23.オリジナル爆弾
ちょっと残虐かもしれないです。
23時にもう一話投稿します。其方は2000字程でちょっと短いです。
ゴブリンが後退して行くのを確認した後、「ギャンギャン!」と五月蠅いと思ったら、狼の何匹かが此方を獲物と見定めたようで、木の下を吠えながら俳諧している。予想通りとはいえ邪魔臭い…。
「トモヤ君、ロープ結べたよ。下の奴は如何する?」
「大丈夫、対策済みだから。エミリ―、その枝の下にゴブリンの死体が一体あると思うんだけど、何処に当ててもいいからそれを矢で撃って。撃つとき、真上にはならないように角度を付けて」
「あいよー」
エミリ―が何故ともいわず、オレが指さした枝の下、一体のゴブリンの死体を弓で射貫いた。
すると、射貫いた瞬間、『バァァァン』という強烈な音と共に、強烈な爆風が巻き起こる。
エミリ―も「うわわわわ!」と、大きな枝に掴まり爆風に耐えていた。
そう、オレはあのゴブリンの死体の中の血を、予めニトログリセリンに替えていたのだ。
この方法を使えば、血を流している死体を、全て即席の爆弾にすることが出来る。今回は、操作を一旦放棄したので、ニトログリセリンを爆発させるために矢を使って射貫く必要があったけど、上手く爆発してくれてよかった。
下にいた狼たちは、爆風に煽られて全て吹っ飛んでいた。ある狼など、俺達が登っている大木の枝に突き刺さっている。折角なので、木の枝に刺さった狼の血は全て吸い取り、水に替えて水筒に詰めた。水筒の水は全て油に使ってしまったので丁度良かった。
「トモヤ君…いくら何でもそれは…」
「ヘルモードなんで」
「何でもそれ言えば良いってモンじゃ無いよ…」
あきれ顔のエミリーは、ロープを地面に垂らして、地面に下りる。オレもそれに続いた。
あの爆発音で他の獣が集まって、後続としてゴブリンを追いかけてくれたら万々歳だ。
地面に降り立った後、オレとエミリーは、『隠密』を発動し、草場に隠れながら移動する。目標は逃げ出したゴブリン達のさらに後ろ、本丸の部隊に指揮官が居るはずだ。此奴を狙いに行く。
隠れながら進んでいると、辺りを油断なく警戒しながら、エミリーさんが小声で話しかけて来た。
「此処からは大体アドリブで行くんだよね?」
「目的の『ゴブリン部隊を引かせる』ことが出来ていれば、無理やりにでも指揮官殺しを成功させなければいけないって訳じゃ無いからね。部隊を半壊させて撤退させるだけでも良い」
指揮官殺しの作戦は、『隠密』で隠れつつ、弓のアーツ『ロングスナイプ』で遠くから狙い撃つ狙撃作戦だ。正直、指揮官に関しては情報が少な過ぎるため、碌な作戦が思いつかなかった。そのため、狙撃作戦を実際に行うかどうかはかなり微妙だ。
「もし、それでも司令官が諦めずに進軍させ続けたら?」
「それも予定通り、カッサバさんと合流して攻めるか引くか相談しよう。仮に町に向かったとしても、大分数は削ったと思うし、町の損害も小さいはずだ。やれることはやったよ」
「それもそっか」と、前を進みながら手のひらをヒラヒラとさせているエミリー。もしかしたら緊張しているのかな。
そもそも、先ほどの話にしても事前にエミリーと相談しているから知っている筈だし、何か気になる事でもあるのだろうか。
そのまま進み続けていると、『ボソリ』とエミリーが小さく呟いた。
「もし、この状況で指揮官が進めって号令を出すのなら、それはまだ勝算があるって事なんだよね…」
エミリ―が何か不吉な事を呟いた気がするが、気にしないことにした。
「ギャウゥウ…」
「ギャギャギャ、ゴギャ!」
ゴブリン達は随分先にまで逃げていたようで、追いつくのに15分以上の時間がかかった。
オレたちは、ゴブリン達の真横の草場に潜み、陣容を伺っている。
今オレ達から少し離れたところにいるゴブリンは、負傷し死にかけているゴブリンに、「しっかりしろ!まだ死ぬんじゃない!」的な事を言っている、ように見える。
