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ファンタジア・ホライゾン  作者: 日暮 十四(ヒグラシ)
第二章 バルナ小国群 クルディス王国編①
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5話 覚悟

新年明けましておめでとうございます。

去年最後の週は執筆が追い付きませんでした。

ごめんなさいm(__)m

山のなかを進むこと数十分。まだ、山を抜けられそうにない。

どうやら街側よりも密生地側の方が斜面が緩やかになっており、その分森の長さが広くなっているらしかった。こっち側の方が木々の密度が高く進むのが難しいのも関係しているのだろう。

結局、降ってるはずなのに登りとそれほど変わらないぐらいの疲労感に苛まれる一般人組であった。


それからさらに数十分が経過したところでようやく木々が途切れて上から見えた真っ白な地面が見えてきた。

上を見上げると降っていたはずの山が右側に見える。

どうやら相当大回りしてきたらしい。


山頂から見たときは雪が降っているわけでもないのに真っ白な大地を見てのしばらく呆然としてしまった俺たちだが今回はそんなことはなかった。なぜなら…………


「はぁはぁ、フォフォフォッゲフゲフゲフッ....街の近くにこんな場所があったとは……」


「ええ、全く。来るときに馬車を使えないのが難点ですが………」


「なぁに、収穫は奴隷や平民を使えばよかろう、全く、近くだと言われれ来てみれば……。まあ、これを使えば儂の懐もまた暖まるってもんよ。」


そこには男が二人、上機嫌そうに話し込んでいるからだ。一人は脂ぎった肌に悪趣味なアクセサリーをつけた貴族っぽい、どうやってここまで来たのか疑問に思うような体型の持ち主、もう一人はその男にへりくだって常に前で手を揉んでいる、いかにも商人らしき男だ。

男たちの回りには何人かの護衛らしき人たちが剣を携えてあたたりを警戒している。


「それにしても、お前はここを前から知っていたようだが…なぜ領主である儂に早く言わなかった!!」


貴族らしい男は下を見ながら突然豹変した。

叫んだ内容から察するにどうやら彼は領主らしい。

名前は何て言ったかな....確かギルドでボードを見たときに書いてあったはずだが……うーん、思い出せない。


思い出せない上、別にたいしたことではないので置いておくことにして、ここ、クルディス王国は王都を含め5つの都市からなりたっている。王都はもちろん国王が統治しているわけだが、残りの4つの都市はさすがに王が直接統治するには遠すぎるので各都市に王が選んだ領主-同時に公爵位も得る-がいるわけだ。

つまり 、あの脂ぎった顔で悪そうな表情を浮かべている豚貴族もその四人のうちの一人ということになる。


その公爵兼領主の視線の先には男が一人、護衛のうちの2、3人に取り押さえられて這いつくばっている。


「……う…ぅぅ」


男は何も答えない。

ここからでは取り巻きの護衛たちが邪魔で男の表情までは確認できない。

だが、男の呻き声を聞いて一人表情が凍りついた。いや、豚公爵を認識したときからすでに凍っていたのかもしれない。


「そんな……あんた……」


どうやらあそこで這いつくばっている男はメリダ氏の旦那らしい。


そうか、あれが旦那さんなのか………


と、そこまで冷静に分析した俺は……


「…ん?…ぇ?ぇぇぇえええええええええええ!!??」


事態に俺の低性能な脳みそでは処理が追い付かず、ショートしてしまった。


ガン、バシン、バコン。


「ちょっ、なにやってくれてんのよ!?」


「アホー!!」


「ボケー!!」


そして辺りになにかを殴る音と仲間の罵声が響き渡る。

罵声を出していないメンバーも皆頭を抱えている。


「誰です!?そこにいるのは!?」


商人風の男がこちらを見て叫び終えるのと、俺が地面とキスするのはほぼ同時だった。


「え~と、通りすがりのもの…です?」


そんな俺を無視して浩司が弁解を試みる。


「それでそうですかと納得するとでも思ってるんですか!?」


「ですよね~」


浩司の苦し紛れの言い訳は当然のように商人風の男の男にしては少し高い声に突っぱねられる。


「さてはお前らもこの場所を知っていて儂に黙っていたな?」


「ま、まさか……ねぇ?」


波瑠が弁解しながら起き上がった俺を含むみんなの方に視線を向けてくるが誰も目を合わせようとしない。


「いや、そうに違いない!お前ら!こいつらを引き捕らえろ!!」


豚がそう叫ぶと回りにいたメリダ氏の旦那さんを拘束している取り巻き1人を除いた6人がこちらに剣を抜いて向かってきた。


「……チィ、やるしかないのか?」


浩司が呟く。


「…あんたがそれ言う?」


「「やられるしかないのか」の間違い?」


「しかも後ずさりながらって………」


この中で一番勝率が低い(ララとメリダ氏を除く)浩司がいうとかっこ良さそうな台詞も台無しである。

少しでも緊張を解こうとしたのか今回はフィーリアが辛口なのも趣深いところである。


「……ララはメリダさんをつれて下がってろ。」


この世界ではじめての対人戦、結局一番最初に覚悟を決めたのは俺だったようだ。

俺がそういうとララは一瞬、不安そうな顔をしてからコクンと頷いて半停止状態のメリダ氏を引っ張って茂みの奥の方へ退避する。

一瞬、ララが茂みの奥に退避する前に迫り来る兵士の方を見ていたが、立ち位置的に表情までは見えなかった。


実は内心で『かっこよく決まった!』という叫びと『そもそも俺の失敗から始まってるんだよなぁ』という情けないため息がせめぎあっているのはここだけの秘密である。


………顔に出てないよねっ!



「……ねぇ、人を殺したこと………ある?」


取り巻きの兵士がここまでの半分の距離を詰めようとしたところで、波瑠が唐突にそんなことを普段よりトーンを落とした声で呟いた。

俺は何て答えていいのか分からず、


「………お前はあるのかよ?」


聞き返した。


「私は………ある」


少しの間を開けてそう答えた波瑠の声はどこか哀愁の意を帯びて聞こえ、普段からは想像できないほど大人びて見えた。

その目に浮かんでいるのは罪悪感だろうか、それとも………

今年は投稿日が変則的になりそうです。

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