前篇
合コンとは合同コンパの事であり、その目的は結婚相手を決める事です。私、今年で24歳になるOLの鵜飼悠は結婚相手を探すために合コンを週3のペースで行っています。けれども、未だに結果は良いとは言えません。
まぁ、別に顔が悪いとかスタイルが良いとかは無いんですよ……自分的にも私はかなり美人の部類に入ると思います。……はい、自演乙ですか。すいません。けれどおあなたの周りにも居ませんか? 容姿とかに問題がないとしても、年収で結婚までに辿り着けない人とか。ひとこと言わせてもらえるとすれば、私は多分、年収で避けられているんだと思います。OLって年収が結構、他の人達よりも低いから。
「私にはあんたのその、自分には悪い所がないと言う性格にも問題はあると思うわ」
と、私の心友(親よりも凄い心の友)の岸佐取ちゃんがそう言って来る。岸ちゃんはこの会社の同期で、人の話を良く聞いてくれる心の広いクールな子。眼鏡を上げる所とか、私の中では佐取ちゃんが一番魅力的な部分だと思う。すっごく綺麗なのに、何故か浮ついた噂は聞かないんだけれども。
「……人の魅力的な部分を眼鏡と言う付属品にされるのはあまり嬉しくないわ」
「あれ……? 言葉に出てた?」
これでも私、口の堅さには自信がある。親には「あんたはその笑顔の下の黒い想いを見破られないようにしなよ」と言われつつ、気持ちがばれない事に関しては褒められたくらいなのに。
いつの間に言葉にしてたんだろう?
「けれども、私ってかなり美人だと思うんだよ。性格だって別にそこまで酷くはないしさー」
「そうね。あなたはスタイルも良くて、童顔な所も凄く可愛いし、それに部長や社員に毎朝のように笑顔で挨拶しているから隠れたファンみたいなのが会社に出来ていて、それの対処に私がどれだけの苦労と労力を費やしたと……」
「―――――――佐取ちゃん? 大丈夫?」
正直、後の方から早口になっていて良く聞こえなかったんだけれども、一応、褒められたんだよね?
「まぁ、最近は女が男に求めるハードルが上がっているのと同様に、男が女に求めるハードルも上がっているのよ。だから簡単に結婚するのは難しくなっているの」
な、なるほど……。別にこのあらゆる美貌を兼ね備えた私が神様から試練を与えられていたとかではなく、単に世間的な問題か。あぁ、良かった。
「……その時々出る黒い思考はさておき、そんなに年収で差が出ると思っているのならば、"仮面合コン"にでも行ってみる?」
「かめん……合コン?」
「仮面を付けてお互いに素性を隠して合コンすると言う物、らしいわ。私は行ってないけれども。容姿や年収とか関係無く、性格とか相性の良さで選ぶために仮面を付けて合コンするとかなんとか」
仮面合コンかー……。それならば、年収とか関係ないよね!
「よし、それじゃあ仮面合コンを探してみるよ! ありがとね、佐取ちゃん!」
「と、当然と言って良いわ。何せ私達は心が通じ合った心友なんですから」
うん、私の方は佐取ちゃんの気持ち、分かんないけどね。
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昼休みに会社のパソコンを使わせて貰って、仮面合コンをやっている店を探し出していた。探すと都内のレストランでやっている事が分かった。佐取ちゃんには「会社のパソコンを使うのはダメだと思うけれども」と言われたんだけれども。
早速、私はその仮面合コンに参加申し込みをお願いした。今日の夜に早速行われるみたいなのでそこに出来るならば混ぜて欲しいとお願いしたが、今日の夜はもう既に席が埋まっているらしくて出来ないみたいである。
残念だが……諦めきれない。私の座右の銘は『思い立ったが即日』である。だから、どうしてもとお願いしてみた所、22時からの部が1名だけ空いているから入れるとの事です。是非にとお願いしました。
いやー、なんでも諦めずに頼み込んで見る物ですね。人間、諦めない事が肝心です。
その仮面合コンに出たのが間違いでした。