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ファンタジア・ホライゾン  作者: 日暮 十四(ヒグラシ)
第二章 バルナ小国群 クルディス王国編①
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2話 新たな出逢い

俺達はその後一晩を経てクルディス王国の首都である王都セントナムから見て北西にある町、ベルクについた。


「ここ……よね?」


「あ…ああ、地図によると確かにここのはずだ」


そこは一見廃村と見間違うほどに廃れていた。

門の外から見える建物は看板が取れかかっていたり、もうずいぶん前に取れてしまったのか、折れた跡だけがのこり、看板自体がどこにも見当たらない建物まである。

そして何より人通りが少ない。

お世辞にも明るい町と言う言葉が出てこないほどだ。


「と、とりあえず入ってみよう。」


クルディス王国には国境線に検問所はあるが各町入るときに特に検査があったり、入り口に兵士がたっていたりしない。

王宮がある町、セントナム以外は町の隅の方に兵士の詰め所があるだけだ。


「……」


「これは……」


事前に得た情報より酷いかもしれない、と言う言葉を呑み込む波瑠。


「とりあえず、泊まるところを探して、その後冒険者ギルドにいって情報収集しよう。」


ジュンジの言葉にとりあえず宿を探し始める一同。とりあえず町の中央通りに行ってみることにする。


町の中央通りに来てみると、人通りは少し増えた気がする。建物も店には看板が出ていて、まだ経済が生きているとかろうじで実感できた。

ただ、やはり行き交う人の表情はどこか切羽詰まった感じで、余裕がないのは誰が見てもわかった。


「宿はどこか……」


……ドサッ。


「「………」」


「……さて、宿はどこかなー」


「「おい!?」」


わかってますよ、冗談ですよ冗談。

と言うわけで俺は目の前で倒れた少年(?)に声をかける。

服装はぼろい布切れ一枚と言ういかにもスラム出身といった感じの下手をすれば年齢一桁の少年だ。

「……おい、大丈夫か?」


「…………」


…返事がないただの屍のようだ。


仕方がないので、浩司に抱えてもらい、なんのためらいもなしに少年をつれていくことにする。

親を探そうとか、兵士の詰め所につれていこうとか、そういうことが頭からスッキリ抜けている一同。

いいことはしているのだが、全員どこか抜けていることも否めないのだった。


その後宿に行くも浩司が背負っている少年を見てことごとく断られ続けたので断念。仕方がないので町周辺でまた野宿することになった。優希がなにか騒いでいたが今は人助け優先だ。

中央通りから町を抜けるまで、助けた少女と同じような服装のやつがバタバタと俺たちを見た瞬間倒れていったが、きりがないので少しの葛藤の末放置して通り抜けたのは蛇足か。


再び町の出入り口についた頃にはすでに日が傾き始めていた。

少年もいっこうに起きる気配がない。


まさか本当に死んでるんじゃないだろうな?


「とりあえず、その子のことは後にして、日が暮れきる前に、夜営の準備を終わらせよう。」


そう言って夜営の準備を始めるジュンジ。他のメンバーもそれに倣う。

日が完全に地平線の向こうへ暮れる前に何とかテントを張り、火を起こすことに成功した一同はそのまま晩飯の準備にはいる。

今日作るメニューは残りわずかになってしまったパンとクルディス王国に入る前に狩ったバルナホーンの肉を途中に自生していたハーブで来るんで焼いたもの、それからトマトもどきが余っていたのでミネストローネ風のスープにすることにした。

肉の担当は浩司で、スープは波瑠の担当。あとは、少年が起きたときの世話と、見張りだ。

町の近くだからといってモンスターが全くいないわけではない。

バルナホーンとは、名前にバルナとついているところから想像できるだろうが、バルナ小国群にしか生息していない角がやたらと大きいトナカイのような魔物だ。狩るときにはそれなりに苦労したが、その分肉は絶品だ。

自生していたハーブは、クルディス王国にはいってから浩司がこの草はハーブの一種だとか言ったので採ったものだが、はたして本当にハーブの一種なのか……

ただの雑草じゃない…よな?

