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彼女は雨が降る  作者: 水瀬さとみ
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今日は"晴れ"だよ

雨が降ると、木崎が自然と頭をよぎる。それは日常茶飯事って言葉が似合うと僕は思う。『今日、ごゆるり旅のお誘い来そうだな』そんな事も日々思ってしまうようになった。自分でもその理由は分かってる。高二の冬、僕は木崎をクリスマスデートに誘った。そう、誘ったのだ。クリスマスデートに誘う、即ち僕は木崎に好意を抱いてるという事。しかし、高一から続いていたごゆるり旅の延長線上と捉えられてしまって、男として何も出来ない恥ずかしい結果だった。

『好きだ』そう言えば木崎は笑い飛ばすだろう。『松原君何アホ言ってんの』そうやっていつも通り、イヒヒって笑うんだろう。

かれこれ恋して一年ばかりとなる。先日友人にもちゃんと『お前は馬鹿か早く手を打て』と喝を入れられた。

高三が終わるまでにちゃんと伝えよう。僕はそんな安易的な事を考えていた。


今日も雨が降っている、

また、今日も雨が降っている、

あれ、今日もまた雨か、


高校最後の夏休みは色々な場所に出掛けた。晴れの日に。雨だと嫌がる人は多い。僕だって雨は嫌だった。でも、彼女に出会ってから雨を嫌がることは無くなった。寧ろ、楽しみにもなった。

しかし、今は違和感がある。もう夏休みも終わりに差し掛かっているというのに終業式に会って以来雨の日でもぱったり連絡が途絶えてしまった。これだけ連絡が無いと僕から連絡するのも少し後退りしてしまう。

『お前は馬鹿か早く手を打て』友人の言葉になんとなく背中を押されて

『日曜日に祭りあるんだけど行かない?』

普段彼女から連絡が来る事が多いだけあって少し緊張しながらメールを送信する。


「メールってこんなに緊張したっけなぁ……」

僕は送信後、枕に突っ伏し眠りに落ちた。
































9月1日、夏休みが終わり始業式。

木崎からのメールの返信は無いままこの日を迎えてしまった。気に障る事をしたのだろうか、僕は嫌な緊張に包まれながら学校へ向かった。


適当な話を聞き、この日は終わる。

クラスは久しぶり〜と明るい声もある中誰が痩せただの太っただの肌が焼けただの、アイツに彼女が出来た、アノコに彼氏が出来た、多種多様な噂話が回っていた。


帰り道、木崎のクラスに寄った。

「なぁ、木崎居るか」

木崎のクラスメイトに尋ねると、そのクラスメイトは少し俯き言い辛そうな顔をして答えた。


「木崎、病気で入院してるらしい。」


僕は少しの間、戸惑いはしたものの、直ぐに正気に戻った。木崎は入院、してるんだ。気に障った事をしたんじゃ無いか、と言う痞えが取れた気がして僕は少しばかり安心した。安心した自分に苛つきさえ覚えた。


「どういう病気なの」

「それが、俺らには教えてくれなかった。」

「なんだよそれ……」

木崎が病気、それなら合点が合う。この長期間、メールが無かった事。メールが送れない状況って事はそれ程重病なんだろう。僕は無駄に冷静だった、自分でも怖いくらいに。僕は木崎のクラスメイトにありがとう、とだけ告げ学校を出た。


何も考えないまま、電車に乗った。僕の携帯には一通のメールの着信。


目に飛び込んだのは"木崎菜々花"。



『松原君、今日もごゆるり旅やで〜〜!!今日は特別にお目当て教えちゃう。私達の地元の市民病院の809号室まで来てな!ではでは待ってます!』

















なんだよ、木崎。

今日は"晴れ"だよ。




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