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ファンタジア・ホライゾン  作者: 日暮 十四(ヒグラシ)
第二章 バルナ小国群 クルディス王国編①
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17話 作戦スタート!

誤字脱字、よくわからないところや矛盾点などがあったら報告していただければ幸いです。

浩司が街を出発してしばらくがたったころ、ララは街の外周を目指して走っていた。隣にはジュンジの姿もある。


さかのぼること数分。


「泣くのと、連れ去られるのとどっちがいい?」


『は?』


思わず声を上げる一行と、ぽかんとなりどう答えていいのか判断に困るララ。

とにかくいえることは、和人に突き刺さる視線は冷たい。


「あんたの趣味がそこまでだったとは…趣味のことは置いておいても、今は自重するべきよ?」


起こると声をあらげる波瑠が今回は静かにでも、ごごごごご、と聞こえそうなほどに声にどすが聞いている。



「いや、趣味じゃねぇって!ハーゲルは親バカだからララがピンチだと思わせて、戦線離脱させるんだって!」


ー効果が高そうなのは連れ去られるほうだけど...それに危険も少ないし...。

誤解を解きながら話を進めるためにボソッと付け加える和人。


「確かに効果は高そうだけど、誰が誘拐犯の汚名をかぶるんだい?」


和人のボソッと付け加えた提案を聞き逃さず、的確に問題点を指摘するジュンジ。

仮に誰か知らない人を誘拐犯として作ったとすれば

これだけ大勢いて全員無傷にも関わらずララだけ連れ去るという少しおかしな理論を押し通さねばならない。


「そりゃあ和人でしょ?」


和人はもちろん抗議の目を向ける。だがこういわれるのは想定済みだったらしく、用意していた文言を告げる。


「カヨワイオンナノコを怪物に差し向けるわけにはいかないだろ?ってことで波瑠!頼む!」


「ちょっと?初めの部分が片言なんですけど?」


そういわれてさっと視線を逸らす。

それでも嫌と言わないあたり、まんざらでもないのかもしれない。


「…本人はそう言ってるけど、どうするんだい?片言なのはともかく、俺もそれに賛成かな。」


ジュンジがそう言ったことにより、全員の視線が波瑠に集まる。


「……っていうか、誘拐犯にならなくとも、追いかけていったじゃあダメなの?」


その手があったかとばかりにみなびっくりした顔になる。


「全く、案出すならこれぐらい考えなさいよね。それと、ジュンジ!あんたはこっちに付いてきてもらっていいかしら?」


「どうしてだい?カマベル(あいつ)と戦うんだから戦力は一人でも多いほうがいいんだけど…」


「か弱い女の子が単独で誘拐犯を追いかけるのはおかしいでしょ?」


「う~ん…」


そこで唸るのは、やはり誰も波瑠のことをか弱い女の子だとは思っていない証なのかもしれない。もちろん良くも悪くも。


その後しばらく二人で何事か話していたが一分もしないうちにジュンジが折れ、カマベルから離れる組が波瑠、ララ、ジュンジの三人、ハーゲルを説得して連れてくるメンバーが和人、フィーリア、優希の三人ということになった。



☆☆☆☆




「じゃあ、あとでね。」


そういって離れていく波瑠たち戦わないメンバー。

彼女らが街のほうへ消えていくのを見送り、和人が告げる。


「じゃあ、俺たちも行くか。」


「一番ビビってたのは和人だよ?」


大丈夫?というようにフィーリアに告げられる。


「だ、大丈夫だって!なんたって一度真下に行って逃げ延びれたんだから!!」


そういった和人の足は震えている。


「まあ、腰が抜けてたところを助けたのはボクだけどね。」


「しーっ!!」


そこまで言って一つ咳ばらいをし、付け加える。


「運も実力のうちだし!!」


一行はほんの数十秒、一分も立たないほどの間、ひと時の日常の会話を繰り広げる。

戦闘前でも通常運転なのはみな、緊張していることを周りに、あるいは自分から隠したかったからかもしれない。


「……」


その後、ほんの数秒、十秒に満たない時間の静寂をおいて、改めて、告げる。


「…行くか。」


「うん、行こうか。」


「ん、準備万端。」


そう告げた三人の顔は、これから怪物と対峙するにふさわしい、戦士の顔が姿を現しつつあった。



☆☆☆☆



場所は変わってハーゲルと、ファーベルの相対しているまさにその場所、ファーベルは、ハーゲルに無表情のまま刃を向けている一方、ハーゲルは、ファーベルに自分から刃を向けることはなく、受け流すだけにとどめているだけのようだ。

