24.誕生日って・・・
鬼のお面・・・どこかに、赤鬼と青鬼に話があったかな。納戸か本棚か?
本棚を探してみると・・・あった・・・・
こんな顔でいいのか?
とりあえず、ベルに見せよう。
けっこう驚いている?オーガ?何それ?
「オーガって何?」
「オーガっていう人たちで、人間を憎んでいるんだって」
「人なの?あったことある?」
「ううん。街にはいないって」
「えっと、それは、誰に聞いたのかな」
「ベルがもっと小さい頃、一緒にいてくれたマーヤがお話してくれたの」
乳母みたいな存在か。ベルにも、優しくしてくれたひとがいたのか。
穏やかに過ごせたときがあったのか。
マーヤの話はまた後にして、オーガについて聞いておかなければ。
「人間じゃなくて、この本の鬼のような姿かたちの人なの?」
「う~ん。たぶん。大きくて、角があって、牙が生えて、太い腕で、人間を見たら食べちゃうって」
「そうか。怖いね」
マーヤという女性が、話をしてくれたオーガの様子にこの鬼の様子が似ているのだろう。
オーガは魔獣ではないのかな。種族は違うけど、知能はある人種って感じかな。でも、人間を憎んでいるということは、人間にひどい目に合わされたのかな。
「このご本、後で読んで」
「いいよ、先にお面作っちゃおう」
「うん、オーガのお面作ればいいんだね」
あぁ、悪い気を持ち、豆をぶつけて追い出さなければならない鬼と同じにするなんて。
オーガと人との溝をさらに作ってしまう。ここで、否定すべきか。
「オーガに似た顔っていうところかな?」
このくらいで許してもらおう、オーガさん。いつか訂正するから。
なかなか迫力のあるお面が出来た。ハクたちに鬼になってもらうため、小さめだ。
ベルは絵心があるんじゃなかろうか。
イエローが覗いてびびっている。
それは、あんたにかぶせるよ。イエロー。
なまはげのように、蓑のようなものを首に巻くように、藁を編んだ。
本番に備え、説明をして練習する。
家中を順番に逃げ回り、最後は、家から出て行くという設定だ。その間に投げつけられる豆は食べては駄目だと、イエローにくれぐれも言う。
ベルにも、本気で豆をぶつけては駄目だという。あくまで、振りなのだということをわかってもらう。なかなか理解してもらえなかったが、急に閃いたようにベルが言う。
「わかった。儀式だね」
そうなのか?
「そうそう、儀式みたいなものだよ」
返事をしておく。決して面倒くさくなったわけではない。
本番の2月3日、ベルと一緒に朝から酢飯をつくり、太巻きにしたり、具入りお稲荷さんを作る。
イエロー、近寄って来るなっ。縁側か出るなっ。
「コケッ」
ハクがイエローをつついてくれる。イエロー、しぶしぶ縁側に移動・・・
外に出てくのか?
「レッドっ、イエローが入ってくるとき、足を綺麗にしてくるか確認して、ブルーはダニをっ!頼むね。ブラックは、見張っていて。
ブラック寝てないで、起きてっ。
午後には豆の用意をし、炒る。日も暮れ始めて、そろそろ本番だ。
大騒ぎ。
年の数だけ食べるということになって、ベルが聞いてきた。
「私は、いくつ食べられるの」
いくつって、ベルいくつになるの?
会った時、7つっていったよね。いつ誕生日だったの?
「ベルの誕生日がいつか覚えている?」
「誕生日って生まれた日?・・・わからない。でも、すごく暑い日だったんだって」
「ベルは、ここへ来る前、暑かった?」
「いつも、暑いよ。夜は寒くなるけど。あっ私の生まれた日は、夜も暑かったって言ってたよ」
砂漠の夏ってこと?
「一年中で夜も暑い日と寒くなる日があるの?」
「うん。%“#$%は、一番暑くて、%&‘は、夜寒くなる。」
久しぶりに、謎言語を聞いたな。
ノートにチェックだ。
ベルと会った時、昼間より気温が下がったとは思ったが、寒いと言うほどじゃなかったな。
「一年は、いつから始まるの? 」
「%“#$%」
「ギタラジェ・・ブゥ?」
「うん」
「一年はいくつかに分かれるの?」
「12だよ」
そうなんだ。地球と同じだな。季節はたぶんあるな。でも、砂漠気候だし。日本とは違うだろうね。きっと。
真夏が1月で、真冬が6月になるのかな。
「お母さんと会った時は、一年のいつだった?数字わかる?ギタラジェブゥが1としたら」
少し考え込むと、すぐに元気に答えてくれた。
「3だよ」
うちの子、ちょ~賢くない?
ベルが生まれたのが、最も暑い時期だというのならおそらく1の月だろう。1の月で7つだとすると、ベルを助けてから、8か月たっているから、この世界に合わせると半分の月にして4か月経ったことになる。
そうすると、7の月か?まだ、ベルは7つのままだ。
「わかった、ベルは、7個食べられるよ」
「7個だね」
すごくうれしそうに、7個7個と節をつけて歌っている。畳に落ちている豆を拾うように、注意した。
「ハクやイエローたちは?」
足元をうろつく鶏たちが勝手についばんでいるのを見て、聞いてきた。
「う~ん、卵を産み始めたものをいっぺんに一昨年買ったから、3歳かな?」
言った瞬間、
「もう、食べちゃダメっ」
と言って、鶏たちがついばんでいるのを遮ろうとする。
それは無理だよ。
「年の数だけ食べるのは、規則だから。後は、好きなだけ食べていいんだよ」
マイルールである。
「いいのっ」
「いいよ。ハクたち、落ちている豆、全部食べて。ベルは、こっちの豆を食べよう」
と言って改めて炒った豆をベルに出す。
イエローが豆で滑って転んだことはあったが、皆で節分のごちそうも食べ、楽しく夜は更けていった。
その晩寝ながら考えた。
ベルの誕生日って、いつ?
どうしたらいいかな?あっちの日付で1の月1日かな。一番暑い日って言っていたから。
温度計で外の温度を毎日図れば、その日が、わかるか。
早速、明日から、計ろうか。




