プロローグ
いつからだろうか、学校という場所が恐くなったのは。
いつからだろうか、人という存在が苦手になったのは。
「なーつきくん、おっはよー」
「おはよ」
「えへへ、朝からあえるなんて嬉しいな」
「へ? うん、俺も。って、あれ? とっしーは?」
「後ろ」
遠野 夏輝。13歳、ただの中学1年生。文芸部に所属。頭は普通で、特別運動ができるわけでもなくホントに平凡な日々を送っている
「ざけんな……!」
血相を変えて走ってくるのは、とっしーこと中山 俊稀。同じクラスの、ちょっと……いや、かなり変わった変な人。不良なんだよね。めちゃめちゃ恐いんだよね……。あ、そうそう紹介忘れたけど最初に喋ったのは桐谷 直。通称、なおちゃん。両方、俺の友達
「僕なにも悪いことしてないっ!!」
「ケンカ?」
「ううん、ゲーム」
「ゲーム?」
息を切らして俺たちのとこにくると、とっしーがカバンをなおちゃんに差し出した
「負けたほうがカバンを持つってやつ」
「ははは、仲いいね」
「お前は楽してていいよなあ」
夏場でもないのに、汗だくなとっしーをみるとちょっと可哀想にみえる。顔色を一切変えない、なおちゃんと友達ってだけで凄いよ。小学校から一緒にいるんだっけ
「とっしー、じゃんけん弱すぎ」
「う、うるさい!」
「お疲れさま」
なおちゃんって、ずるい。愛想振りまいて、周りをあっという間に和やかにしちゃうんだから。それに、あんまり男の子って感じしないんだよね。可愛い顔してるからかも
「飲み物くらいおごってあげる」
「上から?!」
ぐるんと周りながら笑顔を振りまいてそういうと、渡り廊下近くで飲み物を買って差し出した。憎めないっていうか、なんていうか。とっしーと俺以外には滅多に懐かないけど笑顔だけで犯罪。可愛い子は罪だ。むしろ、可愛いっていわれて動じてないなおちゃんって一体……
「夏輝くんは?」
いろいろ考えてたら、なおちゃんの声で我に返った
「え?」
気持ちだけもらっておくよ。頭をぽんぽんしながら、いった。残念そうな顔をしながらそっかと呟くと小さくため息をついた
「だって、なおちゃんのお金なくなっちゃうでしょ? それに、可愛い子にそんなことしてもらうなんてダメだよ。俺が買ってあげる」
「ホント?」
「うん、どれがいい?」
「これ!」
みかんジュースを指差すと、嬉しそうな顔をして回りだす。仕草がちょっとだけ女の子なのはどうしてかな? そんなに、嬉しいんだ
「お前、それ好きなの?」
「好きだよ」
「ふーん」
なおちゃんは甘いものが好きで、みかんジュースがお気に入り。それなのに、体型が全く変わらない。どういう生活してるんだろうな。あんまりご飯食べないとか? みたまんまじゃん。みかんジュースを渡しながら、俺もお茶を買ってボーっとした
「ありがと、夏輝くん」
ぎゅーっと抱きしめると、ベンチに座った。なんか花がみえる、気がする。なんでだろう。考えてもわからないから、いいか。別にそんなことは
「お、おう」
なんか、ここにいると眠くなってきた……。うとうとしながら、空を見上げる。ああ、綺麗な青空だなあ。楽しかった時間が、地獄の時間になるなんてこのときは思ってもみなかったんだ