32.森道中の休憩
あの朝食後いくつかの意見が出たが、ダンジョンを攻略することで方針を固めた。
要するに、ダンジョンがあるから問題が起こるわけだから、誰も気が付いていない内にダンジョンなんて無かった事にすればよいのだ。俺たち以外に誰も損することも無く、また得することも無い。
というのは建前で、オレ自身少しそのダンジョンとやらに興味があるのだ。
誰も入ったことのない未踏の遺跡、なんとも浪漫溢れる所じゃないか。ドキがムネムネしてしまう。
カーネルの町について云々と言うのは繋がりの薄いオレにとって正直な所あまり興味は無い。が、ソーリスが余り王国軍に支配されるのを余り良しとしていない為出来るだけどうにかしてやろう、とは思っている。
かといって、それで仲間が危険に陥るような事になれば本末転倒だし、引き際を間違えないようにしないといけない。
…そんなわけで、今は件のダンジョンに向けて、『熊の領域』にオレたち4人は森を進んでいた。
暫くそうして進んでいたが、先頭を行くカッサバさんが、鍛え抜かれ引き締まった腹を摩りながら後ろを振り返った。
「ふむ、時間も腹具合も程ほどか。一旦休憩とする」
エミリーはそれを聞くや否や、「ようやくかー」と草の上に倒れ込み、ソーリスはそれを見て「もう、服が汚れるわよエミリー」と可笑しそうに笑っている。
エミリーが疲れているのは、道中までの道のりで出て来た獣たちはエミリーに処理してもらったからだ。
ソーリスが『裏技』で経験値を稼げるようになり、現時点で一番経験値を稼ぎにくくなったのは彼女になった為だ。低レベル帯は出来るだけ彼女に倒してもらうようにしたのだ。
カッサバさんはお腹が減ったからと言っていたが、もしかしたらエミリーを気遣っての事かもしれない。
対してソーリスは種族の特性も相まって疲れや気負いは見えない。と言っても、元々町の住人であった彼女はダンジョンと言う存在には思うところが有るはずだ。
ダンジョンの攻略とはすなわちダンジョンマスターの殺害になるため、眷属として召喚されている熊や狼が出現しなるとカーネルの街』に経済的な損失を与えるのではないかとソーリスは懸念していた様だが、それに関しては幾つか考えが有るので問題ない…はずだ。
ダンジョンを攻略した後の事も重要だが、今は攻略する事そのものに集中しなければならない。
恐らくダンジョンがあるとすれば『熊の領域』の中心にあると思う。中央に進めば進むほど強力な個体が出現するのは所謂防衛力としてなのだろう。
『熊の領域』の入口でさえあの銀熊の様な40LVだった訳だし、ダンジョン近くや入口なんてそりゃあもうすごいのが出てくるのだろう。熊ドラゴンが出てきても驚かない。
と、熊について考えを巡らせていて立ちっぱなしだったのを、ソーリスが「どうかされましたか?」と不思議そうにしていた。気付けばオレを除いたみんなは思い思いに休憩をとっていた。オレもみんなに習い座り込み、ソーリスの疑問に答える。
「熊について考えていたんだ。やはりこの森の熊の生態は少しおかしいよ。まるで何かに追われるかのように必死に獲物を見つけて捉えようとしてくるし」
「野生の生き物というのは、得てしてそういう物ではないでしょうか」
「うーん、そうなんだけど…。『ダンジョン産』だけの特殊な何かがあるような気がしてならないんだよね」
野生動物というのは本来、腹が満たされている状態だと狩りをしない。
冬眠する熊などは自らに脂肪をつけるためにドカ食いするらしいが、年がら年中春や秋みたいな気温のこの森ではあまり意味がない。
エミリ―曰く、この森は季節という物は存在しないらしく、冬が無い以上冬眠などもない。
さらにその巨体を維持するためか、一日中ひたすら狩りをし続ける。
豊富に成っている森の恵みや角兎、狼、冒険者だって食い放題だ。
となれば、状態:飢餓になっていない熊が必要以上に攻撃を仕掛けてくるのはなぜか?
この森に入る人間の殆どは狩人か冒険者なわけだから、人間が危険な生物として認知されていてそれで襲っているとも考えられる。
だが、あの熊たちはどんなにピンチになろうが一切退こうとしない。ここまで何十体と熊を倒して来たが、一体も居ないのはおかしくないか?カッサバさんが熊の頭を吹き飛ばしても躊躇なく突っ込んで来るんだぞ?そんなもん見せられたら、俺なら即逃亡か土下座をかます所だ。
…まぁ、それを今から調べに行くわけだしな。今は休憩…の前にステータスチェックをしておこう。
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l名前:トモヤ
l種族(状態):人族(健康)
lLV:28(5UP 184156/340000)
lHP:252/252(35UP)
lMP:85/85(15UP)
l攻撃力:280(67UP)
l守備力:240(35UP)
l行動力:244(42UP)
l幸運 ;-266(42UP 称号『転生者』の為-500補正)
l
l???
