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36.雪降って、地固まる。雪でも?

畳の部屋のほうで、ばたばたしていると思ったら、ハクたちが、蒲団を敷いてくれていた。本当に使えるやつらだ。眠ってしまったベルを運び、炬燵の中の精霊を確認した後、今日やろうと決めていたことを、急いで片付けた。外に出たついでにと、東のほうを見てみると、ドラゴンが蹲っているのが見えた。

あそこに、居座るつもりじゃないだろうな。

我が家の敷地を第1区とすると、周りに出来た草っ原や藪を第2区になるが、その第2区ぎりぎりにいる。第2区は、これから夏に向けて広がっていくと思うから、少しは離れることを期待をもてると思うが、結構距離があるというのにでかい。でかいが、ドラゴンの力でも、バリアは、おそらく大丈夫だろう。そうでなければ、ハクたちが、あんなにリラックスしていないと思う。

そのまま、東の淵から裏山の北に向かってぐるりと廻る。

東北のところにできた沼のような水溜りが、成長していた。ここは、水があるせいか、緑化が進んでいる。他のところの倍ぐらいの幅が砂漠に侵食している。沼は、見えるところで、広さは、中学校のプールぐらいじゃないだろうか。周りは、草木が生い茂って縁が見えない。危ないからベルに絶対近づくなって、再度言っておかなければ。

水は案外透明で、中の水草が見える。浅く見えるが、結構な深さがある。魚の影が見える。

あれ?水溜りじゃなくて、排水路がある。まあ、山から川が流れ出ているのだ。大量の水だ。溜池ではなく、川ができてもおかしくはない。川に沿って、砂漠の中に草木が生えるのかな。草木が生えるとすると、どこまで、バリアが、存在するのか、要検討だな。


家に戻るとベルを見ていてくれたハクが、縁側に陣取っていた。ベルが起きたのかと家に入ると、ベルが起きてテレビを見ていた。

「ベル、ただいま」

「おかえりなさい」

テレビを消して、可奈のほうに来る。少し気まずそうに可奈を見つめている姿が、かわいらしい。

「テレビ見ていていいよ」

「ううん。いい」

手を洗いに洗面所へ行くのにもついてくる。手を洗っていると、後ろから抱き着いてくる。ほんと、超かわいい。

手を洗い終わった後、そのままベルを抱き上げ、リビングに戻る。蒲団を片付けながらベルと夕飯の相談をする。


今夜は、久しぶりに、ハンバーグだ。


・・・・・・精霊様の分も作るの?


夕方から、一段と冷え込みがきつくなってきた。空を見上げると、重苦しい曇天が広がっている。天気予報では、雪が降るようなことを言っていたが、可奈の住む地域は、めったに雪は、つもらない。それでも、1月の半ばから2月にかけて、年に1,2回、20cmほど積もる。ここに来てからも、それは変わらない。すでに、何回か雪は降っているが、今年は、まだ、一度も積もるところまでは、いっていない。日本にいたときは、わずかに雪が積もっただけで、家から出ることに支障をきたしていたのだが、ここでは、関係ない。


だって、家の外は、砂漠だから。


という軽口は、さておき、積もるといい。雨に驚いていたベルが、11月の中ごろ、初霜が降りて、霜にも大概不思議そうに可奈に聞いてきていた。地面から生える小さい氷の柱。暮れには、畑で、ざくざくと霜を踏んで大はしゃぎだった。でも、今年は例年より雪が降るのが遅く、1月になって、雪が降ったときは、鶏たちを巻き込んでの大興奮だった。テレビや本で、雪の存在は知っていたのだが、本当に、雪というものが、降ってくるとは、信じられなかったらしい。なぜか、混乱してサンタクロースが来ると、口走っていたのはかわいかった。クリスマスのときは、何をやっているのか、わからなくて単なる行事だと思っていたらしい。マフラーのプレゼントも、可奈が作ってくれたと思ったのだと言う。実際、可奈がベルの寝た後、隠れて作ったのだが。言わぬが花である。

「ベルがいい子だから、プレゼントもらえたんだよ」

というと、うれしそうに、はにかんでいたのが、とんでもなくかわいかった。

降った雪を手のひらに一生懸命受けようと、外を駆け回っていた。3度ほど雪がちらついたが、その度に、外を駆け回る姿が愛らしい。積もれば、雪遊びができる。

大人になってからは、単なる天気のひとつであったどころか、交通の邪魔になるものでしかなかったが、ベルと見る雪は心躍る。


・・・・・積もればいいな。



・・・・・・・・・・・・・車の運転ないし。



夕飯には、精霊様の分もお作りした。その後、また、炬燵にもぐりこみそうになったので、畳の部屋に、祖父が自分の部屋で使っていた小さ目の炬燵を出して、そこに居住してもらうことにした。決して邪魔だというわけではない。炬燵の近くに、私たちが見る大型テレビもあるのだ。炬燵で見なければならない。知らずに足で蹴ってしまうかもしれない。というか、恐れ多くて、足を炬燵に突っ込めない。お互いにとって、ウィンウィンの関係と言うものだ。穏便にことは、解決した。精霊様動き鈍いし、移動は全部、可奈がした。

丁重に。

今のところ、少し動く人形程度の感じだ。多少、可奈の思い込みかもしれないが、神々しさが、あるような、ないような感じもする。

昼間より体の動きがスムーズになったように感じるのも憑き物という違和感を緩和しているのだろう。間接の動きが滑らかだ。体も一回り大きくなったみたいだ。


成長?成長なのか?

・・・・どこまで、大きくなるのだろう。今ぐらいの大きさでいいのだが。


炬燵が大好きらしい。一晩中炬燵つけっぱなしか?火事にならないかな?大丈夫かな?


下にホットカーペットも敷いた。たいそうご満足だ。


ベルも、一騒ぎして、気が済んだのか、可奈が、精霊様に手を掛けても、ニコニコしながら一緒に世話をする。


精霊様に、ホットカーペットの説明をしているときは、思わず抱きしめてしまうかと思ったかわいさだ。説明もさることながら、説明の仕方が超かわいい。可奈をどうしようというのだ。ホットカーペットの説明の仕方で、こんなにかわいいのは、うちの子ぐらいだと思う。世のおとうさんが、娘を嫁に出せない気持ちがわかってしまった可奈であった。



次の朝、晩から降っていた雪が、積もった。


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