正直俺は植物は全く知識がないのでここは浩司を信じるしかない。とりあえず毒草ではなさそうなので食っても死にはしないだろう…たぶん。

そんな感じで料理を作っていると、つれてきた少年が匂いに反応して目が覚めたようだ。


「う……ん…」


「ん、目が覚めたか?」


「………」


とりあえず起きたが、寝起きで頭もはたらいておらず、何が起きたかわからないといった感じで辺りをキョロキョロと見回している。


「ここどこ?」


「町を出てすぐの草原、かな? 」


優希が自信無さげに答える。


「今、ご飯作ってるところだからもうちょっと待ってて。」


波瑠が少し離れた場所で、スープをかき混ぜながら言う。

すると思い出したかのように少年のお腹がなる。

料理が完成したのはそれから数分後のことだった。


「はい、完成~♪」


「ーーーーっ!」


さっきまで倒れていた少年は波瑠の言葉に反応して目を輝かせながら料理の方に跳んでいく。


なんか、はじめて会ったときの優希を思い出すな。


スープの入った鍋にそのまま飛び付こうとするので必死に止めて皿を渡してスープを注いでやる。


すると少年は無心にスープにがっつく。食いっぷりからしてどうやら口にあったらしい。

尚、このメンバーの、食事は優希がいるためいつも大量に作ってあるので飯にがっつく奴が一人、二人増えても問題ない。

まあ、それが普通の冒険者パーティなら余裕で半月は余裕で食いつなげる量の食糧を一週間足らずで食い潰しかけている原因でもあるのだが。


俺たちは少年が美味しそうに食べるのを確認してから各々自分の分の晩飯に手をつける。

味は驚くほどに旨かった。スープも旨かったが、浩司作の焼き肉が特に旨かった。

少年に渡したところ食べた瞬間にポロポロと泣かれてしまったのだが、その時の波瑠と浩司の顔は言わなくてもわかると思う。



俺たちは晩飯を食べ終わった後、情報収集もかねて少年に自己紹介をしてもらうことにした。

はじめは心なしか、かたくなっていた彼も食べ物を食べて腹が満たされたお陰か今は少しは心を開いてくれている気がする。


「あたしはララ。一週間ぐらい前に、家から飛び出してきたんだけど、どのギルドも年齢二桁にならないと登録できないし、大人たちはフケイキフケイキ言ってばかりでどこも女のあたしなんか雇ってくれなくて路頭に迷ってたんだ……。」


女だったのか。

とりあえず少年、もとい家出少女だったことが発覚した。

年齢二桁って…一体彼女は何歳だ?一桁かもしれないとは思ってたけども!


「……一体何歳なんだ?家に帰る気はないのか?」


「9歳!家には帰れない。」


「元気だけはよろしい。何で帰れないんだ?」


返事を聞いた浩司がさらに追求する。


「……あたしの家は農家なんだけど……跡継ぎでも、働き手でもないやつにただ飯を食わせる余裕がない、奴隷商に売るって言う話を親がしてたのを盗み聞きしたから逃げてきたの♪」


ものすごく明るい口調で言われたが、ものすごい深刻な話なのは気のせいだろうか?


「…………」


「だからあたし、いくあてがないの。お兄ちゃんたち旅してるんならまぜて♪」


「…………」


「分かった」


「!?」


「やたー、ありがとー、小さいお姉ちゃん!」


悩んでいると、あっさりフィーリアが了承してしまった。彼女はお姉ちゃんといわれて何やら嬉しそうだ。どうやら自分が一番年下なのが若干コンプレックスだったらしい。

こうして、10歳に満たない少女ララが旅の仲間に加わったのだった。


来週は期末テストのためお休みします。


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