探るように目を細めたオードが同じくエミリーを見つめていた。

数秒間、視線が交差する。2人は何も言わず、ただ目だけを見ていた。


「…うふふ、信じましょう」


視線を外し、先ほどまでの会話と同じように妖しくオードが微笑んだ。

と、同時にオードは先ほどの拳撃とはくらべものにならないほどの一撃を女の腹に叩き込んだ。

余りの強い一撃に、女の腹部を覆っている黒革がはじけ飛び体がくの字に曲がる。

その衝撃に女は飛び出るのではないかと思えるほど目を見開き、声にならない絶叫を上げようとするが、それが実際に聞こえる事は無かった。

どちゃり、と人を不快にさせる音が部屋に響く。

何の音かと眉をひそめながらエミリーが目を凝らすと、胃を下から押し上げたのか女の口からは吐しゃ物があふれ出ていた。

内臓が傷ついているのか所々に朱が混じり、独特の据えた臭いが部屋に充満した。

そんな大抵の人物は嫌悪感しか感じぬ場面で、微笑むオードは殴っている最中も離さなかった左手のグラスで吐しゃ物を掬った。

すぐにグラスは吐しゃ物で満たされ、溢れた分がグラスを伝って床に落ちた。


(いやいやいや。あり得ないんですけど)


オードは、一体その手に持ったグラスをどうするのか。エミリーはこの後に起きるであろうオードの行動を想像し、トモヤのゴブリン爆殺の時にすら催さなかった吐き気を感じた。

隣のカッサバからも「むぅ…」と唸るような声をエミリーは聞いた。エミリーと同じ結論に至ったのだ。

エミリーたちの反応に気付いたのか、オードが一瞬エミリーたちの方を見て微笑みを濃くすると、グラスの縁に唇を当て、ゆっくりと傾けて行った。

グラスの底が天井に向くにつれ、ゴクリゴクリと喉を鳴らし、オードが『それ』を嚥下していく。

暫くして空になったのかオードの口からグラスが離れると、恍惚した様子で「はぁ…」と溜息をついた。


「『熟成』させ過ぎると量が少なくなって、『新鮮』すぎると独特の風味が薄れちゃう。うふふ、案外良い具合に調整するのは技術がいるのよ、これ。今のは3時間ってところかしら」


オードが自慢するようにそう言うと女の口端に残っていた吐しゃ物の滓を親指で掬い、自らの舌でぬぐい取った。

そんなオードの言葉を半ば無視するような形で、エミリーが口を開いた。


「貴方の趣味の話はまた今度にしましょう……一先ず依頼の方はお受けします」

「うふふ、貴方ならそう言ってもらえると思ったわ。悪いけど、日程や現地の対応なんかはこっちが全部決めるから、後日自由軍経由で使いを出すから宜しくね?」

「判りました。今日はこれで失礼します」


そう言うと、エミリーとカッサバは立ち上がり速足で部屋の外に出た。

「次に会う時まで元気でね」と後ろからオードの言葉が2人の耳にも届いたがそれには答えず、帰りの案内を担当していたチンピラの様な男を置いて足早に馬車へと戻ると、中には既にアーチルドがいた。


「ああ、戻ったか…ってごふぅ!」


アーチルドの開口一番に労いの言葉を掛けようとすると、エミリーはそれにかまわず右フックをアーチルドの腹部を叩いた。

思わず「おおお…」と腹を抑え呻くアーチルドに、エミリーが指をさした。


「ニセ情報掴まされてるじゃん、しっかりしてよ!あーもう、あれなら前情報無しの方がヤリやすかったよ、もう!」


まだ馬車は出発していない為、声が外に漏れないように小声で叫ぶという器用なことをするエミリー。

そんなエミリーに対して、涙目でアーチルドが答えた。


「な、なんの話だ。言っておくが、お前たちが入って行った部屋は相当強力な結界が張られていて入れなかったんだ。俺にはあの部屋で何が起こったのか判らんぞ」

「オードは女の人だったの。アーチルドさんが掴んだ情報は、男であるっていう先入観を与えるためのニセの情報。それを見破るのにこっちの手札を幾つか切っちゃったし…あー、気づいてないフリをするべきだったかな?でも砦の兵士を最大限出してもらうためには…」


