15話 決別
どーも、最近新しいネタが思いつかず、どうしようか悩んでいる者です。
本当にどうしよ…
優希が開けた穴は長く、一向に出口が見えない。
もちろん途中に明かりが設置されている訳では無いので手探りで進むしかない。
手探りと言っても穴自体人ひとりがなんとか進める程度の大きさだから迷うことは無い。
強いて言うなら、和人は前を歩く優希に置いて行かれず、かつの変なところを触らないように努力するぐらいだ。
しかし、中々見えてこない出口に和人がぼやく。
「お前、どんだけ掘り進んだんだよ・・・というかよくあんな俺の近くで地上に出られたな・・・」
「そうぼやかないでよ、もうすぐ前から光が見えてくるはずだから・・・まあ、和人のすぐ近くで出られたのは私のかんかな。まあ、カマベルの振動すごかったから、大体の場所はすぐわかったけどね。」
こいつ、す、すげぇ…
一歩間違えたらカマベルに見つかるような、そんな荒業だ。
それに比べて和人は、逃げ出すことすらできずにただただ腰をぬかし、敵とはいえ人間が捕食されるtころを見ているだけだった自分が恥ずかしくてたまらない。
驚愕と恥ずかしさに押し黙り、そのままさらに数秒ののちに前に光が差しているのがわかった。
「やっと出口か…、で、この穴はどこにつながってるんだ?」
「うーん、門の近くだよ」
その後、たどり着き、上を見上げる、和人がちゃんと立てば目線のあたりに地上が広がっている。
「じゃあ、先に出るね。」
そういって忍びのごとく手もつかずに飛び上がる優希。
毎回思うのだが優希本当に自分と同じ日本から来たのか疑ってしまう。
「「うわぁ!!?」」
優希が飛び上がった直後、頭上から複数の悲鳴とごんっという固い者同士がぶつかり合うような音が聞こえた。ただ、聞こえてきた悲鳴が聞き覚えのある声だったし、何が起きたのかある程度察することができたのであまり驚きはなかった。
「大丈夫か~」
一応声をかけながら和人も穴から這い出る。
さ、さすがに優希みたいに手を使わずに出るとか、無理だからねっ!
するとそこには、予想通り、おでこを抑えながらしゃがみこんでいる波瑠と後頭部を抑えながら、申し訳なさそうにしている。優希、そしてそれを苦笑を浮かべながら見守っている、ジュンジ、浩司、フィーリア、ララの姿があった。ただ、ララだけは苦笑いに少し暗い影が差しているように見えるのは気のせいではないだろう。
姿が見えないジェフさんんは無事他の町民たち混じって逃げ出せたのだろうか?
ありえなくはない話だ、地上も見ずに飛び跳ねたらそこにいるやつに頭突きをかますことになるということは。
ただ、上に誰かいれば影ができるはずだし、すごく絶妙なタイミングで穴をのぞき込んだことになるということは優希の代わりに弁解しておく。
「な、なんでこんな怪しい穴から、出て来るのよ!?」
波瑠がようやく立ち上がって、詰め寄る。
「それは……この穴、優希が掘ったからだよ…」
和人が少し遠い目をしながら答える。
「はぁ!?ってかどこに通じてるの?」
「あの化け物の真下あたりかな…」
答える和人の視線は遠いところから帰ってこない。
「……うそでしょ。」
「本当だよ、俺がここから出てきたのが何よりの証拠だ。」
「……そういえば、和人、いないと思ってたら屋敷の中に残ってたのか…」
ここで浩司が口を挟む。
「気付いてなかったのか!?」
軽くショックを受けながらようやく戻ってきた視線を浩司に抗議の意味を込めて向ける。
ちらっと視界に移った他のメンバーの顔が何とも言えない顔をしていたのは、追及すると俺の傷が増えそうなのであえて気づかないふりをすることにした。
「この穴の先で、父さんが戦ってるんですね?」
ララのその一言で、たった数分の間に消えてなくなってしまっていた緊張感が戻ってくる。
彼女は今にも穴に飛び込んでいきそうだ。
「ちょっと待て!一人で行っても被害が増えるだけだ!!」
そんな様子を見て慌てて制止する。
「そんなこといったって!!せっかく再会できた自分の父親を黙って見殺しにできますか!!?」
出会ってからまだ数日の時しかたっていないが、彼女の叫びが以下に必死で、悲痛なものかは、その場にいた全員が理解できてしまった。もちろん、そこにどれだけの覚悟が含まれているのかも。その声音にはだれも何も言い返すことができない。
優希は和人を助けに来た。自ら危険に足を踏み入れて。それなのに、こんな自分の半分を少し過ぎたぐらいの少女が必死に叫んでいるにも関わらず、俺は何もせず、ただ見ているだけなのか?
