15.観戦
初めてストーリー評価と文章評価をいただきました。
ありがとうございます。
ついに、ゴブリンの集団はオレの目の前3mの位置を横切りはじめた。『探知』を持っているゴブリンはオレに気づけなかったようだ。『擬態(隠密)』が効いているらしい。
そろそろ襲撃しよう。これから先、何度も同じことをすると思う。今のうちに対処出来るようにならなければ。
「ギャギャギャ、ギャギ!」
ゴブリンの号令が聞こえ、全て通り過ぎた後、オレはポーチからケムリダケを取り出す。このキノコ、町に居たとき試しにほんの少しだけ千切って火をつけてみたら、一瞬で物凄い煙が出てきて大変だった。
煙事態には毒も何も無いそうだけど、これは火の扱いに注意しないと大変なことになる。
実験は宿屋の裏手で試したんだけど、女将さんにすごい怒られてしまった。子供の悪戯と思われてたみたいだ。
そんなケムリダケを一本、唾液を油に替えて塗り、出来る限り音が鳴らないように火打石で火をつけてゴブリン集団の中央に投げ込む。1匹のゴブリンに当たると、そこを中心に非常に濃い煙が辺りに渦巻いて行く。あっという間にゴブリン集団を飲み込むと、その煙に充てられて、ゴブリン4体が煙幕の中から飛び出して来た。
(ここだ!)
オレは冒険者のナイフを使い、咳込む端の一体に狙いをつけ、首にナイフを突き刺し、そのまま掻っ捌く。ゴブリンは悲鳴を上げることもできずにうつ伏せに倒れ込んだ。溢れる血を見て、『液体操作』で死んだゴブリンの全ての血を抜く。この一連の『作業』もだいぶ板についてきたな。
抜けた血は全部で2ℓ弱。十分やれる。
先ほど殺したゴブリンたちと同じタイミングで煙幕から出てきたゴブリンはすべて弓兵のようで、近接武器を持っていなかった。集団の後ろの方を襲ったから、当然と言えば当然か。
慌ててオレに矢を向けてくるが、近くに居た一体をステータスの差で無理やり抑え込み羽交い絞めにし、矢からの盾とする。盾にしたゴブリンに2本の矢が刺さった。刺さった場所から血が溢れたため、それも抜く。
「ギャギ!?ギャギャザア!」
此方を射貫こうとしたゴブリンの目に、恐怖が浮かんでいるのが見えた。仲間の体からいきなり血が吹き出し、ふよふよ浮かんでいるんだから当然か。
オレは盾にしていたゴブリンを、残り2体に向けてブン投げた。と同時に2体に向けて走り出す。
2匹が仲間の体を慌てて避けると、再び構えようとするころにはもう俺がもう懐に飛び込んでいた。
ゴブリン2匹との距離は大凡10メートルほどあったのだが、これを1秒掛かっていない。中々の速度だ。
2連続のナイフの突きで、あっさりと2匹は首から血を吹き出し倒れる。これで7リットルくらいだな。
煙はどんどんと広がって行き、オレを飲み込む所まで来ていた。オレは新たに血の球を操作する。
煙幕から出た瞬間の不意打ちを嫌ってか、あれからゴブリンの飛び出しがない。好都合だ。
(7つの血の球になり、濃硫酸に別液体変化。煙の中で、ランダムに動かす。地面に当てずに、球と球がぶつからないように)
血の球が煙の中に入ると、ある一定の位置で、血の球が規則性なく動きまわり始めた。イメージとしては、箱の中で暴れまわるスーパーボールのような軌道だ。
煙の中では、ゴブリンたちの悲鳴とも怒号ともとれる叫び声が聞こえる。たまらず煙の外に出てくるゴブリンがたまに居たが、そいつらはオレが刺殺した。同時に血を吸い上げ、新たな球を煙の中に放り込む。
時たま剣戟の音が聞こえてくるが、味方同士で戦っているみたいだ。敵が見えず混乱しているな。
もうそろそろ獣たちが集まってくるころだな。分かりやすいように目印をつけようか。
「ガァァァァァアアアアア!」
オレは『咆哮』の実地練習として、また狼や熊に場所を伝えるために叫ぶ。
後は、巻き込まれないために再び茂みに隠れた。遠くの方で「ワオォオーン」と狼の遠吠えが聞こえた。これは『来る』な。
数分後、煙が晴れてくると同時、血の球も解除する。辺り一面に広がるゴブリンの死体は、体の一部を溶かされて絶命しているか、仲間の槍を受けて串刺しになっている。見た限り、残っているゴブリンは20匹ほど。その中でも怪我をしているゴブリンもいるから、実質10匹くらいか?
