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19.どんど焼き

正月4日目から日常に戻る。


掃除とか、掃除とか、掃除とか。


家の中から、庭から、掃くだけでも大変だ。庭の落ち葉掃きは、鶏たちがずいぶん頑張ってくれたので助かった。

家の中は、可奈が掃除機をかけたところを、ベルがモップで拭いてくれている。

・・・うちの子は、できた子だよ。



今日のお昼は、鯛めしにしようか。といったら、ベルさん大喜び。

♪めでた~い、たいたい♪たいめし~たべたい

などと、可奈の後ろをモップで拭きながら、歌っている。



なぜおまえがいる。

おい、お尻を振ってる、おまえ!おまえのことだよイエローっ!



可奈の睨みに気が付いてしまったのか、ベルがおどおどしながら、イエローをかばう言い訳をいう。

「ちゃんと、脚は拭いたよ・・・・私が上がって良いって言ったの・・・・ごめんなさい」

しょぼんと、下を俯いてしまった。



「はぁ~それじゃあしょうがないね、イエロー汚さないでよ」

「大丈夫だよ。イエローは、えらいものねぇ」

イエローを見ながらニッコリ笑う。イエローだからそのどや顔やめろ。

「それから、畳や床に爪を立てないでね。わかった」

「うん」

「コケッ」

ベルまで返事する。


まぁ、一度、家の中に上げてしまったのだ、味をしめても仕方がない。



食事も、同じものを食べるのか?もちろんハクたちも、一緒だろう。

みんな食欲旺盛だから、大変になったな。鶏たちの半分は鶏の餌をやるか。



それでも、大勢で食べるのは賑やかでいいな。




食事の支度にとりかかり、ご飯を炊いている時、ベルに他の鶏たちを、呼んでもらう。外で待ってもらって、ダニやのみが付いてないか確認する。

「ハク何やっているの」

可奈がブルーを見ているときに、ハクがレッドをつつきまわしている。

つついている、いうより、羽をめくって地肌を確認しているみたいだ。

「ハク、あんた確認してくれているの?わかる?」

「コケッ」

ほんと?じゃあ、まかせるよ。

「イエロー、お前はよけいなことをしないでいい。ほら、ブラックが痛いって」

「コケッ~」

「コケじゃないよ。余計な手間を増やすな」

「私、救急箱持ってくる」

飛ぶように家の中に走って行く。戻って来た時には、もう、つつかれた痕もわからなくなっていた。自己治癒力上がってない?

その間に、ハクがブルーや途中のレッドを見てくれた。そのまま、ブラックを確認して、さあ、脚を拭こうとしたら、

「あのね、外の水道のところで脚を自分で洗えるんだよ。そこから飛んで縁側で拭いてやればいいんだよ」

「えっ。そうなの?」

だから、そのどや顔はやめろっ!イエロー!

「みんなもできる?」

「「「「コケッ」」」」

「そう、それじゃ、縁側に拭くもの持ってくるから、水道の蛇口は・・・」

おまえは、無駄に器用だな。自分でひねられるんだ。

「・・・・使ったらちゃんとしめてよ」

「コケッ」

ハクが返事をしてくれた。

「頼むよ、ハク」

ハクに頼っているなぁ、特別に何かしてやりたいなぁ。



とりあえず、今日のご飯の量を多くしてやろう。




7日になると、七草粥のつもりで、朝も早くから皆で、春の七草を採って歩いた。

ベルそんなに、ゴギョウは要らないよ。まずいからね。


お餅三昧だったこの正月の胃に、やさしいお粥だった。





私はね。




ベルは、物足りなさそうだったので、お餅や焼き肉を追加した。鶏たちにも、硬い餅をがつがつ食べる。


・・・・・あんたたち、嘴大丈夫?


鏡開きの時は、あんたらお汁粉じゃなくて、小豆そのまま食べる?




家の仕事や畑仕事をしながら14日になった。



どんど焼だ。



あっベルに書初めをやらせなかった。

正月も松の内を過ぎた。正月飾りや団子を子どもたちが集まって焼く行事だ。無病息災?風邪をひかないようにとか、字が上達するようにとか、なんたらかんたら、よくわからないが、子供の行事だ。


