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33.赤と青

『熊の領域』に突入してから2時間程経過した。

前の銀熊の様な高レベルは思ったよりも発見できず、遭遇した熊のほとんどは強化版毛熊のようなステータスの黒熊しかいなかった。

進んでいる方向が悪いのかとも思ったのだが、エミリ―の『世界地図』とカッサバさんの『狩猟』で熊の領域の中央に進んでいることに間違いないそうだ。

『ヘルモード』による超高確率エンカウントもなりを潜め、これは思ったよりも楽勝でダンジョンまでたどり着けるのではないかと思った矢先、オレたちは2頭の熊と相対することとなった。

一方の熊は燃え盛る炎を毛皮の様に纏い、口からはレーザーの様な熱の塊を放出することが出来る赤い熊。

もう一方の熊は、滅茶苦茶硬いつららの様な氷を両肩から生やし、突進を繰り返す青い熊だ。

そんな熊たちに対し、オレたちはカッサバさんとオレが前に出て、ソーリスとエミリーを後ろに据えて援護してもらう布陣で対応する。


「小僧!あの焚き木の如き熊と儂は相性が悪い!氷塊を受け持つ故其方は任せたぞ!」

「ああ、オレもこっちの方がやり易そうですので問題ないです」


カッサバさんの言葉に頷き、ククリナイフを構える。

赤熊はオレを威嚇するようにじっと睨み付けていた。如何やらあちらもオレをご指名らしい。

赤熊を改めて観察すると、この森の熊としては小さく体長2m程。地球の熊とほとんど変わらないように見える。牙や爪も黒熊や銀の様に鋭く伸びてはいない。恐らくは炎を使ったスキルを使用するのに不要だからだろう。

一先ずはステータスチェックだ。青熊のステータスチェックはカッサバさんが何時もの様に「不要だ」と言われるだろうし別に良いか。


○一一一一一一一一一一一一○

l名前:フレイムキャスト・ブブ・ベアー(ノーネーム)

l種族(状態):熊族(健康)

lLV:34(0/2990000)

lHP:307/307

lMP:102/102

l攻撃力:296

l守備力:235

l行動力:154

l幸運 ;13

lスキル

l-消火陣(2/5LV)

l-発火皮(3/5LV) 

l-熱線砲(2/5LV)

l-耐火(3/5LV)

○一一一一一一一一一一一一○


攻撃力が高い。まぁ見るからに高そうではある。

対となるあの青い熊はもしかしたら防御力が高いかもしれないな。

赤熊の毛皮から湧き立つように炎が溢れるが、毛皮は一切燃えも焦げもしない。これが『発火皮』と『耐火』の効果だろうか。接近戦はあの毛皮の炎に巻かれながら戦うことになる。ククリナイフで戦うのは避けた方が無難だろう。

にしても、この毛皮で服を作れば良い耐火性の服が作れそうだ。でも、死んだ後でもスキルの効果って残るのか?まぁ、『死霊使い』のオレであれば実験も容易か。


「ガァァッ!」


そんな如何でも良い事を考えていたら、赤熊は一瞬の溜めの後、冗談のような光学兵器じみた高温の光線を吐き出して来たのをしゃがんで躱す。中々格好良い、これが『熱線砲』か。

一見すると強力そうに見えるが、熱線が吐き出される直前には『溜め』があり、息を吸い吐き出すまで凡そ2秒かかる。大木を貫通する威力自体は大したものだが、その溜めは躱してくださいと言っている様なもんだ。アクションゲームの2面ボスって感じかな。

射程は見た目に反して短いように見える。大体10m位か?

再びの溜め動作を見切り、『縮地法』を使い土を蹴って移動し射線から体をずらす。横を通り過ぎていく熱線の熱さを感じながらククリナイフを鞘にしまと、右手を前に出し『倉庫』に収容している水を取り出す様に念じる。

この水はソーリスと初めて遭った洞窟近くの川の水で、『死霊使い』修行中に大量に汲んできた物だ。

倉庫に入れて来た水は500ℓを超える。出し惜しみはしない。


(100ℓを『倉庫』から放出、『液体操作』でMP10を消費し『水銀』に変化)


差し出した手の上に大量の水を出現させると、それをすぐさま操作して巨大な銀色の塊を宙に浮かせる。

『水銀』は最も有名な液体金属であり、1ℓ辺りの重さが13kgである『前』世界一重い液体だ。暇を見つけて行った研究の結果、液状の鉄や鉛などは『液体操作』で作り出すことが出来なかったが、水銀だけは何故か成功した。

思うに、オレは金属というとインゴットの様な金属の塊をどうしても想像してしまうためではないかと思っている。その点、水銀は逆に固体でイメージするのが難しい位なので、思ったよりも簡単にできた。


