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38.雪だるま

日中、天気もよく、雪が次第に解けていった。

家の仕事を終わらせ、再び、ベルたちと遊びに興じた。溶けてしまう前にと、雪だるまを作ることにした。

最初は、ころころと転がし、だんだん大きくなる雪玉に、悲鳴を上げている。大きくなり、転がすのも容易でなくなると、可奈の出番である。可奈も、少しずつではあるが、魔法の腕が、上がっているのである。ほとんど、出番はないが。

できた玉を浮かし、中庭に運ぶ。昔から、表の庭よりも、多少気温が低く一日中気温が上がらない。

めったに雪が降らない、雪だるま。

できるだけ保存しておきたいのは、誰でもそうだろう。可奈も、幼い頃より祖父が、雪だるまを設置してくれる定位置だ。

頭になる部分も、作り、枯れ枝や人参、炭を使って顔や手を作って出来上がりだ。

ベルが大喜びなのはわかるが、どういうわけか、ハクたちも大興奮だ。


なぜ?・・・解せん。


雪兎も大好評を博した。ベルが作った雪兎の一羽は、冷蔵庫に鎮座することになった。意外なことに、ハクたちも、脚を器用に動かして、何やら作り出したのには、驚いた。我が家の中庭は、例年にない雪像たちで、大賑わいだ。

山や畑で、未踏のところの綺麗な雪で作られた雪像を、運ぶのは・・・・可奈である。もの運びの魔法を使って。

案の定、夕方になると、庭の雪は、ほとんど消えてなくなった。家の軒の下や影になったところに残っているだけである。幸い、いつものように、中庭の雪は残っていたため雪像は真っ白いまま残っていた。

そうだ、今日は、中庭を見ながら、夕飯にしよう。たまには、熱燗でいっぱいしながらというのもありだろう。その分、ベルたちには、御馳走を作ってやろう。

リクエストを聞くと、から揚げを希望してきた。ベルが普通の食事を食べられるようになって、すぐのときに作って、お気に入りなのは知っていたが、ハクたちに、ベルや家の警護をしてもらうようになってから、なんとなく・・・というか、絶対作れなくなったメニューだ。

どうしたものかと、鶏たちを見ると、イエローから、何?から揚げ?それ、おいしいの?

的ないけいけ目線が返ってきた。

「から揚げって、鶏の料理なんだけど、あんたたち食べられるの?」

「「「「「コケッ」」」」」

全員揃って肯定だ。

「なぜ?」

ベルが、不思議そうに聞いてきた。可奈がわざわざ、鶏料理だと確認をしたのが不思議だったみたいだ。

なぜって・・・だって、鶏料理だよ。共食いみたいで、いやじゃないかと思うだろう、普通。

その不思議そうな純真な目のほうが、アメージングなんですけど。ベリカワなんですけど。

いやいや、そういえば、こいつら卵焼きや伊達巻なんかの卵料理食べてたわ。あれ、イエローなんかは、レトルトの鶏飯もベルにもらって、食べていたわ。


関係ないのかな。


・・・・もう、普通の鶏からかけ離れた存在みたいだし。


その日は、から揚げやフライドポテト、ソーセージなどのジャンクフードっぽいものをメインに酒のつまみのようなものが夕飯になった。その中で、精霊様にもモツ煮込みは好評であったといっておこう。昼間、雪遊びをしたせいか、お腹も空いたのだろう。いずれにしても、質より量だった。

賑やかな、夕飯だった。

昼間の疲れが出たのだろう、鶏たちもブラックを初めに順番に丸くなっていった。精霊様は、早々に、暖かい炬燵が恋しいのか、戻ろうとしていたので、レッドに運んでもらった。ベルもその頃になると、舟をこぎ始めたので、なんとか歯を磨かせ、ベッドに連れて行った。イエローを、ゆすり起こして、ベルのそばについていさせた。ベルが完全に寝たことを確かめて、イエローにくれぐれも、ちゃんと見ているようにいいつけ、夕飯の片付けをひとりした。

考えてみれば、最近1人で、片付けをすることはなくなっていた。いつもそばに、ベルがいて手伝ってくれていた。傍らに隙間風が入るようなもの寂しさを感じながらの後片付けだ。


こんな夜は、それもいいか。


独りで雪見酒である。


窓を開けると、ひんやりした夜の空気が入ってきた。傍らに、眠っていると思っていたハクが静かに寄り添ってきていた。そっと、背中をなでる。暖かなぬくもりが手に伝わってきた。ハクも蹲り、穏やかに目を閉じている。




いい一日だったね。


次の日、ベルは、朝一番に中庭に走った。雪だるまは、まだ健在だった。朝から、ニコニコ元気で結構である。


・・・ちなみに、自慢ではないが、冷やす魔法も習得できている可奈であった。


今日は、昨日と同じに快晴である。冬といってもポカポカ陽気っていう感じだ。明日まで、もたないだろうな。たぶん。



でも、あと2,3日は、もってもいいんじゃないかな。


雪だるま。一時間おきぐらいに、魔法をかければ、いいだろうか。



「ベル、今日は、何かするつもりがある?」

「ううん、別にないけど」

「じゃあ、ピアノの練習をしようか?」

「えっ。ピアノ、いいの?」

後で聞いたのだが、中庭に面した大接間のピアノの鍵盤を密かに、叩いていたらしかった。めったに入らない仰々しい部屋に置いてある黒く光っているピアノは、ベルが触ってはいけない憧れというには、大げさだろうが、そういうものに感じていたらしい。テレビのドラマで、奏者が弾いている姿を見てかっこいいと思い、自分も弾いてみたかったらしい。


らしい、らしいである。


・・ちょっとショック。



まあ、子どものすべてを知っている親などいないのだよ。・・・ということにしておこう。


さてピアノの練習だが、実は、前から、このときのために、BSを探して初心者向けピアノ教室を録画しておいたのだ。手の置き方や運びをまず手本を見せる。録画のとおりに。


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