18.対策
はっ!!
ベル、着物を着て鶏たちと遊んでなかったか?
畳の部屋に、干してある着物を見に行く。確認しても大丈夫そうだが、わからない。しばらく、このままにしておこう。ベルが後をついて回る。
のみ・ダニ用バルサ○を家中に焚くことにする。
「ベル、バルサ○を焚くから、窓全部閉めてあるか確認して、押し入れやタンスは、開け放しにして」
「バルサ○?何?」
「ノミやダニを退治する煙が出るものだよ」
「魔法?」
「そうじゃないよ、薬品だよ、殺虫剤だよ。キン○ョールなんかと同じだよ」
「煙、私たちも吸うの?」
「いやいや、家を閉めて、私たちは外で待っているんだよ」
「イエローたちと遊んでいい?」
「いいよ」
「お母さんは?」
「う~ん、何しようかな?結構時間あるんだよね」
竹馬を作った。
その晩、インターネットで、マダニについて調べてみた。
ライム病やツツガムシ病等けっこう大変な病気が多い。すぐに、どうこうではなくて、2,3週間とか、風邪の症状に似ているとか、インターバルが長い。ベルが病気になったらどうしよう。
動物もかかるのだろうか。ハクたちの様子に気を付けよう。ベルにも話しておこう。
山に入るときは、虫よけスプレーをしていくように言おう。
ハクたちに言っておいてもわかるかな?
・・・とりあえず、明日言おう。
竹馬の練習をしながら、山に入る注意をいう。今は冬だからズボンに長袖だが、温かくなっても肌をあまり出さない服で行くように言う。
真剣に聞いてない。そうだね、今じゃないんだから関係ないね。暖かくなったらまた言おう。
「イエロー乗って、レッドも乗って」
掛け声とともに、2羽がベルの竹馬のてっぺんの片方ずつ乗ろうとしている。
はぁ?何やってんの?
なかなか難しい。
あっ危ない。
ベルが竹馬から落ちそうになる。バランスよくこらえる。
「大丈夫だよ」
「そうなの?転ばないでよ」
「大丈夫!!」
そう言うなら、そうなんだろうと注意するのをあきらめる。落ちそうになったとき、すかさず、ハクが下に回り、落ちそうなところに陣取った。落ちてもハクが受け止めてくれるつもりなんだろうと、ハクに感謝のつもりで、身体を撫でる。
「コケッ」
任せてと言わんばかりの返事だ。あんたに任せるよ、ほんとに。
でも、ベルたちどこへ向かおうとしているのか。どこぞの雑技団かアイドルグループか。
まぁ楽しいんだったらなんでもいいけどね。
庭で遊んでいる者たちをおいてに、久しぶりに家の周囲を散歩がてら見て歩くことにする。
門の前を境に砂漠だったのが、10mほど草が生えている。多少でこぼこだが。ベルの魔法の練習の跡が埋まりきらなかったうちに草が生えたのだろうと思う。周りをみると草だけでなく低木もそこかしこに生えている。
敷地内に沿って東側へ行く。畑の向こうの壊れた石垣のさらに向こうも、草っ原が広がっている。
・・・草っ原と言っていいだろう。1町歩ほどの草っ原だ。畑で抜いた草を捨てていたのだが、その草だけでなく見たこともないような草や低木が生えている。
・・・外来生・・ぶ・・・いや考えちゃだめだ。
その向こうには、相も変わらず砂漠だし。ず~と見渡す限り砂漠だし。
東側の山の方にかかると、山の北側を流れる、ベルが落ちた沢の先のあたりが、緑が一段と生い茂っている。他に比べて、葦のような草がぶいぶい言わせているようだ。
あれっ4mか5mない?
何あれ?
えぇこれ沼地になってない?
ベルが沢に、落ちた時は着く先は、涸れ川になるからとか思っていたから、そんなに心配しなかったのに、危なかったよ、これだと。
山の裏の北側の方は、思ったほど、植物は浸食していない。それでも、30m幅くらいは、草木が生えている。
そのまま、西の方にぐるりと向かう。
山の裾を歩いているときにベルが呼ぶ声が聞こえた。
「ここだよ、田んぼのところを通っておいで」
「は~い」
遠くから返事をする声が聞こえた。
すぐに、軽い足音とうるさい羽ばたきとともに、ベルたちが来た。
ちょうど、日が暮れる時だったのだろう。真っ赤な夕日が、西の空一面を覆う。
ベルの笑顔や鶏たちも橙色に染まる。
平和だ。
こんな日がずっと続いてほしい。




