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27.社作り

さて、とりあえず懸案のケーキは作ることができた。手作り感満載だが。

これから、何度が作れば、ベルの誕生日までに、お店のケーキとまではいかなくても、それなりのケーキができるようになるだろう。




なると信じたい。




ケーキのことは、いいにしよう。それより、精霊の社だ。

どうやって作ろうか。材料は、どうしよう。



かまどの燃し木にするために、切って来た木を揃えればいいかな。

おじいちゃんが使っていたチェンソー使えるかな。

土台は石組みにすればいいか。

中の本尊は、ベルに聞きながら粘土で象って、ニスを塗るか。

場所は、家の敷地を出た。草っ原にしよう。南側にしようか。炎の精霊様っていっていたから、そうしたら、門から出て、すぐのあたりがいいかな。

お参りもしやすいし。


よし、そうしよう。



次の日から、社作りが始まった。

納屋に入り、積まれた燃し木を探す。燃し木は、雑木のため、柔らかく折れやすい。大き目なものを取り出す。

「ベル、危ないからどいていて」

チェエンソーにガソリンを入れエンジンをかける。何回かひもを引っ張てなんとかエンジンをかける。


突然の大音で、鶏たちが騒ぎ出す。ベルも驚いたように、寄ってこようとする。

いやいや、ベル寄ってきたら、却って怖いことになるから。

「ベル、大丈夫だから、ハクのところに行っていて」

輪切りになった大き目の木を、裁断するがもろい。これ釘打って大丈夫?

まあ仕方がない、これでなんとかするしかないね。と思っていたら。

「おかあさんっ」

ベルがチェエンソーの音に負けないような大声で呼ぶ。

一旦、スイッチを切る。辺りが途端に静かになる。


あぁうるさかった。


「なに?」

「おかあさん、板ってこれじゃダメなの?」

「えっ、それ、どこにあったの?」

ベルが手に持っている杉かヒノキの40×30cmくらいの板を見る。

「納屋に積んであったよ。」

「コケッ」

「ハクが見つけてくれたの」

「どのくらいあるの?」

「こっち」

納屋の暗がりに入っていく。電気をつける。それほど奥でないところに長い板が積んである。ベルが持っていたのは、その木っ端だ。

あっそうだ。この納屋は半分が、土間になっている。その土の上にねたを置いて、板を敷いてあるのだ。ときどき取り換えるための補充用に、何枚も買いそろえてある板があった。

忘れていた。


それ使えばいいじゃん。


燃し木は、片付けた。チェエンソーも。イエロー残念そうなのはなぜ?ベルもちょっと残念そうだね。

「ベル、この機械に触ったら絶対だめだからね」

「うん」

「イエローもだよ。ハク、気を付けて見ていて。他のみんなも。この機械は、やばいから。歯のところに間違えて触っただけで、指でも羽でも切れちゃうからね。スパッッと」

少し、脅かし気味に言った。それでも心配だ。入れたガソリンをしっかり抜く。


「さて、予定変更。炎の精霊様を粘土で作るの、手伝ってくれる?」

「粘土?」

「粘土って言っても、紙粘土だけどね」


社の予定図を紙に書くのは、ベルが寝てからでもいいか。先に、お祀りする本尊を作ろう。


・・・・紙粘土になるけどね。


作っている最中、可奈が何をしようとしているのか、だいたいわかってきたのだろう。

だんだん形になっていく精霊様を見て、似ている、似ていると、手を叩いて喜んだ。

「かまどの神様のところに入れてくる?」

「いやそうじゃないよ、かまどの神様は日本の神様だからね。ほら、正月の4日の日にご飯を炊いたでしょ。3が日は、休んでもらってって言ったよね。清浄を尊んで不浄を排する神様で、神棚にお札が入っていたでしょ」

「じゃあ、どこに入っていただくの?」

「南の草っ原の砂漠の入り口の敷地内に、小さい『社』を作ってそこに奉ろうと思っているんだけど、おかしいかな?」

少し考えていたようだが、すぐに顔を上げて、聞いてきた。

「小さい『社』って?」

久しぶりにベルの翻訳できない単語が出てきた。ベルの学習能力はすごい。特にアニメからの言葉は半端なく覚える。

そして、この世界の言語と置き換えられるものは、置き換えて可奈に教えてくれる。

最初にここでの言葉を、ベルが忘れないため、基本、この世界の言語で、会話すると決めていたのだが、ベルがもともと知らないか、この世界にないものは、日本語で話すようにしている。

「神様のおうちの小さい版かな。家っていっても、そのままそこに住むんじゃなくて、窓口?みたいなものだと思うんだけど」

「住むんじゃないの?」

「うん、かまどの神様もそうだし、リビングの神様も神棚でしょ。あれくらいの大きさの外に祀られる家って感じかな」

「ふ~ん」

「小さい神殿みたいなものだよ。そんなに豪華に作れないけどね。できるだけがんばるつもりだよ」

「さっきの板を使うの」

「そう、あれで社を作って、土台を石組みにすればいいかな。ベルを助けてくれたって言ってたでしょ。お礼に、月の初めに『祀ろう』か」

「『祀る』?」

「ありがとうございましたってお礼と、これからもよろしくお願いいたしますてことを、心の中で言うんだよ。炎の精霊様だから井桁を組んで火を掲げようか?」

「うんっお礼いうっ。おかあさんと合わせてくれて、ありがとうございましたって言う」

素直で、かわいいな、うちの子。

それにしても、精霊様力がなくなってきたようなことを言っていたようだが、何か供え物をした方がいいのかな。

精霊様って、何食べるの?




しっかしなんで私、精霊様の社なんて作る気になったのかな。

こう日本の神様と比較すると、ちょっと神様とは、違う系っぽいんだけど。ほんとに社作って意味あるのかな?

まあここまで、ベルに期待させてしまっては、やめられない。とりあえず感謝の印は現そう。

「ベル、精霊様って、何食べるの?」

「精霊様っ!!何か食べるの?」

反対に聞かれてしまった。そうだよね。とりあえず供物を捧げればいいか。

精霊様の色付けも終わり、ニスを塗る。窓を全部開けさせてもシンナーの匂いが、充満している。ちょっと申し訳ないけど、車庫に、置いておくことにする。

さすがに、すでに形になっている精霊様を車庫に放置は、罰当たりのような気がして、拝んでおくことにする。新聞紙を敷いて置いてある精霊様の像に前に座り手を合わせ、頭を下げる。

「炎の精霊様、しばらくここで申し訳ありませんがいらっしゃってください」

というと、ベルも同じように、ひざまずいて、手を合わせ、頭を下げた。




一瞬、薄暗い車庫の中が、光がはじけた。


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