独り言のようにぶつぶつと呟いていたエミリーを遮り、アーチルドが訝し気に尋ねた。


「ニセの情報?馬鹿な、王城の情報統括部門から得た情報だぞ」

「だけど間違っていた情報だった。つまり、オードの性別は王国でも最高機密って事だよ」

「身の上よりも性別が最も重要な情報だという事か?」

「オードにとって『女』の部分が重要な武器なのは間違いないと思うよ。確かに綺麗な人だった」


まさしく傾国の美女と言って差し支えないオードを思い出しながら、エミリーは考える。

想像の域を出ないが、王国上層部は見目麗しいオードの『女の部分』を使って黙らせている可能性がある。

王族が抑えているといっても限界があるだろう。『山賊王』を騎士として迎え入れる事で疑問だった貴族への対処も、もしかしたら有力な貴族もそうして抑え、協力を促すことで反発を抑えているのではないか。

その考えをアーチルドに話すと、外に人の気配がないか耳を澄まして確認しつつ「あり得るな」という答えが帰って来た。

有力な貴族の中でも何名か好色家がいるらしい。そういうのは何処の世界も共通なのかな、と男の見境の無さに思わず苦笑が洩れるエミリー。

と、同時に馬車がガタンと砦から出るために動き初めた。

暫くして門の外に馬車が出たのをアーチルドが確認し考えを話し始めた。


「貴族達の中心となっている侯爵家が、確かオード容認派で女好きの男だな。王族に対しては元々姫を半ば人質に取られているし、これで王族と貴族を抑える事が出来るか」

「その言い方だと、まだ反発している所があるんですか?」

「王国正規軍だ。将軍はレベルが60を超えている化け物みたいな奴で、さすがにオードも追い其れと手が出ないらしい。その将軍が手を回して、正規軍と行動を共にさせて監視させているそうだ」


王国軍の将軍の話はエミリーも聞いたことがあった。

生まれながらにして特殊なユニークスキルを具えており、齢30にしてレベル60を超える王国きっての大傑物。

実質的にダンジョンを持たず弱兵の王国が攻め込まれていないのも、その将軍の凄まじい戦働きの結果だと聞いていた。


「ああ、彼女が何故ダンジョンを欲しがっているのかが判ったかもしれません。つまり、件の将軍は南部の戦争で忙しくて、正規軍の数が足らずに監視に回していた兵も南に兵を集めた。そんな偶然出来た隙に、思いもよらずダンジョンの情報を得た。そのダンジョンを手に入れ、私兵を強化すれば…」

「正規軍以上の戦力を用意することも可能かもしれない。そうなれば、王国に逆らえるものが居なくなる。それはつまり…」

「単なる想像に過ぎませんが…オードの影武者として適当な男を用意し薬漬けにした姫と結婚させ、本物のオードが貴族を抑え、正規軍は実力で黙らせる……それで、実質オードが王様になりますね」

「嘘だろ…相手は『山賊』なんだぞ。それに国を乗っ取られかけているって何なんだ。しかも、そうなると南の戦争すら奴が関わっている可能性があるって言うのか…」


アーチルドは額に手を当て誰に言ったのかもわからない悪態をついた。

王国内に存在するアロア自由領にとっても他人事ではない。

ダンジョン確保のためカーネルの町を拠点に据えたいと考えるはずだし、万が一それが避けれても武闘派であるオードが貿易の要点であるアロアをそのままにしておくというのは考えづらい。アロアにとってみれば八方ふさがりの状況だろうな、とエミリーはアーチルドを見ながら考えた。


「うーん、考えれば考える程状況が悪くなりますね」

「…やはり、ダンジョンだ。結局のところ、ダンジョン占領に向けての補給地点としてカーネルの町が一番だろう。王国軍だろうが『山賊王』だろうがダンジョンが目的なら武力占領を計ってくるはずだ」

