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35.ゲートキーパー

「…ここまでだな。撤退するぞ」

「ええ、撤退しましょう」


カッサバさんの短く呟いた一言に、オレも間髪入れずに同意の言葉を返す。


「それ程ですか?」


ソーリスが驚いたように疑問の声を上げるが、それも無理はない。

カッサバさんの自信満々で楽しそうな表情は今、かつてない程に緊張の面持ちだった。

かく言う俺も、普段かかない汗が頬を伝って行くのが判る程だった。

今俺達が遠目に見ている金の体毛を持つその熊は、過去に戦ってきた熊と一線も二線も超えている。

あの熊の大群を仕掛けて以来、全く襲撃が無かったのも納得だ。作戦も無しに、こんな化け物とやりあえるわけがない。

特別、その熊は何もしていない。ただ、洞窟の様な場所の前で仁王立ちしているだけだ。

だが、未だ50mは離れているこの距離で、圧倒的なまでの強者の気配が空気の流れに沿って伝わってくる。

もし戦えばオレどころか、カッサバさんですら分単位も時間が稼ぐ事が出来ずに殺されるだろう。

ソーリスの疑問にそう答えようとしたが、先に口を開いたのはカッサバさんだった。


「うむ。かの熊に挑み、勝利出来る人物が世界に何人いるか分からぬほどだ。悔しいが、今の儂では拳を当てる事すらままならぬだろう」

「恐らく、あの洞窟がダンジョンでしょう。今の様子を見るに、ダンジョンの前を守護するように命令されていると思います。作戦を立てに一旦小屋に戻った方が良い…エミリー」


エミリーの方に視線を向けると、分かっていると言いたげに一度笑って頷いたみせると、左手を皆に見えるように差し出した。


「それじゃあ、小屋に戻るよ。皆私の指を」


握って、とエミリーが言おうとしたその時、凄まじい勢いの衝撃波の様なものがオレの体を包み込むと、まるで抵抗できずに高々と空中に放り出された。

原因は一つしかない。金熊のスキルによる一撃だ。


(馬鹿な、50m以上離れていたはずだ)


攻撃を受け混乱する頭の中、衝撃の強さから体勢を整える事すらままらない。

きりもみ回転しながら風に舞い上げられ、ある程度の高さにまで上がると勢いが無くなり、今度は加速しながら落下して行く。

まるでジェットコースターのような胃の浮く感覚を味わいながら、バキバキと木の枝を折る音が聞こえ、すぐに地面にぶつかり体に衝撃が走った。木の枝が思ったよりも緩衝材として役に立ったようで、体の痛みは想像よりも酷くない。ステータスの恩恵もあるのだろうが。


立ち上り何とか状況を確認しようとするも、今度は何かが破壊されるような爆音によって頭が揺さぶられた。あの威力のスキルには無駄だとは思うが、すぐそばの木陰に隠れる。

空を見上げると、オレと同じように木が2,3本空中へと回転しながら打ち上げられていた。

ただ、木はどれも無理やりに半ばから断ち切られているかのようになっている。

オレにそのような切り傷は無いし、別のスキルなのかもしれない。

いや、観察している場合じゃ無い。こうしてとどまっていてもいずれ殺されるだけだ。

移動して、皆と合流しなければ。

中腰になりながら、気休めだが木の後ろに隠れるようにして移動する。

その間にも、断続的に金熊がスキルを使っているようで、爆音が断続的に聞こえて来た。

オレの持つ称号『魂の契約者:主』は、眷属として契約した『魂の契約者:従』の居場所を大体では有るが掴むことが出来る。

その感覚に従って慎重に進んでいくと、ソーリスとエミリー、それと血に濡れたカッサバさんと合流出来た。


「旦那様、ご無事ですか?」


金熊を警戒してか、小声でソーリスが心配そうに尋ねて来た。

今日二度目の負傷の気遣いに、「元気元気」と力こぶを作る真似をすると、少しだけ表情を和らげてくれる。

ソーリスの横にいるカッサバさんは金熊のスキルによって腕を半ばまで切断されたらしく、ポーションか何かによってどうにかくっつけているらしい。

カッサバさんは片目をつぶり、血の流れていた箇所からやや上を抑えている。だが、その顔は少し楽しそうなものだった。「好敵手見つけたり」等と思っているのかもしれない。

不幸中の幸いで、ソーリスとエミリーは後回しにされたのか傷は負っていない様だ。


「話は後だ。脱出しよう」

「OK。手を握って」


今度こそオレ達4人はエミリ―の手を握ると、一瞬の浮遊感のあと何時もの見慣れた狩猟小屋に戻って来た。これがエミリーの持つ祝福スキル『世界地図』、その効果の一つだった。

中々有用なスキルで、戦闘にもそれ以外にも応用が効く良いスキルだと思う。


○一一一一一一一一一一一一○

l世界地図(2/5LV 消費MP1 祝福スキル)

l-このスキルは、祝福スキル以外ではレジスト出来ない。

l-常時発動可能。

l-詳細な世界地図の閲覧権を得る。

l-周囲100m以内の敵性対象を地図上に表示する。

l-1度訪れた土地に瞬間移動出来る。スキル保持者に触れている者も一緒に移動できる。

○一一一一一一一一一一一一○


エミリ―から聞いた詳細なデータから見ると、特筆するべきは一見ワープ機能にも見えるのだが、エミリ―と出会ってから今まで一番使ったのは索敵機能だ。

ソーリスの『超聴覚』と併用することで、かなりの高確率で隠れている敵を見つけ出す事が出来る。

向かってくる敵が分かれば、ある程度の準備が出来るし、不意打ちを企む者がいても此方が先制出来る。ただ、物理的に此方を害する意志が無ければ敵性として認められないみたいで、ダンジョンマスターが放っているであろう偵察専門の眷属を探る事が出来なかったりと弱点もある。

