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4.思い切って冒険してみる

それから可奈は頑張った。


精神統一?をインターネットから調べて、にわか修行を始めた。

砂漠の夜明けの時間、荘厳な景色の中で、雰囲気だけ満載で。


2,3日おきに。


ラジオ体操の後に、太極拳のDVDを見ながら真似して。

さらに、座禅をくみながら、丹田?というところに、何かを溜めるよう意識して?



ぜんぜん、わからない。




さぁ、気を取り直して、砂漠を冒険しよう。





おじいちゃんの乗っていた自家用車を出して砂漠を走ってみた。さすが4輪駆動がんがん行ける。砂にはまって、動けなくなるかと思ったが、意外に、走れるところとそうでないところの区別がついた。さらに、驚いたことに、ナビが使えた。

いや、正確にいうと、ナビがマップ機能に変換した。どうやら、可奈が見えたところに限りマッピングしていく機能のようだ。出かける前は、迷子になったらそれっきりと、慎重に方位磁石や双眼鏡を用意していたのだが、車のエンジンをつけたとたん、ナビが、

「現在、マップが入っておりません。作成いたしますか。」

と突然話し?始めた。画面では「YES」と「NO」の文字が出た。迷わず「YES」に触れた。

画面は、家の敷地の形が作図されていた。とりあえず、そのまま、敷地を出て砂漠の中を門から真っ直ぐ走ってみた。それが、道になった。


僕の前に道はない。僕の後ろに道はできる。・・・


家が見えるぎりぎりまで、車を走らせ、ナビを確認してみる。ちゃんとマッピングしている。これで、どこまで行っても帰ってこられる。そのまま、車を走らせてみる。2時間ほど車で走ったが、何も変わらない風景だ。車を降りて、手足を伸ばすが、一面見わたす限り砂漠だ。


熱い。


熱い空気で、息がしづらい。車の中に戻り、エアコンを最大にする。なんの変哲もない砂漠を見ながらお弁当を食べる。その日は、そのまま、ナビを頼りに家に戻った。


畑や田んぼや修行?と砂漠の探索に日々を過ごして半年が過ぎた。家の周囲200km前後、何も無いことだけはわかった。

可奈の魔法能力は、火をつけて、水を出すことができるようにはなった。

物も、思い通りではなくても、多少のものは、動かせるようにはなった。


無くても困らない能力だが。


砂漠に出かけるときに、刺身包丁を持っていくようになったのも、変化の一つである。何があったわけではないが、用心に越したことはないと、持っていくようにした。


本当に、何もないが。


事象的にも。存在的にも。

自分宅の周囲の気候は梅雨の時期に突入していた。田んぼも順調に青々と稲が茂って、門の傍のアジサイが色鮮やかに咲いている。

今日は、門から真っ直ぐに、もう少し足を伸ばして、キャンプを張ろうと考える。鶏たちは、ずいぶん賢くなって、可奈の言うことが、理解できているようにみえた。出かけることと、家の敷地から絶対出ないようにすること、餌はえさ箱に入れるが、4日分だということを、ハクに告げる。首をかしげて聴いていたが、返事は、コケッーである。


OKとみた。


子どもの頃、おじいちゃんが家の庭でキャンプするために買ってくれたキャンプ用品の出番である。テントや寝袋、コンロやライト、食料など一式をおじいちゃんの車に積み込んで出発である。


軽快に進む。


前に来たことのあるあたりで一休みし、さらに進む。

蜃気楼も砂漠って、凄くない?

でも、一人で見る蜃気楼って、なんか怖いって知ってるかい。

私は今日知った。

日が暮れる前にとキャンプの支度をし、食事を作る。

家で練習はしたが、なかなかうまくできた。自画自賛である。

食事の後を片づけ、寝る支度をする。外はまだ、明るいが、そろそろ7時を回る。夏なのか?

10時を回る。

まだ明るい。サマータイム?

夜中の12時を回る。

まだまだ、日が沈みそうにない。

そうだよね。夕飯食べたとき、まだ、太陽南中でも、なかったもんね。

寝よう。


次の朝の6時ごろ日が沈み始めた。

うすうす、感じていたことが、これではっきりした。1日24時間ではなくて、おそらく48時間だったんだ。この世界。

今まで、気づかない方がどうかしていたんだよ自分。1日24時間は、家の敷地内だけだよ。

敷地内での地球時間適用は、不思議枠だよ。

敷地から砂漠を見ているとき暗くなったり、明るくなったりするのを見てたじゃないか。




冷え込んできたので、テントに入り、暖を取りながら朝食を食べる。この世界的には、夕食にあたるのだろうが。


砂漠の夜は静かだった。


怖いわぁー!!!