l-神様へのチケット
l
l祝福スキル
l-逃走吸収 (2/5LV)
l-徴収贈与(1UP 2/5LV)
l-時間停止(2/5LV)
l
lユニークスキル
l-鑑定の魔眼(2/5LV)
l-絶対記憶(2/5LV)
l-液体操作(2/5LV)
l-暗殺者の素質(1UP 2/5LV)
l
lスキル
l-短剣術(2/5LV) -狩猟<野生>(2/5LV)
l-爪術(0/5LV) -土魔法(0/5LV)
l-剣術(2/5LV) -擬態(2/5LV)
l-弓術(2/5LV) -倉庫(1UP 1/5LV)
l-縮地法(1UP 1/5LV) -探知(0/5LV)
l-死霊使い(NEW 3/5LV) -咆哮(1/5LV)
l
l称号
l-転生者<ヘルモード>
l-魂の契約者;主(NEW)
l-『血の呪術師』(NEW)
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大分ステータスは上がって来た。この世界でレベルアップの平均速度は分からないが、これは結構早いんじゃなかろうか。ただ、カッサバさんに聞いてみた所、上のレベルに行くには自分よりも低いレベルのものを沢山狩るのではなく、同レベル帯を狩らなければ効率が悪いらしい。
そのため、カッサバさんも同等の実力をもつ魔物や獣に出会えなかったり、たとえ出会えてもあの銀熊のように手傷を負ったりと上手くいかないことも多いのだそうだ。
ただ、この先の『熊の領域』には高レベル帯の熊が大量に居ると予想しているため、そこで結構稼げるのではないかとオレは思っている。カッサバさんもノリノリだ。
ともあれ、後はステータスだな。クリーンとの戦いの後、レベルが上がったスキルを見て行こう。
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l徴収贈与(2/5LV コスト無し 祝福スキル)
l-死体に接触している状態で発動出来る。
l-このスキルは、祝福スキル以外ではレジスト出来ない。
l-スキル保有者のスキルを2つ対象の死体に譲渡する。死体よりスキルを一つ選択し、それを取得
l することが出来る。スキルランク、レベルは問わない。
l-このスキルで習得したスキルのレベルは2になる。
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レベルが上がって変わった所は取得する際のレベルだな。確定で1LVでしか取得出来なかったのが、2LVで取得できるようになった。今のところ高LVで問題があったことは無いので、高いLVで取得できるならそれに越したことは無いかな。
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l暗殺者の素質(2/5LV コスト無し ユニークスキル )
l-常時発動状態。
l-攻撃成功時、攻撃対象者に此方の存在が気付かれてい無い時、ダメージに+100%補正。
l このスキルが発動し、尚且つ対象の殺害に成功したとき、経験値取得に+50%補正。
l-レベルアップ時のステータス上昇値に攻撃力+3、行動力+3。
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経験値アップ効果と、レベルアップ時のボーナスが増えた。
これからはこのスキルの発動の為に積極的に不意打ちをしていくべきかな。
…ん? 俺の戦い方って基本不意打ちだからあんまり変わらないか? 『絶対記憶』で思い起こしてみると、三つ巴戦や死体が爆破する記憶ばかりで…あ、じゃあ別に深く考えなくても今まで通りでいいや。うん。
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l 縮地法(1/5LV 消費MP:1 スキル )
l-常時発動可能。
l-足の裏から魔力を放出し、勢いをつける移動法。
l-移動距離、速さはスキルレベルとスキル保有者のステータスに依存する。
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カッサバさんも使っているスキルで、使ってみると1m位ならば疑似的な瞬間移動の様に使える。
1LVでも攻め受けどちらにも使えるため結構優秀なのだが、1度使用するごとにMP1が消費されるので連発はキツい。使いどころは考えないとな。
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l 倉庫(1/5LV コスト無し スキル )
l-常時発動可能。
l-生物・敵性対象以外に発動可能。手に触れているものを亜空間に保管することが出来る。
l-容量以上に倉庫に入れることは出来ない。容量はスキル保有者の
l レベルとスキルレベルに依存する。
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念願の『アイテムボックス』だ。実験では1LVでも50体くらいの熊を保管することが出来た。
亜空間がどうなっているのか分からないが、保管中は時間の経過も無い。
スキルレベルは低いのだが、オレ自身のレベルが高いため思ったよりも容量が多く超が付くほど便利だ。
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l 死霊使い (3/5LV コスト無し スキル )
l-常時発動可能。
l-魂を視認・会話することが出来る。
