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47.思いがけない効用

大きくなった精霊に近づいていった。

驚いた。

たまげるとはこのことだ。

この世界に来て、不思議はたくさんあったけど、なんか今回は、びっくり箱の蓋を知らずに開けて、驚かされたという感じだ。

「え~と、精霊様?」

「はい、お母さん」

何?どうして、お母さん?わからない。

わからないときは素直に、聞くしかない。

「お母さんって、私のことかな?どうして?」

途端に、悲しそうな顔をされた。

「駄目なのですか?」

何か、まずい感じがしてきた。小さい子を泣かしてしまうような予感がする。

「いえ。そういうわけではなく」

何がそういうわけか、わからないまま適当に、言葉を濁す。曖昧な日本人だった。

言葉を、つなぐ。

「えっと、お母さんって、呼びたいのかな?」

「みんな呼んでる」

「みんなって・・・・」

どこかで、よく聞く答えだ。おまえは、子供か!!

そのみんなの氏名をあげてみろと言いたい。・・・・大人だから、スルーしてやるがな。


それに、なんだか、いじらしいような可愛さだし。




このとき、氏名をあげさせれば、自分の状況がもっと早くわかったと、後になって後悔した可奈であった。

・・・・後悔。読んで字の如し、後から悔やむから後悔なんだね。


ザ美人といった風な精霊を前に、少しおかしくなっていたのかもしれない。自分より背も高く、年齢不詳の精霊に、お母さんと呼ばれて、違和感ありまくりだった。泣きそうな顔で、可奈の了承を待っている様子を見て、断れる人間がいたら、それは鬼だと、自分の流された理由をつけて、にっこり笑った。

「そうか、それじゃあ、仕方がないね」

何が仕方がないのか、ホントわからない。

「いいの」

すごくうれしそうな精霊の顔を見れば、まあ、いいかと思う。

「え~精霊様、お母さんの子になるの?」

後ろから、驚いたようなベルの声がする。

振り向くと、精霊が、可奈のことをお母さんと呼ぶことには、抵抗はなく、ただ純粋に驚いているような様子だった。

「嫌?」

可奈が尋ねると、案の定そうではなかったらしい。

「ううん、おかあさんは、おかあさんだからいいけど・・・精霊様のおかあさんにもなるの?」

ベルが、何か口ごもりながら言う。

と、また、後ろから、精霊が口を出す。

「お母さんの一番は、ベルだよ?」

振り返ると、テーブルの上に腰掛けたまま、しょんぼりとしながら言う。


それは、卑怯だろ。


再び、ベルに向き直り、言葉を紡ぐ。

「そうだね、精れ「炎禾」・・・炎禾の言うとおりだよ。ベルが一番だよ。でも、炎禾も大事にしたいと思うんだけど、いいかな」

話の途中で、精霊が、自分の名前を主張する。

なんか微妙で複雑な感情が、ベルや精霊改め炎禾にあるのがわかるのだが、読みきれない。


いちいち気にするのが面倒臭くなったからでは、決してない。

何とかこの場を納めてしまおうと、ベルの表情を見ながら、強引に話を進める。

「精霊様は、炎禾って名前だよ。家の住人だったけど、正式に身内になったんだと思ってほしいんだよ」

ベルが、うつむいてしばらく考えている。なにやら、納得できたのか、顔を上げ可奈を見る。

「うんっ。家族が増えるんだね」

うまいっ!!そうだよっ!それだよ!便乗させてもらうよっ!

「そうだよっ家族だよ!!炎禾もおいで」

テーブルから、優雅に降り、可奈たちのところへ来る。

「炎禾、今日から家族だね」

もう勢いに乗るしかない。炎禾とベルを一緒に抱きしめるように腕に囲う。ベルの顔を見ると迷いなくうれしそうだ。炎禾を見ると・・・・



・・・すごく、うれしそうだ。


なんか、よくわからないが、難しく考えることはなかったかもしれない。とりあえず、どうにかなった。後のことは、ゆっくり考えよう。

背中に、張りつき、コケコケ言ってるイエローとブラックのこともあるし・・・




・・・・・・とこうして、すべての考えることを放棄していく可奈であった。



ちなみに、その日から、我が家の総合能力値は格段に上昇した。まず、直近では、マップの書き込みである。

車に乗り込み、出発するときベルが、声を上げた。

「おかあさんっナビが、すごいことになっているっ」

どきっとした。マッピング機能が消えたのか?

今、ナビが壊れると、帰れない。帰る自信がまったくない。家から少なくとも1,500km以上は離れている。家から東に向かって走ってきているので、西に向かって走ればいいかというとそうではない。わずかに曲がって来ているのだ。真っ直ぐにしに向かっても家にたどり着ける可能性は、限りなく低い。


まじ、やばい。


実は可奈、リズム感もないが方向感覚もない。大型ショッピングセンターで、大人になっても迷子になる。


1人焦って、ベルの手元を覗く。


ちゃんとマッピングはしてあるようだ。

「どこかへんなの?」

「おかあさん、ちゃんと見て」

ベルが、自分の驚きを一緒に驚いていないのを不満そうに、頬を膨らませて言う。


ちょ~可愛いんですけど。

心が和む。

ベルのこういうところが、可奈の助けになる。焦ってパニックを起こしかねない可奈を冷静に戻す。

ベルに、言われてもう一度ナビを見る。どこも変じゃない。画面を動かす。ちゃんとマッピングしてある。



・・・・



行ってない先まで、マッピングしてあるっ!!!!

どういうことっ!!!


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