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ファンタジア・ホライゾン  作者: 日暮 十四(ヒグラシ)
第二章 バルナ小国群 クルディス王国編①
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12話 裏切り

遅くなってすいません(__)

「ふ、ファーベル殿.....?」


恐る恐ると言った感じでカマベルは吹っ飛ばされた衝撃がまだ完全に癒えていないのかひざまずいたような姿勢のまま、肌の色や気配が完全に変わってしまった「部下であるはずの男」に恐る恐る声をかける。

「彼」の姿はどう頑張ってもさっきまで和人と対峙していた男どころか本当に人間なのかという疑問すら生まれてくるような姿になり果てている。

その光景はカマベルの体勢もあってか、第三者からは何かしらの儀式で悪魔を呼び出したように見えたことだろう。

しかし、第三者であるはずのない和人から見ると、その光景はそんなことを考えている余裕すらなく、よそ見をすればその瞬間に殺されるとさえ思わせるような、とても「危ない」光景だった。


「大丈夫、俺は正常だよ。」


「男」は穏やかな笑顔で、ただし聞いているだけで背筋が凍りそうになる声で言った。

そして穏やかな笑顔のまま、続ける。


「むしろさっきまでの俺の方がどうかしてたぐらいだ。」


ファーベルがそう言い切るかどうかのタイミングで彼の右腕が持っていた剣ごと掻き消えた。


「え?」


そう声が漏れたのは果たして俺だったのか、カマベルだったのか。

その声と同時に起きた変化は一つ。

それは、





カマベルの頭が胴体から離れたことだった。




元の位置に戻った「彼」の右腕を見れば、常人の動体視力では到底追いきれぬ速さで振るったであろう剣に、わずかばかりの血液が付いているのが見て取れた。


ドチャッ。


和人がその血がカマベルのものであることを頭で理解するのと、不快な音を立てながらカマベルの頭が地面に崩れ落ちたのは、ほぼ同時だった。

時間にしてわずか数秒。

しかし、そこに居合わせた人々には何十倍にも引き伸ばされて感じられただろう。


「自分でもびっくりだわー、なんでこんなクズいやつの下についてたのか・・・」


「彼」はさっきまでとは違い、とても軽い、明るい声でそう言いながらカマベルの頭を固まっていた数人の兵士のほうへ蹴り飛ばす。

その時、事態に気付いていない屋外で抗議運動を起こしているのか、住民の声が喧騒と化してそれなりの大きさで聞こえていたはずだったが、不思議と「彼」の声と頭が地面に転がり、地面にぶつかりながら転がる鈍い音だけが屋敷内によく響いた。


「ひ、は、伯爵…」


兵士の一人がつぶやくのが聞こえた。他の兵士はただ茫然としている。

ファーベルは、兵士たちのその反応に満足したのか、笑みを浮かべ、その笑みを好戦的なものに変えながら、ハーゲルのほうに向き、言った。


「さあ、ハーゲル、続きをやろう。邪魔者は消えた。」


その場にいながら和人は蚊帳の外のような扱いに一瞬ぽかんとしながも、内心で安堵のため息を漏らした。

しかし、蚊帳の外扱いだからと言ってその場に居合わせてしまって(実際には自分から突っ込んで)いる

のだから、何もしないという選択肢はないことを理解しているのか、必死に頭を回転させる。


―どうする、今俺にできることは…


そして和人はハーゲルのほうに視線を向ける。すると今までの出来事に全く動じていないかように腕を組みじっと目をつぶっているハーゲル。


―よかった。ハーゲルさんは全く動じていないみたいだ。さすが、実戦経験が違…


しかし、彼の頭はそこで再び固まった。


のちに彼はこう語る。


『あの時固まったのに関しては、俺は悪くない。ハーゲルが悪い。』


そう、ハーゲルが悪いのだ。

彼は腕を組みながら黙ってつぶっていた目を開け、一言こういってのけたのだ。


「なぜ?」





「「は?」」


思考が停止し、思わず声が出てしまった。そしてそれはファーベルも同じだったらしく見事にハモってしまった。ファーベルもどうやらその答えは理解できなかったらしい。

その驚き用と言ったらつい敵同士にもかかわらず顔を見合わせてしまったほどだ。


「…………」


あまりの予想外の言葉にどう反応していいのかわからず、周りに静寂が訪れる。

そしてハーゲルの言葉が和人の緊張を途切れさせてしまった。

そして屋敷内の静寂は外の喧騒をより一層引き立てる。


「――――。」


外から聞こえてくる声一つ一つは聞き取れないが、屋敷内に明確に怒りの感情は届けた。


「…なぜだ、なぜ戦わない!?」


だが、外の声など関係ないとばかりに何とか再起動を図ったファーベルはどうにかハーゲルと戦おうと、必死に食い下がる。


「…俺は娘を取り戻し、彼女が安全に暮らせればそれでいい。カマベルが死んだ今、彼女が再びつかまる理由がなくなった。ついでに圧政も防げた。これ以上何を望む?それに、意味もなくお前と戦っているほど俺も暇じゃない。」


ハーゲルの中ではララが無事に暮らせればそれで満足で、それを妨害する脅威がなくなったから、戦う理由がない、と。


―ふざけんなっ!


前半のハーゲルの言い分で頭がいっぱいになった和人は、最後に付け足された一言の意味を深く考えず、必死にハーゲルを説得にかかる。


「いや、ハーゲルさん!そいつも十分脅威だって!!」


「そ、そうだぜ!?俺だってほっといたらお前の娘を襲うかもしれないだろ?」


どうにかしてハーゲルを戦わそうと俺の言葉に乗っかるファーベル。はたしてそれが正常かどうかはともかく、この様子なら正常な会話も成立すりかもしれない。

そんなことを考えて和人が親バカ(ハーゲル)の説得より、何かほかにうまいエサをまいてファーベルにお引き取り願おうかと考え始めたのと、

ファーベルが自分の言った言葉の意味を理解してしまったのか、再び獰猛な笑みを浮かべたのがほぼ同時だった。


「……彼女…お前の娘のことだな…さっきいた金髪の娘だな。なら、俺が戦う理由を作ってやる。」


そう言って、ファーベルは一度ハーゲルに背を向け玄関のほうへ向かおうとする。


「待っ――」


俺は事態に気付きファーベルを呼び止めようと叫ぶが、一言、ハーゲルが発した消して声量が大きかったわけではない一言によって、自分の声が掻き消えたかのような錯覚に陥った。


「何をする気だ?」


その声には確かな怒気がこもっていた。

それは和人に向けられたわけではないにも関わらず、その気迫の余波を受け気を抜けば崩れ落ちそうなほっだった。

それを直接向けられていたのも関わらず、ファーベルは獰猛な笑みを崩さぬどころかむしろ深めながら、振り返る。


「いぃぃねえぇぇぇ。ようやく昔みたいな気迫が戻ったんじゃないかぁ?」


―ん?昔?


そんな疑問が頭をよぎるが、和人にわかるはずもなく、のんきに聞ける状況でもない。

またもや和人を蚊帳の外に置き去りにして激しい戦闘を始める、ハーゲルたち。

その激しさは先ほどよりも数段増し、もはや和人の目に追える速度を超えている。それは兵士たちにとっても同じだったようで半ば呆然としながら黙って追いきれない二人の戦闘のほうへ視線を向けている。


そんな時だった。


ギョロッ。


そんな効果音が似合いそうなほど、事切れていたはずのカマベルの目玉が見開き、壊れた人形のようにぐるぐると回り始めた。



来年には更新ペース上げる予定です....多分

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