探求
月光を浴びて冷たく光る二丁の拳銃をしまい来た道を一瞥する。下に転がるは複数の死体。どれも頭か心臓を一撃で貫かれている。
無謀にも敵の来た方向、そっと風上へと歩みを進めた。
頭痛がする。頭の中で映像が流れる。
誰かが微笑んでいる。淋しそうに苦しそうに微笑んでいる。何かを探し求めている。手を伸ばしている。だから、伸ばしてみる。
届かない。
映像が消える。視界を確認する。誰もいない。ふと旅に出た理由を思い出す。命が始まった訳と自分の欲しいもの。どこかを目指す理由は心ではないどこかに答えはないとしるため。
果てしない旅の途中で町の外れに立ち寄る。草木が風に揺られている。
疲れた両足をそっと投げ出して寝転ぶと浅い眠りが繰り返される。
何度も同じ横顔が同じ言葉を投げ掛けてくる。
「生きているだけで悲しいと思うのは私だけなの?」
重い瞼を持ち上げる。煙草に火をつけた。煙が宙をうねり虚ろに消える。世界が春へと近付いているのを感じさせる桜色の風が吹き荒れる。立ち上がり風をかきわけるように遥かかなたを目指す。忘れられた丘にたち黒く光る二丁の拳銃を抜く。月光を浴びて深く息を吸う。すんだ空気は喉を通り躯へと染み込む。
四面楚歌。
既に囲まれていた。
拳銃を構えた。
森がざわめく。星が語る。それらは真実を語った。
「命の始まりは生きて愛されたいと泣いた一人の赤子」だと。
拳銃をしまい二丁の拳銃をしまい来た道を戻る。少し進み一瞥する。春の風は錆びた鉄の香りを浚い行く。ジャケットを風に揺らし髪をなびかせる。
探し求めるは、
愛。