中編
レストランにて仮面合コンのシステムを説明を受けました。素性や年収などは明かさずに、自分で決めて置いたニックネームでお互いを呼び合い、仮面を付けた状態でお互いに合コンを行うとの事です。顔をお互いに仮面で隠していて、さらに名前では無くニックネームで呼び合う事によって素性を隠して行うと言う感じが出るみたいです。私は自身のニックネームを自分の名前が鵜飼悠だから、『ユーユー』と言う事にしました。自分の中ではこの『ユーユー』と言うニックネームはかなり良い線言っていると思う。なにせ、私にしか思いつかない良いニックネームだと思うし。ドヤァ!
(おっといけない。いけない)
今の私は仮面合コンに出ている『ユーユー』。この私の魅力で、今日こそ絶対に男を捕まえて見せるんだから!
(けれども、他の参加者は……何というか独特、ですね)
と、私はそう思いながら周りを見渡していた。そこに居たのは私以外の仮面合コンに参加している女性陣の姿があった。けれども、どう見ても普通の女性に見えないんですけれども……。
1人は金色の髪の上に狐を思わせる耳、そして桜が描かれた藍色の和服を着た女性。気になる所と言えば、何故か尻の方から生えているように見える金色の9本の尻尾。……まさか本当に生えている訳がないよね? 狐じゃないよね?
そしてもう1人は何か身体全体が青っぽいんだけれども、大丈夫だったりするのだろうか? 顔が青ざめていると言う言葉は聞いた事があるけれども、身体全体が青色に染まっているのは聞いた事が無いんだけれども。背中に羽も生えていたり、身体全体に水流が流れるようになっていたりと明らかにCGでどうにかなるレベルを超えているんだけれども……。どうなっているんだろうか?
(名前は……『いなり』と『せーれー』? まさか……ね。アハハハハ)
私はそう思いつつ、「アハハ……」と笑いながら男性陣を待った。そう、別に私は女性陣と友達になりに来たのではない。単純に男を選びに来たのだ。例え自分以外の女性陣が人間でないように思えているけれども、そんなのは関係ない。大切なのは男、そう男なのだ。
「あ、あの……」
そんな事を考えている私に声をかけてくる『いなり』さん。
ん……? 何でしょうか?
「え、えっと私、こう言うのは初めてで、でも……緊張してて、それで……」
「はぁ……」
合コンが初めて、と言う事でしょうか? けれども、どうして私が週3で合コンに行っている事が分かったのでしょう? も、もしかしてそこまで私のオーラが強かったとか? ふっ、無駄に思えていた合コンもちゃんと意味があったと言う事ですか。
「分かりました。こんな私で良かったら存分に頼ってくれて結構ですよ。ただし、その狐の耳みたいなのをモフモフさせていただけるのならの話ですが」
「こ、これは、その、えっと、あの……//////
そ、そうですか。妖狐族の女の耳を撫でたがると言う事は//////
わ、分かりました。私も覚悟を決めました。で、では『ユーユー』さん、お願いしまちゅ//////」
そう言って、私の膝の上にいきなり頭を乗せて横になる『いなり』さん。え、えっと……なんでそんなに怯えながら頭を乗せて膝枕の体勢になっているんですか? 私、どちらかと言えば男の方が嬉しいんですが。そりゃあ、私の膝枕は気持ち良いですよ。何せ、心友の佐取ちゃんも「ゆ、悠の膝枕は反則的よ……」ってとっても気持ち良さそうに言っていたもの。後で500円を請求したら怒られたけど。払わせたけど。
「……『ユーユー』さん、それに妖狐の紅葉姫。はしたない」
そんなコントみたいな事をしていると、『せーれー』さんがそう言う。それに対して『いなり』さんが怒った風な顔(顔自体は仮面で隠れているけれども、雰囲気でそう感じた)で『せーれー』さんを嗜める。
「大地の水精霊さん、私の事を名前で呼ばないでください! ここは『いなり』と言うニックネームで呼び合うのがルールですよ」
「……合コンで女に懸想を抱いている時点で、既に当初の目的から外れている。ここは男性との仲を取り持つ場であろう」
す、すごい。『せーれー』さん。言っている事はすっごく正しい。身体は青ざめてて、明らかに場違いなのに。
「うっ、そ、それはそうですけど……。で、でも、水精霊さんだって本当は『ユーユー』さんの事がす……」
「わー! わー! 言うなー!」
そう言って、『せーれー』さんが慌てて彼女の口を止めに来る。今の台詞、さっきまでの冷静な『せーれー』さんの台詞じゃ無かった気が……。
「そう言うのはご法度なの! ……精霊は清く正しく美しくです」
「分かりましたよー」
何だか……どんどん合コンから離れている気がする。いや、今日こそは良い男を捕まえるんだ。私はそう縄を持って決意した。
捕まえる(物理)。