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彼女は雨が降る  作者: 水瀬さとみ
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彼女は雨が降る

あれから何回か、彼女に会いに行った。

その度に、両親との思い出や大阪の友達との思い出を話してくれた。



そのワードが何度出てきただろうか。

「雨は心を綺麗にしてくれるねんで。」

「へぇ、どうして?」

「体を伝って、雨水と共に嫌な物も流れるねん。」

「確かにわかるかも。」

こんなん分かってくれるん松原君だけやで!と彼女はうれしそうな面持ちだ。

そんな今日の天候は雨。

くせ毛の僕の頭も今日はいつにも増して元気だ。

「退院したらさ、一緒に花火しようや」

木崎は何とも言えない複雑な顔をして僕に向かって言った。

「いいよ、退院したらね。」

「本当に?」

「本当に。」

「イヒヒ、じゃあ雨の日に。」

「雨じゃ花火はできないよ?」

「そこを何とかしてくれるのが私の好きな松原朝陽やろ」

「なにそれ」

僕は笑って誤魔化した。

「なぁ、好きなんやで?」

「え?」

「イヒヒ、雨と同じくらいな。」

「なにそれ」


僕は、分かっててわからないふりをしていた。

案の定、顔も赤いことだろう。僕は君に弱い。

ずっと言いたかった言葉を君から言われたから少し、悔しいよ。


「あ、虹や」

「虹だね」

「虹も私好きやなあ」

「僕も好きだよ」

「やんな」

「雨と同じくらいね」




気づいたかな。これが僕なりの仕返し。気付いたとき君はイヒヒと笑ってくれるかな?それとも僕みたいに顔を赤くする?


僕は感謝してるよ。雨を好きにさせてくれて。

雨ってなんだか人間のテンションを下げる役割があると僕は思っていた。くせ毛も綺麗にうねるしね。

君と出会えてよかった、なんていうのは僕らしくないから雨と出会えてよかった。そういえばいいかな。


「・・・ねぇ、雨と同じくらいって」

ほら、気付いた。

「好きだよ?」

「なんやそれ」


僕の予報は大外れ。君の目からは美しい雨粒が零れる。






ほら、言ったでしょ。彼女は雨が降るんだってね。



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