24.指揮官
文章評価、ストーリー評価ありがとうございます!
23時更新、今日は出来るかどうか微妙です。
→先ほど完成しました。23時投稿します。
さらに奥に進んでいくと、先ほどのゴブリン達の無秩序な行進の部隊と違って、小隊を組んで進んでいる部隊が辺りを警戒しながら進軍していた。その部隊もゴブリン達で構成されているが、装備の質が先ほどの部隊と比べて圧倒的に良い物で構成されている。一部に鉄を使った銅当てや兜、素足が基本のゴブリンなはずが、革で拵えたブーツを履いているのもどこかチグハグな印象を受ける。全体的に兵士としての錬度も高そうに思えた。
『召喚獣』作戦、『死体爆弾』を先行部隊に立て続けに受けても、この精鋭部隊は進む足を止める気は無いようだ。
何体か粗末な装備をした、ケガの酷いゴブリンが居るのを見ると、前の部隊からの報告を受けている筈だ。
それでも足を止めることがない、というのは、妨害してくるオレ達をどうにかしつつ、目標を達成する自信があるのだろう。
うーん、他に作戦も思いつかないし、『指揮官狙撃』作戦をやるしかないか。
と言っても、見た限り装備が良いゴブリン達の中で、さらに良い装備をしたゴブリンが何体かいるが、どれも司令官と言うほどには見えない。良いとこ小隊長レベルだ。
隣では、また指を折り兵数を数え始めたエミリーが、溜息をつきながら精鋭ゴブリン部隊を見て言った。
「はぁ、引いてくれないか…。これが主戦力の部隊かな。指揮官はもっと奥?」
「だね。『咆哮』一発入れてく?」
「この精鋭部隊っぽいの100体以上だよ。囲まれちゃったら無傷で突破っていうのは厳しいと思う。獣たちが早く来る保証もないし、止めとこう」
「じゃあ最初の作戦通り、適当な木の上に登って狙撃準備をしよう」
この部隊の進行方向は、俺達と獣によってボロボロにされている先行部隊だ。
ここに来るまでに良さそうな木は何本か検討を付けている。その上で狙撃の準備しようと思う。
オレがそう言うと、エミリーは少し手を顎に当てて何か考えていたが、纏まったのかオレに言った。
「もう少しこの部隊が過ぎるのを待って、指揮官を一度見て行こう。可能性は低いと思うけど、この部隊に指揮官が居ない可能性もあるから」
「部隊に指揮官が居ないとかあり得るのか?」
「可能性の話だよ。何しろ『魔族軍』だからね。セオリーで測らないほうが良いと思う」
「…成程な。ならここで隠れながら、確認しよう」
にしても、この部隊は全く引く素振りすら見えない。先行部隊は獣に逃げ出したが、この精鋭部隊はそんなことは無かった、とでもいうかのように進んでいく。
作戦開始から此処まで、凡そ100体は俺達で倒している。残り400体の内、獣にやられた分がどれほどか分からないが相当数殺されている筈だ。
部隊の2割以上を削っても、進軍を止める事すらしないとはどういう部隊なんだ…。
悶々とオレが考えていると、エミリーから無言で肩を叩かれた。何だと思い見てみると、エミリーが指を精鋭部隊の後ろに向けていた。そこにいたのは、一見すると人間なのだが肌が青く角が有る。つまりあれが…。
「『魔族』か」
「あれが指揮官で間違いなさそうだね。着ているものもそれっぽいし」
確かに、派手な軍服のようなものを着ている。あれがこの部隊の指揮官なのだろう。
パッと見た限りそんなに強くは見えない。腰に佩いた剣も飾りが豪華だが、実用性に欠けているように見える。
整っている顔をニヤケ顔に歪め、周囲のゴブリンに話しかけている。
それよりも、エミリーはあえて突っ込まなかったのか、あの魔族よりもあいつが乗っているモノの方がが問題だった。
あの司令官と思わしき魔族は、身長5mを優に超える大獅子に乗っていたのだ。その真っ黒な体に、いかにも鋭そうな牙、尾も非常に長く、3m以上の長さだ。その禍々しい黒い獣は、『鑑定の魔眼』を使わずとも強者の気配が滲み出ていた。
「エミリ―、あの黒獅子なんだけど…」
「あーそれ言っちゃう?現実見ちゃう?…いやはや、見誤ったねぇ。たぶん、あれが勝算なんだよきっと。どれだけゴブリンが死んでも、『あれ』だけで勝てる自信があるんだ。トモヤ君、『あれ』に勝てる?」
「ちょっと待って」
エミリーには事前に『鑑定の魔眼』の事は伝えてある。奴らに切り札があった場合、それを正確に調べられるオレの眼を使い、エミリーと情報を共有すべきと思ったからだ。
先ほどは驚いて発動しなかったが、今度こそ『鑑定の魔眼』を使いどの程度の強さなのかを見た。
○一一一一一一一一一一一一○
l名前:レッサー・マンティコア(レックス)
l種族(状態):魔獅子族(隷属)
lLV:37(178523/17000000)
lHP:330/330
lMP:166/166
l攻撃力:251
l守備力:265
l行動力:138
l幸運 ;89
l
lスキル
l-爪術(4/5LV) -暗視(3/5LV)
l-鞭術(3/5LV) -狂化(2/5LV)
l-重力魔法(3/5LV)
○一一一一一一一一一一一一○
やはり強い。ギルドマスターやカッサバさんクラスじゃ無いと厳しい。ステータスだけならオレにも戦いようが有るが、スキルに4LVがある。カッサバさんの戦いを見て分かった。このレベルになると、同LVのスキルを持っていないと対処が難しい。相性のいいスキルや一撃必殺のスキルを持っているのなら別だが、今の手持ちのスキルで奴に勝機があると言ったらやはり『液体操作』なのだが、奴に傷を負わせないと血を別液体にする戦法は使えないし、ステータスが上の奴に溶解液やニトロ爆弾がどれだけ通じるか如何か分からない。スキルも初めて見る物ばかりだし、レベルも総じて高い。
オレは、この強敵の情報をエミリーにできるかぎり正確に伝えると、エミリーは渋い顔をして、黒獅子を睨み付けた。
「私じゃ絶対に無理だね。トモヤ君は如何なの?」
「作戦を練りまくった上で、コンディション最高の状態なら五分五分位かな」
「分かった。今じゃ無理って事ね。作戦目標は『ゴブリン部隊の撤退か殲滅』から、あの『黒獅子と魔族を撤退させる』にチェンジだね。レッサー・マンティコアの行動力は低いみたいだし、逃げる事前提で考えると、やっぱり狙撃戦しかないか…」
「だな。此処を離れよう」
移動するために、立ち上りかけたオレの手を、エミリーが掴んだ。
「待って待って。指揮官のステータスは如何なっているのか調べた?もしレッサー・マンティコアと同レベルだったら、私たちの撤退を考えた方が良いって」
「…忘れてた。ごめん、もう一回調べるから、少し待って」
ヤバいな。黒獅子を見たせいで緊張しているのか、肝心の指揮官の方のステータスを見るのを忘れていたとは。
そういえば、高ステータスになってからは余りかくことも無かった汗を背中に感じる。緊張しているのか。
改めて指揮官のステータスを右眼で見ると…
「エミリー」
「何?ステータス判った?」
「判った。あいつ、転生者だ」
「…は?」と、エミリーが聞き返す。オレはもう一度繰り返した。
「転生者だ。それも、『イージーモード』の」
オレが合うことになった2人目の転生者は、どうやら魔族になるらしい。




