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4話 ことの結末

  そう、俺は見てしまったのだ。大猪の背中にくっついて離れない小柄な少女の姿を。どれだけ高く年齢を見積もっても十代前半というところだろう。

 他の3人もその存在に気が付いたのか、どうしていいかわからず固まっている。というかそれ以前に止まるまることを知らない猪に接近戦タイプしかいないこのパーティは相当不利なようだ。

 そんなことより、このままだと猪は村へ一直線だ。


何とか……くそっ!なんでこのメンバーにはこう、弓とかいないん……あ。


 そこまで考えたところで波瑠と目が合う。彼女は魔法使いだ。回復重視だが一応攻撃魔法や移動阻害魔法などの補助魔法も使えるはずだ。まあ、こっちに来てから間もないそうだからあまり期待しないほうがよさそうだがまあ、足止めぐらいはできるだろう。

 俺がそんなことを考えていると、波瑠が俺の心を読んだかのようにむっとした顔のまま詠唱を開始する。


「『気高き大地の英霊よ!我の名は波りゅ……」


……噛んだ。


 幸い大猪は村の柵にぶち当たったところで何とか止まったようだ。その衝撃で少女はつかんでいた毛皮ごと振り落とされる。

 ただ、猪はすぐに体勢を立て直しまた俺のほうにまた突っ込んでくる。


くそっ!!!なんで俺ばっかり…

…くそっ、一か八かだ。


 俺は涙目になりながらもとっさに、集めたスライムの外皮を自分の前方にあるだけ投げる。そして剣を横向きに構えて猪が突っ込んでくるのを待つ。

そして猪がスライムゾーンに突入して足を滑らせて自分で方向転換ができなくなったところを見計らって、












俺もそこに突入し転ぶ。


 他の奴らは口を開けてぱくぱくさせているが、知ったことではない。これが狙いだ。俺は持っていた片手剣を水平に保ちながら猪の足の下に再び潜り込もうとする。するとどうなるか、答えは簡単だ。剣が猪の脚に引っかかる、剣は猪の足に浅く食い込み切り傷を負わせる。武器の性能と俺の筋力の問題で切断するまえにはじかれてしまったが、初めてやるにはまあ上出来だろう。自分をほめてやりたい。


 よし、これをあと何回かやれば足がやられて猪は動けなくなるは……。



ガラン。



 俺がそんなことを考えていると、突然辺りに嫌な音が響いた。見ると俺が持っている剣の先20センチほどがなくなっている。足元にはその、なくなった物体と思わしき物体が転がっている。

 猪の目が俺をとらえてキランと輝いたように見えた。背中を冷たい汗が流れた気がした。


来るッ!


俺はとっさに目をつぶってしまった。


「……?あれ?」


いつまでたっても猪が突進してくる音が聞こえなかったので、恐る恐る目を開けてみる。

みると、猪はさっきの場所から動いてない。突進してくる気配もなさそうだ。


俺はそれに安堵し一瞬だけ、気を抜いた。

その瞬間、唐突に口を開けた。そして……


「いっ!?」


 火球を吐き出した。俺はとっさに盾を構える。


バゴォオンッ!!


「熱っ!!」


完全に隙を突かれた俺だが盾はかろうじで直径50センチはあろうかという火球を受け切った。だが、馬鹿正直に真正面から受けてしまったので受け切った後の盾はもはや見る影もなかった。同じ攻撃をもう一度くらったら今度こそ砕け散りそうだ。

 一方猪はそんなこと知らんとでも言うように火球を防がれたことに怒り狂っているようだ。そして怒りのままに突進して来ようとする。


「『気高き大地の英霊よ!我が名は波瑠!彼の獣を撃ち滅ぼすため、我に力を与えよ!』ウォーターボール!」


 波瑠の放った水球は今まさに猪が放とうとしていた火球にぶつかり、ものすごい水蒸気を上げながら口の中に押し返した。猪はその衝撃で口を閉じてしまう。

 次の瞬間、







ドッカァァアアン!!!









 猪の首から上が吹き飛んだ。それには今度こそ噛まずに詠唱成功してドヤ顔を決めていた波瑠も何が起きたかわからずその顔のまま固まっている……。


 一番最初に何が起きたか理解したのはジュンジだった。


「……そっか、水蒸気爆発!」


それを聞いたみんなが納得した顔になる。説明はその一言で十分だったようだ。


「ま、まあ、予想通りよ!」


「「嘘つけ!」」


俺と准次が突っ込みを入れる。


「そんなことより、まずはあっち。」


フィーリアは波瑠を軽く受け流して猪の背中にひっついて現れた少女のほうを指さした。


「そ、そうだな。」


俺は頷く。


「あと、大猪アレの処理もね。じゃあ、とりあえず、僕とフィーリアであの猪をばらしてくるからその間にあの少女に簡単に事情を聞いといて。」


「ん、了解。」


ジュンジが付け足し、振られた役割に波瑠が軽く頷く。

 なお、ジュンジが二手に別れてまで猪の解体を優先させたのは、放っておくと血の匂いに誘われて森の奥から、この辺では見かけない強めのモンスターがやってくるからである。

 余談だがこのあたりにあまり強いモンスターが生息していないのだがそれは、このあたりに生息しているモンスターがスライムのようにやられても血の匂いをまき散らさない種類が多いうえ、あまり狩場として人気がなく、滅多に血の匂いが漂わないからだったりする。奥から大猪が出てくることもめったになかったのである。…最近までは。


 こうして、俺たちは各々に振られた役割をやるために動き出すのだった。


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