17.マダニ
今のところお金も使うことがないのでいいのだが、何も持ってないとなると不安だ。
考えても仕方がないので、必要なその時に考えよう。
必殺、問題の先送りである。
さて、2日目の今日もだらだらしよう。
御節を食べると、ベルが着物を着たがる。
着物を着ると、動きづらくなるよ。・・・・・・いいの?
子供の順応力なめてました。着物を着ても、昨日よりスムーズに動いている。すごいね。
お昼お食べ終わり、昼寝をするために、着物を脱がせる。昼寝をした後。今日も今日とて、皆でまた遊ぶ。
鶏たちの周囲の警戒はどうしたと言われたら、困るのだけど、正月ぐらい休みでもいいんじゃないかと思う。
それでも、昨夜縁側で敷いた敷物を片付けようと、縁側を開け、バタバタする。
コロッと、小さいものが落ちる。
何?
「ギャー」
「お母さん、どうしたのっ」
軽い足音とともに、ベルが慌てて駆けつける。
「ベル、こっちに来てはだめ」
ビクッとして、リビングに入るところで足を止める。
縁側の廊下に落ちたもの。
ダニ
丸々太った・・・ダニ
かんべんしてぇ~
ハクたちだ。
「ベルっ掃除機持って来て」
「はいっ!」
ベルが急いで納戸の方に、走っていく音がする。敷物は外に放り出す。他に落ちてないか、廊下を念入りに見る。
「持ってきたよ」
「そこに置いて」
リビングの入り口に置かれた掃除機を取りに行き、廊下に掃除機をかける。ベルもやりたそうだったが、やらせるわけにはいかない。
「ハクたちが、山ダニをつけてきたんだよ」
「山ダニ?」
「そう、小さい虫で、動物の血を吸うの、とりかたを失敗すると、口がむしれて肌に残って、大変な事になるの」
「たいへん?」
「そう、変な病気になったり、熱が下がらなかったり、ひどくなると死んじゃうんだよ」
ベルを脅かしすぎたのか、青い顔をしている。
「ハクたち、病気になっちゃうの?」
「無理に採ろうとしなければ大丈夫だよ、たぶん」
廊下の隅から隅まで掃除機をかけ、安心できず、リビングや畳の部屋も掃除する。
掃除をしながら、ベルに昨日からかゆいところはなかったか確認する。念のためにベルの頭の髪の毛や服や首筋、手足を大丈夫か見る。
外に出て、庭で騒いでるハクたちを呼ぶ。
「あんたたち、ダニを家の中に持ち込んだのは誰?」
自分でも目が座っているのがわかる。隣でベルが引いている。気にしてはいられない。
「今から、健康診断をします、名前を呼ばれたら私の前に来るように。イエロー終わるまで、ベルに近づかない。ベルも」
「は~い」
「いいお返事です。他は?」
「「「「「コケッ」」」」」
「よろしい、では、イエローから」
決して鬼軍曹を目指したわけではない。
イエローの羽や翼をめくって地肌を丹念に確認する。
大丈夫だ。
「よし、イエローはよし。次はブルー」
ブルー、レッド、ブラックともに問題がなかった。
なんと、ハクにダニが1匹ついていた。でも、そんなに意外ではない。
ハクの警戒区域である山の中を駆けずり廻っている。一番ダニに狙われやすかった。
ダニの口が地肌に食い込んでいる。ハク本人は、廊下で騒いでいた可奈の話を聞いていたのだろう。申し訳なさそうな顔をしていた。
「ハクが悪いわけじゃないよ、一生懸命仕事をしてくれたからだよ」
慰めになるかわからないがとりあえずフォローしておく。
・・・・さてどうするか
虫よけスプレーかキン○ョールを綿棒に湿らせてダニを殺せば自然にとれるんだったけかなぁ
と、考えて羽をめくってダニをさらしているとふいに影ができた。
えっと思った瞬間、ダニがついばまれた。
顔を上げると、イエローが得意そうな顔をしている。
「おまえぇ~なんてことするだぁ~」
「コケッ~」
ハクも抗議する。
「まずいな」
「ハク死んじゃうの?」
「いや、死んでしまわないと思うけど、ダニの口が残ったままなのは良くないと思う」
「コケ~」
イエローが、皆に叱られて、自分がまずいことをやったのがわかったのか一羽慌てている。
「ベル、救急箱持ってきて、あるところわかる?」
「うんっ」
返事をしながら、駆け出す。
「ハク、じっとしていて」
「コケ」
切開して取り出さなきゃならないのか
できるのか?
心配して見ていると、えっ?
刺さっていた黒いものが肉の中からせり出してきた。目の錯覚かと、一度目を瞑って開くと・・・・ぽろりと落ちた。
穴が開いているかと思ったら、せりあがった肉が元通りになった。
なんか、気持ちが悪いんですけど~
「持ってきたよっ」
唖然としていると、息を切らせて、ベルが戻ってきた。
「あ・・ありがとう。」
ベルから受け取る。傷口も何もない。ピンセットで肌についているダニの残骸をとり、消毒をしておく。
意味ないんじゃないかと思わないでもないけど、気は心ということで・・・
ハクも解放する。
イエローには、厳しく注意を与える。
ベルそんなヤツは慰めなくてもいい。
ハクにベルが謝る必要はない。
今回は、大事にならなかったから良かったけど、反省が必要だよ、イエローは。
ベルもハクたちと遊び始めた。
救急箱を片付けながら考える。
というかベルと遊んでいる姿をしげしげ見る。
大きい。
鶏ってもっと小さかったよね。半年前、少し大きくなったかなと思ったけど、その比ではない。
ベルよりも少し小さいくらい。可奈の腰ぐらいまである。頭も良くなっている。身体能力も上がっている。
魔法さえ使っている。
その上、回復力?
回復力なのか?でも、刺されているときは、ダニを異物として排除しなかったんだよね。口だけ刺さって残ったから、発揮したの?
どういう基準?
あれっ・・・イエロー空中を・・・歩いている?
・・・・・・・見ないことにしよう。
「ベル、家の中にはいるよ、外で遊んでいる?」
「うんっ」
「ハク頼むね」
「コケッ」
鶏たち相手に鬼ごっこのようなことをし始めている。救急箱を片手に、家に入る。庭が見える位置に座って、お茶にする。
不思議がいっぱいだ。
とりあえずは、この家の敷地内だったら完全に安全なことはわかった。
ハクたちの警備は、もういいかな?
でも、何かが接近してきたとき教えてほしいかな?
まぁ適当に警備してもらうことでいいか。
明日は、門松を作った竹で、凧を作ってやろうか。竹馬もいいかな?空き缶のぽっくりも喜んでいたしね。缶けりが出来ないのは、寂しいけどね。
・・・・鶏たちとできるか?
とりあえず、今日の夕飯は、御節と何にしようか。
カニがあったな、鯛も塩で焼いてみるかな。明日の朝のチラシ寿司も用意しておこうかな。鶏たちも食べるかな。
その前に、ベルを風呂に入れ、噛まれた跡がないか確認しなければ。
正月三ヶ日はご馳走三昧で過ごした。初めてのベルの日本の正月だ、贅沢したっていいじゃないか。と思いながら、ベルにかこつけて、贅沢をした。




