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9話 ゴブリン討伐・上

一週間がたった。

言語の方はなんとかなりそうだ。今では片言だが日常生活に支障がない程度ならしゃべれているとジュンジに太鼓判をもらったので間違いない。


そしてこの一週間で浩司、優希共にD級まで昇格した。

そして、大きく変わったことが1つ、なんと、浩司が受けた新料理の考案依頼でこの村にカレーが普及し始めていた。浩司がカレーをこの世界にある食材でスパイスからつくってのけたのだ。

ただ、残念なことといえば米がなかったので麦飯で代用するしかなかったことぐらいか。


今この村ではカレーを麦飯にかけて食べるか、パンにつけて食べるのが密かなブームになっている。


こっちの人に米を説明しても、大抵、麦のことだろう?という返事が返ってきたのでこの世界には無いのかもしれない。


転生者まよいごの村というぐらいだから米ぐらい知ってるだろうと思っていたが、村ができたのが実はおとぎ話に出てきそうなほど昔の話らしく、現在住んでいるのは転生者まよいごの子孫で米については全くといっていいほど知らなかった。


さらに転生者まよいごは結構頻繁に来ているのかとおもえば、この村に俺たち以前に訪れた転生者まよいごの記録は100年ほど前に10~15歳ぐらいの3人組が現れたのが最後だったらしい。


今回まとめて4+1人来たのは果たして運が良かったのか悪かったのか……


そして、報告することがもうひとつ、なんと俺の財布の中身が600セドンを超えた、波瑠にまで借金した俺の財布の中身が!

やっぱり優希の飯代を払わなくてすむと助かるなぁ。


話は変わるが明日、浩司と優希のC級昇格もかねて、最近近くの森の中に発見されたというゴブリンの村を襲撃することにした。ゴブリンは武器を使ったり、魔法を使ってきたり、集団で連携してきたりと厄介な相手なのでパーティでも村を壊滅させることができればC級昇格に文句なしだそうだ。


最近わかってきたのだが、冒険者のランク制、どうやら細かいことはほとんど決まっていないらしく(さすがにS級やSS級は話が別だが)、ほぼ担当者の独断と偏見で昇格するかしないかが決定されているようだ。