にしても、ワープ機能は初めて使ったが、こんなにも一瞬でたどり着けて消費MP1って相当すごいよな。しかも複数人の移動もOKって。アーツじゃないからクールタイムも無いし、使い勝手良すぎだろ。


「ふむ。それでは、どうする?」


どっかりとイスに座ったカッサバさんがそう切り出した。その隣にエミリーが座り、カッサバさんの腕を支えるための布を巻いていた。

カッサバさんの言う『それ』とは勿論、金熊の事だろう。ちらりとエミリーを見てみると、お手上げとばかりに片手を上げ顔を振っている。ソーリスも顎に手を当てて困った表情。態度には出さないが、オレも殆ど同じ気持ちだった。

とは言っても、まずは情報の共有だ。何か他の人から打開策が出るかもしれないし。


「まずは、オレのスキルで確認したステータスなのですが…」


そう言って、オレは『鑑定の魔眼』で調べた結果を紙に書き記すと、皆に見えるように机の上に置いた。

『絶対記憶』で記憶しているため、間違いはないはずだ。

…そういえば、この世界の会話も文字も普通に使いこなすことが出来ているが、これは如何いった理屈なんだ?転生時のボーナスみたいなものなのだろうか。


○一一一一一一一一一一一一○

l名前:インターセプト・ゴールデン・ベアー(ウル)

l種族(状態):魔熊族(健康)

lLV:82(0T/40000T 1T=1000000M)

lHP:846/846

lMP:217/217

l攻撃力:442

l守備力:1281

l行動力:266

l幸運 ;134

lユニークスキル

l-絶対反撃(3/5LV)

lスキル

l-爪術(3/5LV)  -咆哮(4/5LV)

l-精密(2/5LV)  -不動心(3/5LV)

l-察知(3/5LV)  -防衛(4/5LV)

l-波動化(3/5LV) -力溜め(2/5LV)

l-硬骨(4/5LV)  -再生(4/5LV)

l称号

l-突然変異体

l-ダンジョンボス

○一一一一一一一一一一一一○


「「「…………」」」


全員が金熊のステータスを確認し終えると、狩猟小屋のリビングには重苦しい雰囲気だけが残った。

その空気を最初に破ったのは、エミリ―の「無理でしょ、これ…」という独り言の様な呟きだった。


「いや、ホントに。どこら辺が無理か説明しなきゃいけないの?ってぐらいに無理でしょ、これ」

「まさかこれ程とはな。まるで敵う気がせん。この防御力に『硬骨』『防衛』『再生』など、手傷を負わせることすら至難よ。くはっはっはっ!」


笑い事ではないですよカッサバさん。そんな楽しそうなカッサバさんを他所に、困った顔をしていたソーリスが口を開いた。


「これは流石に…別経路からダンジョンに入り、直接ダンジョンマスターを討伐したほうが速いのでは?」

「そうだね…でも、あそこ以外にダンジョンの入口って有るのか?」

「私がダンジョンマスターなら、あの金熊に守らせている以上、別の出入り口を作るメリットは無いと思うけどね。あって脱出口くらいだと思うけど、絶対隠しているだろうし」

「仮にダンジョンマスターを殺せたとして、あの金熊が消滅する保証はあるまい。想像になるが、ダンジョンマスターの呪縛から解き放たれた金熊が、町の方に向かうような事になれば大惨事になる」


確かに、赤熊や青熊レベルの獣であればカーネルの町でも多少の被害は出るだろうが対応できると思う。だが、あの金熊は流石に無理だろう。

まだ魔族軍と一戦交えたほうが被害が少ない筈だ。


「これもう、放っておいても王国軍でもダンジョンを占領出来ないのでは?」

「ふむ、それでもこの国の大将軍と秘宝の魔道具一つでもあれば辛うじて戦えるとは思うが、そこまでの戦力を出すまでに軍を小出しにして何度か失敗しそうだわな。それに、絶望的に強い獣が居ると伝えても、王国側に情報が洩れれば確実にちょっかいを出してくるだろう」

「それでは、やはりカーネルの町を拠点にするため占領される可能性が高いですね…」

「結局のところ、あの金熊を何とかしなければいけませんね」


その後、30分程金熊の対処法を考えてみたが、「これだ!」という会心の案が出る事は無かった。

煮詰まって来たし、今日はそれぞれ休むことにしようとした矢先、エミリーが入口の扉に挟まっている一枚の紙を見つけた。

どうやら来客があったようだが、オレ達が不在だったため手紙を置いて行ったらしい。

目に付きやすいように扉に挟んだのだろうが、『世界地図』で直接部屋の中にワープして来たから気付くのが遅れてしまったな。

今、その手紙をエミリーが読んでいるのだが、その顔がどんどん険しくなっていく。如何やら朗報の類ではないらしい。


「エミリ―、どうした?」「エミリ―、どうしたの?」、とオレとソーリスが同時に声を掛けると、エミリーは無言でオレ達に手紙を差し出した。

その手紙を、ソーリスと一緒に読むと、隣のソーリスが息を飲んだのが分かった。

オレも、その手紙に書かれている内容に思わず眉根を寄せてしまう。

その手紙に書いていた内容を要約すると、ダンジョンについて聞きたいことが有る為、アロア自由領軍司令官マーシャルの元にまで来いと書かれていたのだ。

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