「そりゃー是非も無いでしょうねー…時にアーチルドさんは『トットリアの件』についてどう思います?」

「トットリア?何だそれは」

「あ、失礼。別件でした。まあ、町の方はトモヤ君が何とかするって言ってるので、何とか出来るんじゃないですか」

「頼もしい限りだが、そもそもはカーネルの町だけで解決しないといけない事柄なのだ。余り無茶をしてくれるなよ」


期待と不安が混ざったかのようなアーチルドの言葉に、エミリーは肩をすくめて返す。

今後の動向を話し続ける事30分。3人を乗せた馬車がカーネルの町に着くと、アーチルドは報告の為馬車でそのままマーシャルの元へ向かい、エミリーとカッサバは途中で降りてそのまま路地裏に入り込む。

辺りに誰もいないことを確認すると、そこで『世界地図』を使用し、転移して狩人小屋まで戻った。

そこには談笑していたトモヤとソーリスがいたが、『世界地図』の力を知っている2人は「お帰り」と声を掛けるだけで驚きはしなかった。


「ただいまー。いやはや、会議なんて難儀なもんですな」

「韻踏む余裕があるなら上等だよ。で、どうだった?結構時間掛かってたみたいだけど」


にべもないトモヤだったが、本当に疲れている風に見えたのか、気遣う声は優しげだった。

「でへへ」とふざけた様にエミリーは笑うと、次の瞬間には真剣な表情で話し始めた。

因みにカッサバは「体がなまる」と言って、狩りをしに出て行ってしまった。


「やっぱり、こっちの情報は筒抜けだった。この小屋を監視してた人、すごい優秀な隠蔽スキル持ちだね。おじいちゃんが気付けないならお手上げだよ。一応釘も刺したし、様子を見た感じもう来ないと思うけど」

「へえ、そっか。それなら覗き魔は一旦無視しよう。それで、マーシャルさんとの会議はどうなったんだ?」

「今回マーシャルさんはただメッセンジャー…伝言役として使われただけだね。実際の依頼者は王国軍だったよ」

「…王国軍?じゃあ、結局ダンジョンの存在はアロアにも王国にもバレているって事?」


アロア自由領にも知られた上に、王国軍にまでとなるとただでさえ厄介な問題がさらに拗れることになる。

金熊に対応しつつ、アロア自由領と王国の対応を行わなければならないのか。

そんな風に考えているであろうトモヤを見て、エミリーはニヤリと笑った。


「正直そうなってたら詰んでたんだけど今回は運が良かったよ。今、王国軍の砦にいる部隊は通称『山賊王』っていう盗賊上がりの騎士で、その部隊の殆どがゴロツキみたいな奴らだったんだ」

「ええ…全然運が良いように聞こえないんだけど。寧ろ独占しに何としてもダンジョンをかっさらおうとするだろ」

「だからこそだよ。彼らは我欲でダンジョンを手に入れようとしている。それってつまり、王国そのものにはまだバレていないって事でしょ?独占しようとしているんだからさ。しかも依頼の内容を聞いてみると『森の調査』…そんなゴロツキ部隊が雁首そろえて森に行きたいって言ってるんだ」

「…ああ、成程。確かに都合が良いな。元山賊とはいえ少し可哀そうだけど、しょうがないか」


エミリーの作戦の大体を想像できたトモヤは少しだけ眉根を寄せて複雑そうに頷いたが、エミリーは苦笑しながら言った。


「そうそう、しょうがないって。あいつらはろくでもない悪党だって 、相手を見て来た私が保証するよ。ということで『トットリアの件』もこれで同時に解決出来るから、まさしく1ストーン2バード。で、成功確率を上げるためにもダンジョンを攻略したいんだけど…あの金熊倒せそう?」

「出来る限りの用意はした。あの金熊もだけど、ダンジョンをゆっくり攻略する暇はないと思うし、そっちの方が不確定な所が多いかな」

「…ええー、聞いといてなんだけど、あの金熊に勝算があるってマジなの?」

「マジマジ。エミリーの作戦は後で細かい所を聞くとして、今度はオレの番ね。対金熊用の作戦を説明するよ…カッサバさんには後でオレが説明しておくよ」


そうして説明された作戦を聞いたエミリーは思わずトモヤの横に座るソーリスを驚愕したように見つめた。

そんなエミリーの視線に、ソーリスは「大任よね」と一言告げて微笑むばかりだった。

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