それがわかってきた時のショックといったらもう……


そういえば波瑠とジュンジも魔法の特訓がうまくいっているらしく、波瑠に


「明日の仕事でぎゃふんと言わせてやるわっ!」


と、どっかの童話に出てくる魔女が出しそうな、不気味な笑い声と共に言われた。


さらに浩司に、


「明日の前衛は俺に任せとけ!」


と自信満々に言われたときには、不安しか感じなかったのは仕方がないだろう。


なんたって浩司の戦闘シーンなんて一番最初に出会ったときに、猪に押されてたところしか見てないしな……


そんな、不安を感じつつ今日は完全にリラックスモードな和人だった。

他のメンバーについては特に突っ込みどころが無かったので割愛することにする。

強いて言うなら、優希の、ゴブリンは食用にならないとわかったときのがっかりした顔がなんとも残念そうだったことぐらいか。


次の日、とうとうゴブリンの村を襲撃する日だ、まだ規模は小さいらしく、俺たち4人だけで普通の依頼として受けるようだ。

俺たちはギルドに行き依頼をうけてゴブリンの村があるという森に入った。





森にはいってから5分ぐらい歩いたが村どころかゴブリン一匹見当たらない。

そんな状況に最初に音をあげたのは波瑠だった。


「ちょっと……、村なんてないじゃない、情報がでまだったんじゃないの?」


「まだ5分ぐらいしかたってないだろ、こんな村の近くに、ゴブリンが村を作っていたら、もっと被害が出てるよ。」


「それもそうだけど……」


准次の言葉にしぶしぶ口を閉じる波瑠。

しかし10分、15分とたっても全く異変がない。


そして、森にはいってから20分がたとうとして、いい加減波瑠が限界に達しようとしたとき、異変が起きた。


「ちょっと、ほんとに情報がデマだった…ぶへっ!?」



カランカラン。



波瑠が何かにつまずいたと思ったら、木の板同士がぶつかり合ったような音が辺りに響いた。


どうやら波瑠がつまずいたのは原始的な紐を板を通した侵入者感知用のトラップだったようだ。


俺とジュンジはとっさに警戒体制をとる。

後のメンバーはというと……お、浩司はとっさに剣の柄に手を当てている。今回は便りになりそうだ。

優希は……ダメだ、出発時には手に持っていたはずの弓を背中にしまって、その手には、いつの間に採ったのか分からない、木の実が握られていた。

波瑠は言わずもがな。


「ここからは慎重に行くぞ」


なんとそう言って真っ先に歩き出したのは浩司だった。


まだあってから日は浅いけど、浩司に先導される日が来るとは思わなかった……


そんなことを思いつつ、とりあえず浩司に習ってみんな、張られた縄を跨ぎながら奥に進む。

少し進むと、前方からガサガサとなにかが近づいてくる音が聞こえた。


やはり、そう簡単には的本陣に突っ込ませてくれないらしい。


音がやんでわずか数秒後、ヒュッという鋭い音と共に矢が飛んできた。


それを戦闘にいた浩司が盾で受け止め……


「おわっ!?」


…………ずに避ける。


何で避けるんだよっ!!


矢は浩司の横をすり抜けて俺の方に飛んでくる。

俺は迷わず盾を前にだし矢を弾く。

今回は一発食らっただけで壊れるということは無さそうだ。

そうしている間に今度は小さいが火の魔法が飛んでくる。


「ウォーターシールド!」


それを准次が前に出て何か薄い膜のようなものを展開する。

火は膜に当たった瞬間鎮火した。


そこで攻撃が止まった。

そして俺はあることに気づく。


フィーリアがいない。


すると攻撃が飛んできた方向の茂みがガサガサと音をたてて、フィーリアが出てきた。羽織っていた茶色っぽいマントが少し血で汚れている。


「終わった。」


「おつかれ~」


准次は予定通りというように、帰ってきたフィーリアに労いの言葉をかける。


「「いつの間に……」」


む、浩司とハモってしまった。


「波瑠がトラップに引っ掛かったときから敵が近づいてるのが臭いでわかってたから、隠れて隙を狙ってた。」


「すごいな。」


「獣人の五感をなめちゃダメ。」


そんなことを話しているうちに次の敵が来たみたいだ。


俺はみんなの位置を確認しようと辺りを見回す。


ーあれ、優希がいない。


俺がキョロキョロしていると、


「どうしたのよ?」


疑問に思った波瑠に声をかけられた。

どうやらさっきのことは無かったことにしようとしているらしい。


「いや、優希の姿が見えないなと思って……」


すると波瑠が無言で上を指す。

いや、まさか……と思いながらも上を見上げると、

いた、彼女は、木に登り太い枝に乗って弓を構えていた。

おお、頼りになりそうだ。矢を避けた誰かさんと違って(チラッ


ただ、口にミカンぐらいの大きさのよく分からないカラフルな木の実を加えていなかったら完璧だったんだけどな。


そのまま彼女はつがえていた矢を俺たちの前方に向かって三本ほどたて続けに放つ。


「ゴッ!?」


「ゴブッ!」


「ゴブリ……」…………ドサッ


放たれた茂みから、なんか、突っ込みどころしかない低い、おっさんの声みたいな悲鳴が聞こえてきたが、突っ込んだら負けな気がするからスルーしておく。


「ゴブリンってあんな鳴き方するんだー」


波瑠が何かを諦めたような目で呟いたが、反応は半分に別れた。

もちろん、ジュンジ、フィーリアと俺、浩司だ。

それぞれがどんな反応をしたかは想像におまかせする。

なお、優希は木に上っていたため、悲鳴は聞こえなかったらしい。


まあ、ものすごい声のトーンも低かったし、聞こえなくても仕方ないだろう。

……俺も、できればあれは聞きたくなかった!夢とか、ロマンとかそういう理由で!








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