思いっきり叫んでも、静かのまま。こういうときのためにと、CDプレーヤーをセットする。ウォーク○ンじゃあ寂しさが募りすぎるよ。まったく。大音量ではなくても、音は砂漠に響いていく。

音が、夜の星空に吸い込まれるようだ。

この星、ホントに砂漠だけじゃないだろうね?と不安になる。

星の王子様のように、バラが唯一の友達ってことにならないでしょうねと、心配になり始めたが、その怖い考えを振り切って、自分的には朝食を終え、車に乗り込む。

昼食後、あと100km走ったら戻ろうと決め、走りはじめた。

30分後、月明かりの中、遠く黄色い砂漠の砂の上に何か物体が蹲っているのが見えた。錯覚かと目を凝らしてみるも、何かがある。そちらに進路を変え、砂にタイヤがとられなさそうな所を選んで近くまで寄ってみると、ヘッドライトに照らされて、浮かび上がるぼろ屑の塊みたいなものがあった。植物の腐った固まり?動物の死骸?はやる胸の鼓動を抑えながら近寄る。


ぼろだけど、布だ。


なんか、涙が出そうだ。

人がいるんだ。

この異世界にも、人が生活を営んでいるんだ。


さらに近寄って、よく見てみる。結構な量のぼろきれだ。なぜこんなところに、と思いながら、人の痕跡があるかと、周りを見てみる。合いも変わらず、何も無い砂漠だ。

汚らしかったが、砂漠で意外に乾いていて触れそうだったので触ってみる。


ぎゃぁーーー。


声にならない悲鳴を上げて、飛びのいた。砂に足をとられ、後ろにひっくり返る。

間違いなく、布の中に生き物の感触がした。

ひーー触っちゃたよ~~~~


死体か?死体か?

どうするか、じっと見ていると、少し動いた。

えっ!生きてるの?

近くまで寄ってよく見ると人のようだった。砂に埋もれた部分を払いのけ、うつ伏せになっていると思われるぼれ切れの固まりをひっ繰り返す。

魔法で。

触れないよ。怖いよ。気持ち悪いよ。

簡単にひっくり返せた。

子どもだ。

薄汚れた手足で被り物をしていた頭からはみ出ている頭髪は汚れで張り付いて、ぼろきれと変わらない。

「い、いきてるぅ?」

声をかけるも、まったく変化なし。心臓のばくばくがおさまってきた。


「そりゃそうだよ。えっと、・・・はっ!!!死に掛けてる!!!」

急いで駆け寄り、子どもの胸に手を当てる。

・・・わからない。

息、息してる?口元に手をかざすが。

・・・わからない。

自分の手が震えていて、感覚が無い。

両手を打ち合わせて、手の感触を取り戻そうとするが、わからない。

「さっき、動いたよね。生きているって事だよね。」

子どもを抱き上げ、車に乗せる。

身体も小さいが、それ以上に見た目より体重が軽いことが、衝撃だった。不安が募る。

エンジンをつけ、エアコンをきかせる。自分が飲んでいたペットボトルから水を少し布に浸して子どもの乾いた顔を拭く。

「ねぇっ目を覚まして。起きて。水を飲んで。」

子どもの肩に手を掛け、大きい声で何度も耳元で声をかける。うっすらと子どもの目が開いた。どこを見ているとも覚束ない。

「水、水を飲んで。」

言いながら、水を湿らせたタオルを口元に持っていく。口が少し開いて唇についた水を舌が舐め取る。今度は、スポーツドリンクのペットボトルを口元に持っていって、少しだけ流し込む。目がさらに開いて、手でボトルをつかもうと動く。力が無いためただ身じろぐだけであるが。

「少しずつ。少しずつ。」

言っていることがわかったのか、口に入れられる水を飲み込んでいく。時間をかけて、飲みかけのボトルの4分の1ほど飲んだあと、再び目を閉じてしまう。身体が熱いので、ヒエピタをおでこや首のまわり、服を掻き分け、破いて、わきの下に貼る。

このまま、家に戻ろう。

座席を倒して寝かせた子どもにシートベルトをさせ、猛スピードで、家に向かう。


途中休憩も入れず、ぶっ通しで車を走らせ、夜の7時頃家に着く。庭に車を止めるとそのまま子どもを抱え家に入る。


臭い。


リビングダイニングの続きの畳の部屋にマットレスを敷き、その上に災害用シーツを敷き、そこへ寝かせる。

上から電気毛布をかける。

あまりにも子どもの身体が痩せてて、重い蒲団などかけられない。

折れてしまいそうだ。

顔を温かいタオルで、拭き、熱を冷ますためヒエピタを改めて貼り水枕をする。目を覚ましたら、水分を取らせようと、枕元にスポーツドリンクの入った吸飲みを用意しておく。

鶏の世話をし、夜通し、子どもの様子をみる。ときどき目が覚めるので、水分を取らせる。

桃の缶詰や栄養剤があったので、スムージーにして飲ませる。喉に詰まらせるかと心配したが、何とか飲み込んだ。その間に、衣服をなんとか剥ぎ取り、身体をお湯で少し拭き、自分のパジャマを着せた。

次の日も似たような感じで、目が離せなかったが、お昼頃に意識がはっきりしだしたようだったので、おかゆを食べさせると、そのまま、寝入ってしまった。

今までの眠り方と違うようなので少し安心しながら、キャンプの後片付けや家の仕事をしつつ、子どもの様子をときどき伺う。


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