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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

マテーテルは良い子

作者: 小竹是助

マテーテルはとても良い子です。

お母さんから言われた事はちゃんと守る良い子。


今日もちゃんといい子でいました。


だけどマテーテル、学校の帰りに小さなお花を見つけます。


「あら、可愛いお花」


手を伸ばしてから考えました。


まてよ、余計なものを持ってきてはいけないって、お母さんに言われてるわ。


そう思って花を摘むのを止めました。

そうしていたらお友達のヤンデルがそばにかけよってきました。


「マテーテル、マテーテル。森の奥にとってもきれいなお花がさいているんですって、みにいかない?」


あら、だめだ。寄り道してはいけないって、お母さんに言われてるじゃないの。

マテーテルはそう思いましたが、きれいなきれいなお花を見たくてしようがなくなりました。


ちょっとだけならいいかしら、そう思ってヤンデルの誘いに乗る事にしたのです。


うすぐらい森の奥。

ほそい道をどんどんとヤンデルは駆け抜けていきます。


「まってまって、ヤンデル、そんなに早く走っては追いつけないわ」

「あはは、マテーテルは走るのが遅いのだから。ほら、もっと早く早く」


せかされるままに、マテーテルはふだん足をふみいれることのない、森の奥へやってきました。

あしもとがくらくて、ふだんあそんでいる森の中とはおおちがいです。

なんだかこわくなって、ヤンデルの方をみました。


「マテーテル、おいでおいで、お花はこっちよ」


よぶヤンデルの顔が、くらくてあまり見えません。


「どっち、ヤンデル。どこにきれいなお花があるの」


のぞきこんだマテーテルにヤンデルは黄色のきらきらした花をゆびさしました。

それはマテーテルがいままでみた花のどの花より美しく、このくらい森の中、太陽に光のようにキラ


キラと輝いて、春の風のように温かな色をしていました。


なんてきれいなんだろう。


あまりに綺麗なお花にマテーテルはなにも考えずに手を伸ばして花の茎を掴みました。


「何するのよ、マテーテル!お花は摘んじゃいけないって言われてるでしょ!」

「いたい!やめてよ、ヤンデル!」


もっと近くで見たかっただけなのに、きゅうにヤンデルに手をつかまれたマテーテルはびっくりしてしまって、掴んだ茎をつよくひっぱってしまいました。

そのため、花は根元からおれて、土にたおれこんでしまったのです。


「悪い子だ!マテーテルは綺麗な花をおってしまった悪い子だわ!何てひどいの!」


ひどいのはヤンデルだわ。

マテーテルは頭の中がまっしろになりました。

ヤンデルさえきゅうにつかみかかってこなければ、花はおれることはなかったのに!


「わたしは わるい こ なんか じゃ ない!」


マテーテルは今までかんじたことがないぐらい、頭がかっかとして、ヤンデルをつきとばしました。


「わたしは わるい こ なんか じゃ ない!」


なんども、なんどもそういいながら、ヤンデルをなぐりつけます。

うちつけて、なんどめのことでしょう、マテーテルはきれいにきれいにわらいました。


「ほら、きれいになったでしょう、まるでおはなみたい」


そうです、お花は手折ってはいけません。

だから、マテーテルは笑いました。

このまま森のおくで、このお花はきれいにさくのです。


マテーテルは良い子ですから、もうこの花を摘んだりしません。

ふかい森のおくで、ヤンデルはきれいにさいたのですから。


「怖いわねぇ…ヤンデルがいなくなってしまったのですって」


そういうお母さんにマテーテルはかわいらしいえがおで答えました。


「わたしはだいじょうぶ、良い子だもの」



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― 新着の感想 ―
[良い点] 「良い子でなければならない」という強迫観念がグロテスクな様相を呈していく展開が巧いです。 母親が絶対的な支配者に見えて、実は娘の心の闇に終始気付かない描写も皮肉ですね。 [気になる点] …
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