辺りを目だけで見渡すと、ゴブリンの死体と、獣たちの死体が数多く散乱している。
如何やら、ゴブリンたちが結構頑張ったようで獣たちは全滅してしまったようだ。爆発音で呼び寄せた追加分の獣も、如何やら不発に終わったか処理されてしまったかな。
エミリーが、ゴブリン達を指折り数えながら、小声で話す。
「そこそこの数残っちゃった?」
「思ったより粘られたね。もう少しあの木で戦えてたら、もう少し多く獣たちを送り込むことも出来たんだけど」
「如何する?正攻法で狩る?ここを素通りして、指揮官を狙う?」
「『死体爆弾』は奴らに見られていないから、上手く嵌めれば相当数処理できるし、『召喚獣』の発生も早めることが出来る。それをしてからでも遅くはないかな」
「死体ば…全くもう。トモヤ君の、その見た目で『それ』かぁ、えっぐいなぁ」
再びあきれた様にエミリーはオレを見ると、耳を抑えて地面に伏せる。先ほどの爆風はエミリーにも堪えたようで、起爆役をやる気は無いみたいだ。今回は操作で起爆させるから大丈夫なのに。
オレは、傷つき血を流して倒れているゴブリンの血を、『液体操作』を使い全てニトログリセリンにする。
倒れていたゴブリンは、目をカッと見開くと、先ほどのぐったりとした様からは打って変わって悶え苦しんでいた。
いきなりの容態の変化に、励ましていたゴブリンも困惑している。
苦しんでいたゴブリンは、心臓の位置を必死に抑えていたが、弓ぞりに体を反るように伸ばすとそのまま動かなくなった。それを見たゴブリンは、何か様子がおかしい事を悟り、その死体から少し離れた。
オレは、傷ついたゴブリンの血が全てニトログリセリンに変わったのを感じ、その温度を少しずつ上昇させて行く。
後は待つだけでニトログリセリンが爆発する。この方法、即時爆発させることが出来ないから水球にまとめて地面に叩きつけるとかの方が起爆しやすいかもしれない。状況次第だな。
目の前のゴブリン達から少し離れた、操作範囲10mギリギリの血を流している獣の死体やゴブリンの死体も同時に死体爆弾に替えて行く。そうして、合計5体の死体爆弾が完成した。
目の前のゴブリンだけ5mくらいの距離、他は全て10mくらいの距離か。
少し近すぎる気もするが。仕方ない。オレもそのまま伏せた。
10秒ほどが経過したが、まだ爆発しない。温度はちゃんと上がっているのだろうか?
30秒ほどが経過した辺りで、一体が爆発したらしく、大木と同じくらいの爆風が吹き荒れる。
それに続けて、遠くの方のから爆発が4発、立て続けに続いた。もう辺りは土煙で全く見えなくなっている。
エミリーは如何やらずっと隣でうずくまったままだったらしい。大丈夫か聞くと、「大丈夫じゃない…」と弱弱しいエミリーの声が隣から聞こえた。
「死ぬかと思った……トモヤ君、小屋に戻ったらちょっとお話しようか、いやマジで」
「はい…」
帰ったら何をお話しされるのだろうか。この戦いよりも断然怖いんだけど。
土煙がだんだんと収まってくると、辺りは初めてここに来た時よりもさらに混沌としていた。木々は何本かなぎ倒され、ゴブリン達でまともに爆風にさらされたもの達はざっと見た感じ30体から40体ほど。殆どがピクリとも動いていない。
爆発音を聞きつけ、遠くの方から爆風の範囲外だったゴブリン達が駆けつけると、この惨状を見て呆然としている。
オレが初めて使ったときの様に、少し木や草に引火しているみたいだが、今日なら大丈夫だろう。ゴブリンも怪我ゴブリンを介抱しながら消火活動をしているみたいだし。
後は、獣たちが来たら完璧だな。今から移動するから、それを見ることは叶わないけど。
「エミリ―。予定通り独断部隊の後方の近くに移動しよう。部隊が退くかどうか見たい」
「此処までやって引いてくれなかったら結構ショックなんだけど」
オレ達は、指揮官がいると思われる後方部隊に回り込むため、ゴブリン達の悲痛な鳴き声を聞きながら、茂みに隠れながら移動を再開した。