少なくとも、可奈の子供の時は、近所の子たちが集まって皆で、わいわい焼いていた。

正月の飾りも燃やさなければならないし、ベルが1年風邪をひかないように願わなければならない。

やらねばならない。


・・・・けれど、



子供たちってベルしかいない。そんな、どんど焼きってありなの。



ベルに説明して、上新粉でどんど焼きの団子を作り、食用色素で赤と緑に着色する。繭玉も作り神様に供える。


二人っきりのどんど焼きだ。


周りで騒いでいるやつらはいるが。


上新粉を小さく玉にして、鶏たちに食べさせる。







次は、おぼっこだ。




おぼっこも、すぐにその日がやってくる。稲荷大明神の旗を持って山の神様に子どもがお参りする祭事だ。


準備は、部落で持ち回りだった。


旗を持ってきた子どもに、赤飯とお菓子を包んで渡すのだ。子どもの無事を祝ったものだと思う。


ベルのためならやらねばならない。


山の神様は家の裏の山に奉られている。後は、旗と赤飯だ。菓子は、適当に駄菓子をつめればいい。



子どものときに使った習字の道具を納戸から引っ張り出す。いろいろな色の半紙をのりで張り合わせ字を書く。



そばで、見ていたベルが、

「習字だね、習字。どんど焼きのとき燃やすのだね」

「そうだけど、これは違うよ」

「違うの?」

「そうだ、このおぼっこが、終わったら、習字の練習を、ベルもしてみる?」

「やっていいいの?」

「いいよ」

習い事の定番である。定番といえば、ピアノもいいかもしれない。私はうまくないけど。

教本もあるし、CDもある。探せばテレビでも、どこかで演奏してるかもしれない。使わずに置いてあるだけでは、もったいない。調律は、1年以上やってないけど、どうにかなるだろう。


プロになるわけじゃないからね。



・・・・ハーモニカやピヤニカやリコーダーの練習も、いいかもしれない。あれならの音楽の教科書で、いいし。


たぶん、私でも、教えることができる。


・・・はず。



旗が出来上がり、ハクに先発隊で赤飯とお菓子の詰め合わせを風呂敷に包んで持たせる。どっかの駄鶏と違って、使えるやつだよ、まったく。爪の垢でも飲ませてやりたい。

裏の山を日々警戒してくれているだけあって、説明しなくても、山の神様の場所もしっかり知っていた。


ホントにかしこいよ。ご褒美に駄菓子の袋から1つ好きなものを選ばせよう。


ベルに旗を持たせ、出発だ。レッドやブルー、ブラックが後から付いてくる。

お~い!イエロー行っちゃうよ。


事前に用意してあった米や酒、塩もちゃんと盛ったまま供えてある。難しい作法はわからない。旗を供え、お祈りをして、米や酒。塩を撒く。


一緒に拝んでいたベルに、赤飯のお握りとお菓子を渡す。鶏たちにも赤飯のお握りを出す。

「わ~い。ここで、食べていいんでしょ」

「いいよ」

「このお菓子も?」

「いいよ」

「全部、ベルのもの?」

「そうだよ」

「おかあさんにも少しあげるね」

「ありがとう、でもいいよ。全部ベルが食べなさい。あっ。いっぺんに食べては駄目だよ。それから、ご飯の前も」

「は~いっ」

いい返事だ。守れるかどうかはわからないが。

いや、きっとベルなら守るかもしれない。

私が、子どもの頃は、無理だったが。


実はこの駄菓子、不思議が発揮されたすぐれものだ。袋についている賞味期限が延びているのだ。入っていた大袋だけ残して、小袋の駄菓子を抜き、復活するか試してみたのだが、そのとき、ひょいとベルが食べるものと言うことで、賞味期限が気になってみてみると、前より1年延びていたのだ。



どういうこと?

お菓子って、賞味期限1年もあるの?

ベル用でない菓子を開けて食べてみても、湿気てないし、味もいい。

少しベルにも味見させたのが良かったのか、悪かったのか、お気に入りになってしまった。それから、制限を加えて、あまり駄菓子は食べさせないようにしていたが、この場合は仕方がない。



おぼっこだから。


それにしても、今回も二人っきりのおぼっこだ。




1月も終わりに近づいた頃、この二人っきりという言葉を考えさせられることが起きてしまった。









その日は、3時過ぎた頃、農作業をしていた可奈をブルーが呼びにきた。ベルは、おやつを食べた後、いつものようにイエローをお供に遊びに出かけていた。


何事かと、ブルーの後をついていくと、ベルが東の崩れた石垣の上に立っていた。イチゴでも採っているのかと思ったのだが、敷地の外にイエローがいて、ハクはいつでも飛び出せるように、ベルの横の石垣の上にいる。

「ベル、何しているの?」

「あっおかあさん、私大発見したよ。う~んとイエローとだけど・・・ブルーもね」

可奈の後ろにいるブルーのご機嫌をとるように言う。

イエロー主体と言うことで、すでにろくでもないことに違いないと可奈は思った。それより、敷地外に出ているイエローが心配だ。

「イエロー、戻りなさいっ」

叱りつけるように、大声で呼ぶ。苛立ちが募る。怒りが伝わったのかあせったように、翼を羽ばたかせ飛んで戻ってくる。


・・・ベルの後ろに。



ベルを盾にするんじゃない。


「イエロー、言ったよね。敷地外に出るんじゃないって」

「コケッ」

首をかしげる。

とぼけるのかっ!!

