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10a.(森の歴史)駆鬼の行く末

本日2話目です。


『魔族』に率いられたソニック・オーガ達は、魔界の遥か東側を元々拠点としていた少数種族である。

険しい山々を拠点としていた彼らは、その爪と素早さからその地域一帯では天敵がほぼ居なかった。

大きく数を増やさなかったのは、その厳しい環境より食糧の確保が難しかったためだ。だからこそ、大型の魔獣なども存在しなかった。

そこに目を付けた『魔族』であった。開戦の為の兵を欲していた彼らは、絶対数の少なかったソニック・オーガを無理やり使役しても、同一種族から報復行動は起こりえないと一部の『魔族』は考えた。族全体の数が多い場合、一部だけを参戦させ全滅させれば、横の繋がりが強いオーガの一族は必ず『魔族』を報復の対象とするだろう。

そのため、ソニック・オーガ達は、ファガス大森林を侵攻する予定であった『魔族』たちにより、人間との戦争のために都合のいい尖兵として半ば無理やり連れてこられたのである。

男も、女も、子供も、老いた者も、すべてのソニック・オーガが強制的に参戦させられていた。

それがおよそ一年前。森の侵略を始めてからは連戦連勝を重ねていたが、人間たちの抵抗が激しさを増し、碌に拠点も与えて貰え無かったソニック・オーガは、森に棲む原生動物たちの狩りの標的になることも度々あった。

そのためソニック・オーガの数は、森に初めて来た当時と比べ5分の1ほどに減少してしまっていた。残っているソニック・オーガは老いて者や女ばかりで、戦闘に参加できる若生は、殆どが戦場で散っていった。

だが『魔族』には、『魔物使い』のスキルを持つものがいるため、反乱を起こすこともできない。そもそも、ソニック・オーガの大多数は、そこまで思い至ることさえが難しかった。

そういった『考えること』の出来る賢き者たちは、全て『魔族』に殺されたためだ。残ったのは、『魔族』にとって扇動しやすい直情的なソニック・オーガ達だけが残った。

それも全て人間たちの行為ということにして、怒りの矛先を人間にのみ向けるように『魔族』の誘導も行われた。

開戦から一年、ソニック・オーガたちは、滅びの道を歩み続けていた。






そして、ソニック・オーガは今日、新しい任務を『魔物使い』から通達された。人間たちが『ドラム村』と呼ぶ人里の襲撃である。

さらに、村襲撃に参加させられたのは、全て女であった。女たちが、連日の戦闘で疲れた果てていた戦士たちの休息を『魔物使い』に願い出た所、それならば女のみで事に当たられたし、とあまりにも無情な答えを返されたためだ。

女たちは決断した。自分たちも戦闘に参加することを。

戦士たちの制止も聞かず、女たちは村へと向かった。それを面白がった『魔物使い』は、戦士たちに助けに行くことを禁じた。

ただ、『村を襲え』としか伝えられていないソニック・オーガたちは、作戦も何もなく村の入口へと突進し、村の守備隊と真正面からぶつかった。振るいなれていない爪を必死に使い、守備隊と激しい戦いを繰り広げる。戦闘開始から約1時間。ソニック・オーガ達は、もともと戦闘に適した種族の為か、人数が上回っていたからか、襲撃時の半数までに数を減らしてはいたが村の人間の全滅に成功する。

男も、女も、子供も、老いた者も、その村に居た人間全てが息絶えていた。戦闘が終わり、生き残ったソニック・オーガ達は、村の入口に再び集まる。ここで一斉に咆哮を上げることが、『魔物使い』に伝える、戦闘終了の合図だからだ。





咆哮から少し時間がたち、『魔物使い』が現れた。豪奢な服に身を包み、大獅子に乗る『魔物使い』は

村の状態に満足したのか、機嫌よくこういった。


「良くやってくれた。女の身でありながら、その勇気ある戦いに多大なる称賛を贈ろう。……そして最後に、残った戦士達が、元気よく働けるように…ああ、ほんとに申し訳ない。ここで死んでくれたまえ」


『魔物使い』が芝居がかったしぐさで腕を振ると、ソニック・オーガのいた道の両脇から,頭を2つもつ巨犬が2匹、オルトロスが森の中から踊り出てくる。

「ああ、悲しいなぁ」と、『魔物使い』が腕を振るうと、それに合わせるようにオルトロスがソニック・オーガに襲い掛かった。人間たちと慣れない戦いで満身創痍のソニック・オーガは、その2匹に全く対抗できずに引き裂かれ、食いちぎられていく。数分もかからず全てのソニック・オーガは物言わぬ躯となった。


「アッハハハ!有難う、ソニック・オーガよ!私は君たちを忘れないよ。でも、次生まれてくるときはせめてオルトロスぐらいの魔物に生まれておいで。そしたらもっと大事に使ってあげるよ。きっとね」


オルトロスと大獅子が、ソニック・オーガの躯を貪るように食べるのを、『魔物使い』は愛おしそうに、眺めていた。


ここでソニック・オーガを殺さなかったら。

あるソニック・オーガから、余りにも異常な生まれ方をした転生者の情報を聞いていれば。

もしかしたら、『魔物使い』の運命も変わっていたかもしれない。


だが、その情報を持つ腹を剣で刺されたソニック・オーガは、肉片となり巨獣たちの胃袋に収められて行く。やがて『魔物使い』達がどこかに去ると、そこに残っているのは血で赤く染められた土道だけだった。





『女神のメモ帳』より

ソニック・オーガが『魔族』に尖兵として連れて来られた数は318体。

これは、当時に存在したソニック・オーガの総数である。

度重なる戦いにより、1年後に63体にまで減少。『ドラム村』襲撃に参加した数は43体。村の守備隊の迎撃により半数以上が死亡。

どうにか生存出来た者も、『魔族』が残りのソニック・オーガを焚き付けるのに利用され全て殺された。

残りのソニック・オーガ20体は『カーネルの町』を襲撃するが、転生者トモヤが参戦した町門の戦いで全て死亡が確認された。

この戦いを最後に、ソニック・オーガは絶滅種となった。

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