l-魂と死体を操ることが出来る。以下の『アーツ』が使えるようになる。
l
l○『死体保管』消費MP10…死亡してから5分以内の接触している死体にのみ
l 発動可能。死体の時間を止めることが出来る。
l○『死体修復』消費MP15…肉体の3割以上が残っている時、死体の腐敗・損傷を
l 生前の状態にまで回復することが出来る。
l○『屍蘇生』消費MP60…死亡してから5分以内の死体に触れている時のみ発動可能。
l 死体は種族:ゾンビとなり『魂の契約』が行われる。
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転生魔族クリーンから『徴収贈与』を使って手に入れたスキルだ。
今回ソーリスの蘇生の為に必要だったアーツ『屍蘇生』は3LVで取得できた物で、このときの『徴収贈与』は1LVだったため、手に入れた『死霊使い』も1LVからのスタートだった。
そのため、2週間ほどのレベル上げが必要となり、蘇生が遅れたのだが、問題だったのは訓練方法だ。
何しろ死体が無ければ発動すら出来ないし、消費MPも多い。
そこでカッサバさんの狩りに後ろについて回って、しばき倒されていく獣にひたすら『死体保管』を使いまくり、2LVになってからは『死体修復』も使って無理やりレベルを上げた。
死体の損傷が少ないと毛皮の痛みも無くなるため、カッサバさんにも非常に喜ばれた。
ソーリスを疑似蘇生させたアーツ『屍蘇生』、このアーツで重要なのは『魂の契約』だ。それは称号に現れている。
次は称号だな。
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l魂の契約者:主(称号)
l-魂の契約(主従)を行ったものに贈られる称号。主従契約の主に当たる。
l-契約済みの称号『魂の契約者:従』を持つ者に自らの経験値を分け渡す出来る。
l-契約済みの称号『魂の契約者:従』を持つ者に自らのMPを分け渡す出来る。
l-契約済みの称号『魂の契約者:従』を持つ者が得た経験値は、全て
l この称号を持つ者の経験値となる。
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これは、ソーリスの持つ『魂の契約者:従』と2つで1つの称号となっている。
ソーリスに称号の内容を聞いてみるとこんな感じだった。
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l魂の契約者:従(称号)
l-魂の契約(主従)を行ったものに贈られる称号。主従契約の従に当たる。
l-この称号を持つ者は、契約した称号『魂の契約者:主』の効果以外の方法で経験値を
l 得る事が出来ない。
l-この称号所有者は、契約済みの称号『魂の契約者:主』を持つ者に逆らうことが出来ない。
l-契約済みの称号『魂の契約者:主』を持つ者が死亡した時、このスキルを持つ者も死亡する。
l-契約済みの称号『魂の契約者:主』を持つ者が100m以内に存在し無い時、
l この称号を持つ者は死亡する。
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実は種族:ゾンビになるとMP自動回復の消失するらしい。まあそれくらいのデメリットは許容範囲内だろう。MPを回復させるには俺のMPを受け渡せば済むことだ。
それよりも問題は100m以内にオレがいなければソーリスが生きられ無い事。
もう一つはオレが死んだ場合ソーリスも巻き添えになる事の2つだ。
ソーリスを近くで守りつつ、今まで以上に自身の身も大切にしなければならない。
他には、ソーリスにオレの経験値を経験値を譲り渡すことが出来るようになったため、経験値を渡してソーリスは今レベル10になっている。もっと渡そうかと思ったのだが、これ以上のレベル上昇はソーリスからストップがかかった。
如何やら、いきなり上げ過ぎると急激な運動能力上昇について行けずに振り回されるとの事らしい。
一番初めに使った時に、7レベルから10レベルにあげた時、腕や足の動きが少し大ぶりになっていて、慣れるのに1,2時間かかったようだ。ソーリスには悪い事をしたな。
1か月程前、オレが初めて熊を倒した時はそれ以上にレベルが上がったと思うのだが、そんな反動染みたものは無かった筈だけど…経験値の受け渡しという特殊ケースだからだろうか。
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l『血の呪術師』(称号)
l-別称が一定以上浸透したときに得る称号。
l-称号を保有していない者に対して、ダメージ+10%補正
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今カーネルの街ではオレを英雄として祭り上げている。
ギルドマスター・ハーガンさんとの約束を守るため、1週間後の顔見せの際、冒険者ギルドに寄った時に知った。恐らくこの称号はそういった事で取得できたのだろう。
なんでも、魔族軍に大打撃を与えた呪われし一族の末裔みたいな感じで。祝福スキル持っているから呪われてはいないんじゃないかな。『ヘルモード』は呪いっちゃ呪いか。
さて、復習したい事と言ったらこのぐらいかな。集中するために閉じていた目を開く。
何にせよ、3LVが未だ『死霊使い』のみと言うのは聊か心もとない。これから戦闘で使うスキルはほぼすべて2LVしかないのだ。
道中に高レベルの獣がいれば積極的に狩って行こう。




