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2.不思議現象


午後3時。目覚ましに起こされた。


変なときに寝たせいで、重い頭を抱えながら、洗濯物を取り込み、鶏に餌をやった後、茶を飲みながら一休みした。


テレビをつけてみた。普通に見られる。


地上波根性あるじゃん。


スマフォを使ってみると、電話やラインはできないけど、なぜかインターネットはできる。


はて?


うん?

電気どうなってんの?


ダイニングの電気は点いた。電気ポットや冷蔵庫が点いている時点で気がつけよってか。


ガスは?

点いた。


水道は?

出た。


どうなってんの?


怖いから、確認しないけど。

これで、当面、生活には困らない。

でも、消耗品が無くなったら、どうなる?



考えないようにしよう。


外に、出てみた。

洗濯物を取り込むときは、周りをなるべく見ないようにしたけど、今度は確認することにする。


覚悟を決めた。


門より外に出て、家の外周をぐるりと廻る。足に砂が入って歩きにくいので、一度引き返して、長靴に替えた。海岸の砂ではなく、さらさらのパウダーのような黄色い砂だ。風に巻き上げられ、身体にまといつく。スカーフで、口元も覆う。

周りを歩いて気がついたことは、外と家の敷地内には、可奈は普通に通りぬけられる透明な仕切りのようなものがあって、気候が変わるということだ。家の敷地外は、砂漠気候だが、塀の外側より中は日本の今の気候ということだ。

すべてがなぞだが、自分は、砂漠では、暮らしていけないことだけはわかった。ビバ日本の気候である。他にわかったことは、四方八方何もない、誰もいないということだ。

見わたす限り砂漠だ。地平線と言っていいのか、東西南北まっ平らだ。つまり、見わたす限り何もない砂漠に、ご近所さんもなく我が家だけポツリとあるということだ。


怖くなって、家の敷地に入った。


途中、鶏小屋で鶏が普通に餌をついばんでいるのを見てなんだか安心した。

考えるのは、明日にするということで、夕飯を作って食べ、風呂に入って、寝た。


次の日さすがに、先送りはまずいかと、パソコンを立ち上げ、ググッた。

キーワードに、突然・家・砂漠・移動と入れたら異世界転移の小説が万という数で出てきた。

何これ。

一番最初のページを開くと、異世界トリップという珍妙なファンタジーが書かれていた。

次々開くと、似たような話が山盛りである。

うん。あるんだよね。こんなこと。


「マジかよーっっ!!!あるわけねぇっ!!」


大きい声で叫んでみました。


誰もいないんだから良いんじゃない。独りきりだし。

と思っていたら、鶏小屋で普段おとなしい鶏が大騒ぎをしだした。


・・・ごめん。脅かしたかも。


気を落ち着けて、鶏小屋を見に行った。まだ、コケコケ騒いでいたが、羽が少し舞い散っているぐらいで、パニックはおさまったみたいだ。優しく声をかけながら、舞い散った羽やひっくり返ったえさ箱、ちらばった藁なんかを掃除して、水を入れ替えて落ち着かせてから家に戻った。そんなことをしたおかげか、自分自身も落ち着いた。


まぁ、しょうがない。ここで、生活していくしかないかぁ。当分ひとりでも良いけど、ずっと独りは流石に、きついなぁ。と思いながら。



そんなこんなで、一週間過ごして気がついたことがある。消耗品が減らないということだ。最初は気がつかなかったが、仕舞ってあるトイレットペーパーが、使った分、次の日になっていると、戻っているのだ。

ラッキーである。

内心すごく困ると思っていたのだ。トイレに行くたびに、いつもより少し減らして使っていたのだ。


ウォッシュレットだからできたんだけどね。でも、トイレットペーパー!!偉大だよ。ペーパー君。おしり困るよね。君がいないと。

とそのくらい、心配していたのだ。

不思議がここにも発揮されていた。

本当に助かった。


他の消耗品も、気がつけば元に戻っていた。シャンプーやリンス、歯磨き粉の日常品やしょうゆや塩、砂糖、米や小麦粉の食料品どころか、冷蔵庫の中のものすべてが、次の日は元に戻っていた。ただし、元の入れ物をそのままにした場合だけだが。

例えば、トレーに入っている肉を、半分使って残りを、サランラップで包みなおし、冷蔵庫に入れておくと、次の日、買ったときと同じ量に戻っている。トレーから出してラップだけに包んで冷蔵庫においても、量は、半分のままである。もともと、肉が入っていたトレーがなければいけないのである。トイレットペーパーも、12個入りのビニール袋を捨ててしまっては駄目である。戸棚に、たまたまビニール袋のまま使い出していたため、セーフだったのである。不思議満載だ。



最初は、単純に安心していたが、だんだんと怖くなった。

題名は忘れたが、洋画のDVDでこんなサスペンスを見たことがあった。

主人公たちは、生と死の狭間にとらわれており、何度も同じ日をループする。抜け出るのは、ホントに死ぬか、生き返ることができた者だけという映画だ。

自分たちしかいない都会のビル郡の中で、それぞれが気がついたらそこにいたという状態だ。主人公は、建物や電気ガスなどのライフラインは、そのままの誰もいない都会をさまよう。車も乗り捨てられ、店も店員がいないまま開けられている。主人公は、この大都会に自分しかいないと思い始めた矢先に、何かわけのわからない怪物に襲われている親子に出会う。・・・という出だしの映画だ。結局、ここに来る前に、ガス爆発事故にあった彼は、同じ事故現場にいた人達と知り合い、状況をだんだん理解していく。何かわけのわからない怪物は、死を具現化された死神だった。という落ちだ。ある一定の日にちというか、時間が経過すると、主人公は、振り出しに戻り、また、街をさまようところから始まる。映画の中の主人公は、ループしている時間に気がつかない。


自分もそうなのか。

不安に襲われた。


どうやって、確かめたらいいのか。

怪我をしてみる?

あの映画の主人公たちは、怪我をしたよなぁ。確か。

次のループの時は、それも振出しに戻っていたなぁ確か。


駄目じゃん。


とりあえず、夕飯にしよう。鶏たちも待っているし。コケコケうるさいし。

考えるのは、明日にしよう。

次の日、裏覚えの映画の題名をググッて、配信された映画を見た。

覚えていたのとは、細かいところで大分違っていたが、大筋は合っていた。でも、自分の状況とは、なんとなく違っているような感じだ。まだ、ネット小説の異世界トリップのほうが、合っている気がした。

鶏が生き生きと煩いせいか、生と死の狭間って気がしない。


魔法補填、魔法修正って感じで、不思議現象は片付けることにした。


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