横から、ハクが、

「コケッコケッ」

なんか、言い訳するように可奈に話しかける。一瞬冷静になる。

あれっ?ベルに言ったけど鶏たちには、言ってない?敷地内を警邏してとはいったけど、敷地外に、出ては駄目っていってない?

ハクの方を見ながら、確認する。

「私、あんたたちに言ってなかった?」

ハクは、仕方がない子を見るように、

「コケッ」

一言鳴いた。

「・・・・そうか。私が言わなかったんだ、ごめんね、怒鳴って。でも、外に出ては駄目。わかった。」

そこにいるハクやブルー、イエローに言う。

そばで聞いていたベルが、

「でもね、おかあさん、大丈夫なんだよ。」

はぁ?何が大丈夫なの?

「大丈夫って、外は危険だよ」

「違うんだよ、この敷地にバリアがあるでしょ。そしてね、外の草の生えているところもバリアがあるんだよ」

「はぁ?」

理解できなくて、思わず呆けてしまった。

「だからっ、2重にバリアがあるんだって。砂漠から草の生えているところに、砂漠からは進入できないし、草の生えているところから家の敷地へは入れないんだよ」

「えっ!?」

理解が難しい。いや、言っていることはわかるのだが、なぜそれをベルが知っているのかだ。

「どうして、それが、わかったの?」

さっきの失敗をしないように、落ち着いた振りをして、聞いてみる。

「実験したの、イエローと」

何っ?どんな実験だ。

「実験って?」

「最初にイエローがね、草っ原の中に生えている木をね、家の敷地に投げ入れようとしたの。できなかったの。次に、砂漠に行ってね、砂漠の砂を草っ原に投げ入れようとしたの。でも、何かにはじかれたようにやっぱりできなかったの。それで、私もやってみたの。できなかったの」

はぁ?

「すごいでしょ?」

一気に頭に血が上った。

ベルの前に回り込み、両肩をつかむと目をあわせ、反らさせないようにして、大声で怒鳴る。

「ベルっ!!!!家の外に出ては駄目っていったでしょ」

自分の顔が引きつっているのがわかった。

急に大声を出され、びっくりしたベルの目が、可奈の怒った顔から離れない。

すぐに、ベルの大きな目が潤んだと思ったら涙が溢れ出した。

「うっ・・う・うわ~~ん」

最初は、我慢しようとしたのだろうが、すぐに大きな声で泣き出した。その様子に少し冷静になったが、それでも上った血は下がらない。

「泣いても駄目っ。出ては駄目って約束したよねっ!!」

ベルを責める心が、止まらない。

「うっうっ・・えっ・・ごっ・・ごめ・・ご・・」

えづきながらも謝ろうとするベルの様子で我に返った。


おそらく鬼のような顔のままだろう。

何をやってるんだっ、私はっ!!

知らないうちに、ハクがベルと私の間に体を割り込ませようとしている。イエローがベルのすぐ後ろを守るようにしている。

怒鳴った声が聞こえたのか、レッドとブラックも飛んできた。


目を瞑り、深呼吸をする。


目を開くと、泣きながら、怯えた目をして、しゃくりあげ謝るベルが目の前にいる。



「ごめん」

思わず口を出た。


強張ったベルの体にをそっと抱え込む。

拒否されるかもしれない。

心臓が変な風に跳ねる。

「ごめん」

言葉を重ねる。なぜ、何度も同じことをしてしまうんだろう。ベルを怒鳴って、不安にさせて、どうしようっていうんだろう、私は。

馬鹿だ・・・


「ごめん、怒りすぎた」

胸の中でしゃっくりのようにひっくひっくしていたベルが、静かになってきて、胸に頭を押し付けて、振っているのが伝わって来た。


許してくれるの?


そのまま抱き上げ、家に戻る。

ベルを抱えたままソファーに座る。体を揺らしながら、ベルが泣き止むまで待つ。

しばらくすると、ハクたちが家の中に入ってきて傍に寄ってきてくれた。


ベルは、そのまま寝てしまった。








この家は、閉じている。


外は、危険だ。すぐに死が待っている。


外に出るわけにはいかない。





・・・でも・・・





・・・ベルは、家の外に目を向けている。


ベルは、子供だ。子供は、いろんな人と出会い、経験して成長していく。


それが、ここでは、私だけだ。



二人っきりの生活。




・・・・・いびつだ。




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