はたまたカマベルだった怪物はというと、今もなお動けない死体となった兵士たちを己の手に抱えた自らの顔のほうへ、口へと運んでいる。しかし、首と胴体がつながっていないので、喰われた死体たちは、ただの肉塊となり、地面に落下することとなる。もうすでにその場にあった死体の半数、9人の死体をむさぼり、十人目に手を付けようとしていた。喰われた死体の中には兵士だけでなく、前に出すぎ、瓦礫の下敷きになり、逃げ遅れた住民のものも含まれている。


『ふーむ、こんなものか…』


十人目の人間をむさぼり終わったカマベルが、そう告げる。


『ひとーつ、ふたーつ…』


カマベルはゆっくりまだ残っている死体の数を数え始める。

辺りには、いまだ、男女問わず、8人の死体が転がっていた。


『ななーつ、やぁーっつ!ふむ、8匹か、喜べ貴様らぁ!!貴様らには、カマベル王国住民第一号になることを認める。さぁ、起きるがよい!!』


カマベルがそう言い終わったとき、あたりに散らばった、カマベルに食われていない死体たちから、うっすらと、黒色のもやのようなものが立つのをファーベルは見逃さなかった。


「なにを…」


「……」


対するファーベルはさっきまでの好戦的な感情は引っ込み、ただただ無表情に剣をふるい続ける。


「…どうやら何も言っても無駄らしい、ここからは殺す気で行かせてもらう。それにあっちも時間がなさそうだ。」


カマベルに視線を一瞬だけ向け、再び、ファーベルに視線を向けたとき、先までとは少し、違った雰囲気を醸し出していた。



☆☆☆☆


三人が建物のすぐ近くに来たころ。

そこは、和人が数十分前に見た光景程、生ぬるいものではなかった。

辺りには人間だったと思われるものが散らばり、建物の奥からは斬撃音のようなものが響いている。

そして、何より衝撃だったのはその斬撃音以外に、人間のうめき声のようなものが、あたりには響いていた。うめき声は一人のものではなく、建物の中や外、あちらこちらから聞こえていて、場所を絞ることはできない。


「ぅぅぅぅぁぁぁ....」


「おい、逃げ遅れた人がいるのか?助けないと…」


そう言いかけた和人の言葉をフィーリアが遮る。


「ちょっと待って、今回の目的はハーゲルを離脱させること、それに、様子がおかしい。」


彼女の方を見ると耳はいつにも増してピンとなっているのが見えた。

野生のかんというやつなのだろうか。

これは信用するべきかもしれない。

俺は良心が一瞬チクッとするのを耐え、前を見据える。そしてそこで思い出した。


「フィーリア、耳隠さなくていいのか?」


初めて会ったとき、たしか彼女は耳を隠していた。まあ案外簡単に見せてくれたが。


「いい、隠してたのはその方が都合がいい時があったから、それにこの方が早く危険を察知できる。」


そういったフィーリアの耳が動く。

耳が動くのを初めて見た和人はこんな状況にも関わらずかわいいと思ってしまったのはここだけの話にしておく。


このあたりまで来るとうめき声以外にも、金属音なども聞こえてきて、頭では分かっているつもりだったが、改めて今までずっと戦闘が続いていたことを思い知らされる。


「じゃあ、和人、立案者なんだからハーゲルさんをうまく丸め込んできてよ?ボク達は補佐に回るから。」


「ん、任せた。」


「...やっぱり俺だよなぁ....じゃあ補佐は任せたぞ!」


そういう和人の言葉は最後だけキリッとしていた。


す、ストックが....

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