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5話 後処理と突然の……

フィーリアとジュンジに大猪ボスの解体を任せた俺と波瑠はとりあえず、突然の頭が爆発したことに唖然とした表情で固まっている少女のもとに小走りで駆け寄る。


「おーい、大丈夫か?」


近づいても心ここにあらずという感じで放心していたのでとりあえず声をかけてみる。


「はっ!だだだだだ大丈夫です。はい!!」


うん、どうやら相当混乱しているようだ。


「とりあえず、落ち着け、な!ほら水!」


少女は素直に受け取って水筒に入っていた水を一気に飲み干す。どうやら相当喉が乾いていたらしい。


「落ち着いたか?とりあえず、なんであんなことになってたん……」


きゅるるるるるる。


俺の質問を遮るように可愛らしい音があたりに響く。俺は溜息をつくと、顔を赤らめて俯いている少女に、


「とりあえず、レストランに行くのは確定だな…とりあえず立て。飯はおごってやるから…」


と言いながら少女は力が入らず立てないという感じだったので手を差し伸べる。

「飯をおごる」という言葉を聞いた少女の顔が目に見えて明るくなる。

そして手を取り少女が立ち上がる。

すると思ったほど小柄ではないことがわかった、さっきは150センチには届かないだろうと思ったが、一瞬しか見れず、大猪と比較してしまい小柄に見えたようだ。それでもやっぱり身長は155センチにはとどかないぐらいだろうか。

隣で俺が少女にかけた言葉に波瑠が驚いた顔をしてるけど俺ってそんなに小さい男に見えたのかなぁ。




 というわけで、准次とフィーリアが猪を解体し終えて、合流し、事情を説明して、レストラン…に行こうとしたところで、


「和人、お前、金なんか持ってたのか?」


…はっ、そういえばそうだった。昨日この世界に来たばかりの俺が金なんて持ってるはずもなかったからだ。


 波瑠のあの顔の理由はこれだったのか…。



 というわけで、まずはギルドにより、スライムの素材クエストとを達成させ、さっき狩ってきた猪の素材の買取りを依頼する。報酬はすべて浩司以外で山分けにでもしようかな~。

 あいつは…うん。もう少し放置しておこう。



 ここで少し、この世界の通貨について説明しておこう。このあたりの地域ではセドンという単位が使われている。昨日宿屋で食べたパンと肉たっぷりのシチューの晩飯が5セドンだったらしいから1セドン=100円ぐらいだろうか。

 ちなみにスライム素材と猪素材の報酬を5人で分けて一人当たり50セドンだった。


なお、5等分にしたのは結局、浩司の分もとっておこうということになったからだ。

なお、あの大猪はなんとパーティー用のCランク昇格の指定モンスターだったらしく、換金カウンターで討伐証明部位を冒険者カウンターに持っていくように勧められた。

Cランク昇格の指定モンスターの割にそんなに素材が高くなかったのは、この辺りには大猪の皮や骨等を加工できる職人が数えるほどしかいないのに加え、定期的に大猪が森から出てくるため、肉以外の素材が有り余っているためだ。

おまけにその肉も食えないほどではないが食べ物に困っていないときに積極的に食いたいほどのものでもないときたものだから、大猪には困ったものである。


補足だがランクアップ指定モンスターは何種類かいるらしい。つまり、パーティーだと大猪あのレベルの魔物を倒せばCランクに上がれるのだ。


 というわけで、俺、波瑠、准次、フィーリアはC級冒険者に昇格したのだった。


F級からC級に昇格とか…しかもこっち来てからまだ三日立ってないんだぞ…。


 蛇足だが浩司は依頼を受けるときにちゃっかりパーティから外しておいたので一人だけE級のままだ。


 俺たちは換金を済ませ、縛りつけたままだった浩司を拾って少女に昼飯をおごるために手頃な飲食店に入ると、なんと義人が、飲み比べをしていた。


『ん?おお、お前ら!ここにいるってことはあいつは無事に倒せたんだな?じゃあ前らも飲め!』


とは某S級冒険者のセリフである。


俺たちにあんなものを押し付けといて自分だけ酒盛りとか…。

浩司は自分が縛られたことを思い出して少し涙目になっている。


とりあえず俺たちは適当に端っこのほうの席を陣取り、


「腹減ってるんだろ?おごるから好きなだけたのめよ。」


と言いながら、各々自分達が食べるものを注文する。

少女はそれを聞いた途端に表情がぱあっと明るくなり、本当に容赦なく大量の料理を注文し始める。

 なお、少女が食べた分の食費は、浩司にも分けるつもりだったはずの金が消えるぐらいとだけ記しておく。


『浩司に分け前があったことは黙っててくれ!』


とは誰の言葉だったのだろうか?