数を減らしすぎたかもしれない。漁夫の利を狙いたいから、狼にあっさり負けてくれると困るのだが。
が、その考えは杞憂に終わった。狼だけではなく、熊も同時に現れたためだ。
どうやら、狼の群れと熊はすでに一戦繰り広げた後のようだ。そのせいでこの場に来るのが遅れたのだろうか?
熊は結構な重傷で1匹のみ、それを少しずつ狼が追い詰めていった結果がこの場所だったのかもしれない。結果として、ゴブリンと狼と熊の3つどもえは、全員が怪我を抱えて戦う事になりそうだ。
ゴブリンたちを見てみると、狼と熊に対して憎悪の視線を向けている。どうやら、この事態を引き起こした原因と思っているらしい。狼や熊がケムリダケ使えるとは思えないんだが、想像通りというか何と言うか、結構ゴブリンは馬鹿みたいだな。
「…ウー、ギャリウギャ、ギャウ!」
と思ったが、一匹だけ周囲に目を配り、ゴブリンに号令をかけているゴブリンがいた。どうやらあいつがゴブリンたちのリーダーのようだ。遠かった時には分からなかったが、あいつ一人だけ革鎧を着ている。
○一一一一一一一一一一一一○
l名前:ゴブリンエリート・リーダー(ザラ・ゾゾン)
l種族(状態):亜人族<ゴブリン種>(隷属<魔族>、全身裂傷<小>)
lLV:14(153/11000)
lHP:54/61
lMP:16/25
l攻撃力:45
l守備力:36
l行動力:69
l幸運 :21
l
lスキル
l-短剣術(2/5LV)
l-土魔法(2/5LV)
l-激励(1/5LV)
l-統率(2/5LV)
l
l称号
l-愚将
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なるほどね。高レベルだけにそれなりのステータスだ。称号に『愚将』ってあるから、多分何かやらかしているんだろうけど。
とはいえ多少は頭が回るようで、先ほどの煙幕の犯人は別にいると考えて視線を巡らしているのだろうが、部下はもう狼や熊に視線が釘付けだ。オレを探そうにも、狼や熊がそうさせてくれないだろう。狼の一部は『擬態』をやめて、ゴブリンを牽制するかのように睨み、今にでも飛び出しそうだ。
「ギャ、ギャガギャア!」
ゴブリンリーダーが、来た道を指し示すように指を向け、指示を飛ばす。恐らく撤退しようとしているのだろう。だが、部下のゴブリンは一匹も動こうとしない。称号『愚将』は伊達じゃないな。指示自体は間違っていないし、『統率』も持っているはずなのに誰も言うことを聞かない、と言うのが悲しいところだが。
それから、にらみ合いが十数秒続く。初めに動いたのは、最も傷が深そうな熊であった。ずっと狼に追いかけられていたのが、今のにらみ合いで少し体力を戻したのかもしれない。相変わらず、この森の獣は喧嘩っ早いな。
オレはこっそりと『液体操作』を発動。死んだゴブリンたちの血を、体内に入れた状態のまま操作を維持する。さて、何処が勝ち残るか見学させてもらうかな。




