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誰でもできる学校サボリ術(親が共働き編)。
いつものように朝起きて朝食を摂り家を出る。その際家の鍵を持っていくことが必須条件。でなきゃ窓から入れ。コンビニかどこかで時間を潰し、家族全員がいなくなる頃合いを狙って帰宅。学校からの電話には鼻を摘まんで家族の人のフリをして「息子は体調不良」と言えばいい。んでもって家族の誰かが帰ってくるであろう時間よりちょっと前に家を抜け出し鍵を閉め、また時間潰しへ。同級生の目から逃れることも忘れるな。そしていつも帰る時間帯に家に戻り、さも今日も学校で勉学に励んできたぜという風に振る舞う。
終わり。
夕方五時の現在に至る。
「いいぞ……戻ってきた」
家に滞在していた時間をフル活用して書き上げた枚数は10枚きっかり。昨日までの不調が嘘のように息を吹き返した。
今晩は徹夜して、明日は仮病で学校を休み、また時間を確保する。連休になるが、心身ともに全然休めていないのでノーカウント。この分は後々ズル休みで取り返す。
床に就いたのは朝の六時。
七時くらいに起こしにきた妹に体調不良を訴え、連休は無事達成された。84!
がっつり寝て起きたのは真っ昼間の正午だった。頭が動かずに二度寝。起きる。目覚まし時計が示す『PM6:12』に仰天する。マジで体調不良の一日みたいじゃん。
「今夜は眠れないな……」
冴え冴えの目。瞼を擦って二日連日の徹夜を決める。しかも明日は休まないからオールでの登校となる。まあ学校で寝ればいいか。
いつの間にか三章、四章も駆け抜けて最終の五章まで辿り着いた。やっぱり起承転結の転辺りから速度がびゅんびゅん加速する。結なんかもう瞬殺だ。明後日には終わる。
100枚超えるかな? と思っていたら、99枚で止まった。キリがいいのか悪いのか。いい具合の疲労感、迫るベッドを朝日が遠のかせる。
「連休乙です、先輩!」
「早速いじらないでくれるかなミケ」
登校して席に着く前に瑠璃兎が顔文字っぽくニヤつきながら俺を指差す。可愛く無かったら一発殴ってたところだ。
「いくら切羽詰まってるからって、連休は思い切りが良すぎやしませんか?」
席に着くなり瑠璃兎の耳打ちを受ける。
「いいんだよ、テスト終わったし。それに締め切りも迫ってる」
「学校生活舐めてますねぇ」
「お前に言われたくない」
テスト中、鉛筆転がす俺の隣でぐっすり眠っていたお前の姿を俺は忘れない。
「……それからもう一つ、よりは先輩から聞きましたよ?」
ニヤニヤから一転、神妙な雰囲気を醸す。
茶化していいことといけないことの区別くらいはつくんだな……お兄さん、ちょっと安心したよ。
「神子さんが元気ないのは全部患井さんのせいだって!」
「あ、ああそうだけどそんな言い方してんの!? あと声潜めて!」
ぐるり、とクラス中の首が俺の方に回った……ような気がした。ヤジウマ精神丸出しだな。なまら小さい声で喋ってやるべや。
「……へへ、少し盛りました。でも要約するとこういうことですよね?」
「……ああ。俺が悪い。ところで、よりは先輩と何か話し合ったか?」
「……話し合いましたし、仲直りの作戦も練ってます。ご安心を。近日公開!」
「……待ってるぜ」
他人任せの情けなさは重々承知の上で言う。心強い。
がらがらがらっと立てつけの悪いドアが横に引かれ、マスク姿の神子が登校してきた。
「神子さんおはよう……あちゃあ、悪化してますです」
「はは、拗らせちゃったかも」
胆の絡まった声で自虐するように言う。そしてその目が俺を捉えたとき、ふっ顔が無表情に接近した。
「あ……来たんだ」
覇気のない語調に悪調を顕著に示す蒼白な顔色。問うまでもなく風邪を引いていた。
……こんなときまで微妙な空気を引きずって何も声を掛けないのは男としてどうだ、幼馴染としてどうだ。多少のやりにくさは看過してみろよ。
「お前、いつから風邪引いてた?」
「……週初めくらいから調子悪くってね」
大きな咳をする。俺が休んでいた間に風邪を引き、拗らせたってわけか。
「そっか、お大事にな」
「うん……」
元気がないのは相手が俺だからか、風邪を引いているからか。どっちもかな。
「……ううん」
これは困ったものですなあ、と瑠璃兎が呟いた。
帰宅後も寝ずに執筆へ入り、無事に100枚に達し、作中最大の壁を越えようかというところで――躓いた。
というか書いていて、山場の盛り上がりに欠ける感じに気付いてしまって髪を掻き毟る。
「後回しにしてたそういえば……」
まあしょうがない、優先すべきは勢いだ。この勢いを止めてしまっては俺はもうこの作品を完成させることができないとさえ思っていた。
面倒臭がらずに直すと決めて「とりあえず」埋めて先へと進んだ。五章終わり。ということはつまり……。
「ここまできたぜエピローグ……!」
エピローグ用のワードファイルを作成する。最終盤は感慨深い。この作品との別れが近付いているのだと思うと、中盤であれほど拒絶していた身体が考えを改めてどこに隠していたのか分からない執筆欲を開放する。
物語を締めくくることは始めることと同等にカロリーの高い作業だ。勢いを伴っているという面で見れば難しさは始めが上回るものの、自分を納得させるという意味では後者の方が難易度は高い。
最後の最後でここまでの戦いを無駄にしてしまわないよう、締めの一言には気を遣う。かと言ってやっぱり練るでもなし、あらかじめ準備してあるでもなし。
成り行きの、行き当たりばったりの思いつきで締める。
プロローグ並みに短いエピローグは一時間程度で締めに至り。
『僕のハーレムは、今日も笑う。』
大団円を迎えた主人公たちの物語は、一旦ここで締めくくられたのだった。終わった!
「ぐふぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
いつどんなときに用いれば正しいのか分からない謎の叫び声を発しながら、背中からベッドに倒れ込んだ。それは永遠のように続いていたトンネルを抜けて久方振りの日光を浴びたように心地良く、快感が爆発する。
初稿が終わったあとのこの感じ、最、高……。
夏休みの宿題終わったときの解放感なんか道端の石くれみたいに思えてくる。
「長いのはここからだ……」
まだ寝るな俺。余韻もそこそこに飛び起きる。
初稿で満足して、その後やる気が途切れてしまうのがいつもの俺。しかし、今作はそういうわけにもいかない。本番はここから、というくらいの意気込みで改稿に臨む。
最終日ブーストで15枚を積み重ね、総ページ数は114になった。
地獄の改稿編へ突入。