(二つに分け球体状に。俺を中心に公転し速度を上げる)


オレの眼の前で浮いている銀色の液体が2つ分かれ、巨大なパチンコ玉の様になると、オレの腰辺りを軸として衛星のように周り始めた。一つは時計回りに、もう一つは反時計回りに公転させる。

この『液体操作』によって操作されている液体はオレの想像通りに動かすことが出来るのだが、即トップギアで動かす事が出来ず、徐々に速度を上げていく必要があった。これも恐らくイメージの問題で、練習によって少しマシになったが未だにイマイチ速度が上がらない。これを遠心力で速度を上げるイメージで速度を上げていけば、最高速度は最高で秒速50m程にまで上げる事が出来る。

さらに、50ℓの水銀の重さは約650kgもある。まともにぶつかれば液体と言えども軽自動車の突進と同レベルの衝撃を見舞う事が出来るはずだ。


「ガァァァルァァッッ!」


オレが熱線を躱したことに腹を立てたのか、赤熊の大きな咆哮と共に再び熱線が放たれる。

今度は真っ直ぐに狙わず、薙ぎ払うかのように頭を振って『線』では無く『面』で当てようとしてくる。突撃を繰り返すごり押し熊ばかりと戦ってきたが、こいつは結構頭が良い熊かもしれない。

そんな赤熊に向けて水銀球の一つを回転の勢いをつけて発射する。

水銀球は薙ぎ払いの熱線を受けてもへこむように変形するだけで、真後ろに居たオレには熱線は届かない。剛速球となった水銀球はそのまま熊にぶつかるも熊は弾き飛ばされ、一本の木をへし折りながら地面にどうにか着地する。水銀球は多少削れはしたものの、いまだ健在だ。

熊が倒れた際に火の粉が舞い上がり辺りに引火するが、即座に火が消えて黒くなった草木だけが残った。『消火陣』ってスキルの効果か?これで赤熊の全スキルを確認できたが、攻撃スキルは結局熱線のみか。それなら、特に恐れる事は何もない。

未だ公転を続ける二つの水銀球をオレから『液体操作』で操れるギリギリまで離していく。

赤熊は先ほどの衝突によって右腕を痛めたようで体の動きが鈍い。最後の足掻きとばかりに此方に向けて口を開き、熱線が三度放たれうようとしていた。だが、もう遅い。

イメージを高めるため水銀球を操るように腕を振ると、大きく周回していた水銀球が腕の動きに沿うように加速しながら動く。振るっていた腕を前に揃えて手を合わせると、水銀球の間にいる熊を挟み込むようにして勢いよくぶつかった。

瞬間、『ズバァァァン』と液体同士がぶつかりあう音とは思えないほどの轟音が辺りに響く。挟まれたほうの熊は、一つにまとまった水銀球から頭と足だけが見える状態だが、ピクリとも動かない。

再び一つにまとまった水銀を熊から遠ざけると、水銀にまみれ上半身が細長く潰れた熊が倒れている。

水銀に濡れた毛皮にはもう炎は無く、圧された上半身の所々からは折れた骨が飛び出していた。

この戦法、結構強いと思うんだが戦利品の質を下げてしまうな。狩りの時は勿体ないし使わない方が良いかもしれない。


「素晴らしいお手際でした、旦那様。『超聴覚』で確認しましたが、周囲に獣らしき音は有りませんでした。連戦は無いかと」


そう言ってオレの後ろから声を掛けて来たのはソーリスだった。

その手にはいざと言う時の援護するために弓が握られているが、今回は射る機会が無かったな。


「ありがとう、だけど旦那様はやめてくれ。…あっちは如何なっている?」

「エミリ―が目を射貫いた隙にカッサバさんが両肩の氷柱を砕き、手とうで首を落としていました。まもなく2人とも此方にいらっしゃるかと」


青熊の氷、ククリナイフが全く刺さらないくらいには硬かったんだけどな。カッサバさんの拳は鋼か何かかなのだろうか。

それにしても、この2体の熊はちょっと異常だ。森を燃やしてしまう可能性のある『炎』や温暖な気候の森に『氷』だなんて、この森で生きて行くには不要だろう。

ダンジョンマスターが俺たちに対抗するために、特別に呼び寄せた眷属なのかもしれない。

オレたちに対する牽制か、様子見の為に送り込まれているのではないか、と考えるのは自意識過剰だろうか。

ダンジョンマスターの思惑を考えつつ、此方に近づいてくる青熊の生首を右手に掲げたカッサバさんと思案顔のエミリーの元に向かうのだった。

ヒグマの体重は500kg位あるという事を知りました。

650kgで時速100kmの液体だと実際にぶつかっても、そこまで派手に吹っ飛ばないかもしれないですね。


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