頭の中ではそんな考えが巡っていたがそれでも和人には『行こう』の一声が出せない。
目の前で自分と同じ"人間“が喰われる光景はそれほどまでに衝撃的で、本人の心をむしばんでいたらしい。
「行こう。」
初めに切り出したのは、優希だった。
皆の視線が優希に集まる、が、誰も声を発しない。
「助けに、行こう。」
皆の沈黙を破るように優希が再び今度はさっきよりもはっきりといった。
そこまで言われても、和人には声が出ない。
波瑠、ジュンジは他のみんなの顔をうかがい、フィーリアは何も言わず、ただ無表情を保っている。
「しゃーない!助けに行くわよ!ついでだとしても私たちはあのおっさんに助けられたからね!」
「僕も行くよ。」
「私も、行く!」
初めに沈黙を破ったのは波瑠だ。それに続いてジュンジ、フィーリアもそれぞれ参加を表明する。
「……ぇぞ。」
次に声を発したのは浩司だ。ただ、小さすぎて誰にも届かない。
「俺は、行かねぇぞ!」
本人もわかっていたのか今度ははっきりと、言い直した。そして、続ける。
「お前らは行くなら勝手にしろ。ただ、行くなら俺はここでお別れだ。俺は……自分の命が大事だ。先のことも考えると、命がいくらあっても足りねぇ。」
そして、もう一度、今度は決意を込めた声音で言う。
「俺はお前らにはついていけねぇ。…お別れだ。」
「そうか、でも、気持ちはわからなくもないんだ。あんなのに立ち向かうのは命知らずか、ただのバカだ。」
ジュンジが浩司の答えを聞きいう。
「……」
「僕は止めないよ。他人に命を捨てろなんて命令できないからね。」
「ああ、悪いとは思ってる。それでも、俺にあいつに立ち向かう勇気はねぇ。もし、無事に救出出来たらハーゲルさんにお礼は行っといてくれ。」
それだけ言うと、和人と波瑠、それに優希がぽかんとしている間に浩司はその場を離れ、さっさと路地の向こうへ消えていった。
「さあ、和人、結論が出てないのは君だけだよ。少し冷血に思われるかもしれないけど、言い争っている時間はない。君はどうするんだ。」
「お、俺は……」
正直なところ、和人には一人別れて旅を続ける度胸もない、かといってもう一度あいつに立ち向かう度胸もない。
逃げたいけど逃げる勇気もない。多いほうの輪からも離れたくない。かといって立ち向かう勇気もない。
はっきり言って浩司以上のヘタレだ。本人にもその自覚はある。
―俺にも力があれば…―
この町に来てからこう考えるのはいったい何度目だろうか。
勇気はあった。だが、勇気を振り絞って騒動の中心に立ち向かった結果、その勇気も折れてしまった。
頭の中でまとまりかけた思考はそのまま霧散していく。
ごんっ!
「痛っ!?」
「何一人、黙って暗い顔で考え込んでんのよ?、ジュンジが言ったじゃない。考えてる暇はないって!今は…行動あるのみよ!」
「……」
―だからって、考え込んでるやつの頭に上から思いっきり拳を投下することないだろ…―
突然拳骨をくらって抗議の目を波瑠に向けるが、そのころには不思議と頭の中を覆っていた負の感情はきれいさっぱり消えてなくなっていた。
「……そうだな、俺もつれてけ!ハーゲルに助けてもらってばっかだと俺の気がすまねぇ!!」
和人の精いっぱいの強がりを聞いたみんなの空気が少し和らぐ。
「…本当に…いいんですか?」
これまでことのいきさつを黙って不安そうに聞いていたララが問いかける。
「ああ、浩司は、まあ、行っちゃったけど、俺たちは力になるよ。」
「でも…」
―追いかけなくていいんですか?―
ララは言外にそう告げているようだった。
「いいよ、それにあいつももう子供じゃないし、縁があれば…まあ、また会えるだろうしな。」
「そう、ですか…」
少し、悲しそうな顔で答える。
「それに、浩司だからな。自分から命の危険がありそうなほうへは行かないとおもう。今は、生死が怪しいほうが先だ。」
和人達はそうまとめると早速、ハーゲルをどう手伝い、あの怪物から無事みんなで逃げ出すか、作戦を考え始めるのだった。