よく考えたら50セドンって、武器も新調しないといけないから、余裕ないんだよな~。

隣では5人で食べても余るほどの量を平らげた少女はとても幸せそうな顔をしている。


「……おい、そろそろ自己紹介をしてもらえると助かるんだが?」


すると少女は自分がいる状況を思い出したように自己紹介を始める。


「はい、え~と。とりあえず、ボクは藍川あいかわ 優希ゆうき。高2。気が付いたら森の中にいたから、自己紹介って言っても名前ぐらいしか言えない。ところできみたちは?」


高2なのか、その割には背が小さいな…


優希が自己紹介して、自分達が自己紹介していないことに気付いたみんなが、各々自己紹介を終えていたので、俺も軽く自己紹介をして最後にここが日本ではなく異世界だということを優希に告げると、


「やっぱり。」


少女はなんか異世界ときいて嬉しそうだ。


「とりあえず、なんで大猪にへばりついていたのか説明してくれ。」


「えーとね、学校の帰り道に車にひかれて、気が付いたら森の中にいた。それであたりを観察してたら近くの木に林檎みたいな実がなってて上って実を食べてたの。そしたら強い風にあおられてたまたま下に現れた猪の背中に落っこちた。あとはたぶん知ってる通りだと思うけど?」


「………」


俺たちはお互いに顔を見合わせる。


「ごめん、どこから突っ込めばいい?」


代表して波瑠が優希に質問する。


「ん~、まあ、実際起こったんだから、しょうがないんじゃない?」


「「………」」


浩司が何か言おうと口を開けたが、声を発することはなかった。なぜなら……


バタァン


「おい!義人はいるか!」


急に店のドアが勢いよく開け放たれて、酒場で浩司と飲み比べしていた男が勢いよく入ってきた。


……今更だけどそういえば浩司って未成年じゃなかったっけ?まあいいか、ファンタジーの世界だからその辺はゆるいってことで(実際はこの世界では大人として認められる年齢が15歳なため、その年から酒がを飲んでもいいということになっている)。


っとそんなことはどうでもいい。今は入ってきた男が言っていることが肝心だ。なんでも居場所がわかるS級以上の冒険者を国が緊急召集しているらしい。

 なお、この村、コノワ村は一応バルナ小国群に加盟しているらしい。まあ、辺鄙へんぴな場所にあるため、忘れられがちなんだそうだが。

 で、そのバルナ小国群に加盟している比較的大きな国がピンチらしい。何でも、めったに人里に姿を現さないらしい天人族と鬼人族が現れて、喧嘩してるらしい。

 喧嘩と聞くと、そんなことでいちいち呼ぶなと言いたくなりそうだが、それを聞いた店の客の様子が変わる。

 なんでも天人族と鬼人族は一人一人がS級の冒険者よりもはるかに強く、一人で亜竜であるワイバーンを余裕で倒してしまうらしい。しかも両者とも一族特有の魔法があるらしく、使い手によって差は出るが、小規模の村なら半壊させるぐらいの威力はあるとのことだ。

 扱いがうまい者はちょっとした町程度なら消しとばせるほどの威力になるとか。

記録に残っているだけで過去に数十個の小規模な町や村がやられているらしい。

 補足だがワイバーンは平均的なS級の冒険者のパーティで何とか倒せるレベルだ。

 放っておいたら小さい国なら馬鹿にならない被害をこうむることになるには間違いなかった。

そして、都市国家や都市国家ではないにしても自治権を持っている町や村の集合体であるバルナ小国群にとって死活問題になることも間違いなかった。

ただ、天人族も鬼人族も個体数が少なく滅多に人里にも表れなかったためあまり問題視されなかったそうだ。

何せ、前に現れたのが数十年前のことらしいからな。 


 場所はここから北東に走らせて3日程度。ただこれは途中何事もなく、馬をフルスピードで走らせ続けた場合の時間だ。始終馬を全速力のノンストップで走らせるなんて普通の手段では不可能だ。

近くにいる冒険者を探せばいいだろうと思ったが、居場所が特定できるのはここが一番近かったらしい。理由は単純に、人口密集地に近づけば近づくほどモンスターの強さが落ちるからなのだそうだ。S級冒険者なんかになったら平気で何か月も森にこもってる連中とかいるらしい。SS級は言わずもがな。

大国なんかになると、常に何人かのs級冒険者を雇っていたりするらしいが、この国は所詮小国の寄せ集めなのでそんなことはできない、さらに近くの大国にS級冒険者を貸してくれと頼めるほど隣国とのか関係は良くない。

 それを聞いた義人は立ち上がり、俺たちのほうをみて、


「そうか、おい、お前ら、俺が面倒見れるのはここまでみたいだな。俺は北のほうでちょっと暴れてくるわ~。もう会うこともないもな。天人族がいるんだったらちょうどいいしな。」


そういうと店を出て行ってしまう。なんだか天人族と聞いてとてもうれしそうだ。

俺たちはしばらく義人の軽さにあっけにとられていたが我にかえって慌てて追いかけて出ていくがすでに表には義人の姿はなかった。


「……俺、結局ほとんど何にも聞いてねえ。」


というのが俺、夜神 和人の素直な感想だった。

 ちなみにそのつぶやきを聞いていた波瑠と浩司も深く頷いていたのは言うまでもない。優希にいたっては、当然といえば当然だが「結局誰?」という顔をしていた。

 余談だが飯代はすべて義人が払ってくれていた。


よかったな浩司!

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