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chapter8 濡れた手

【やはりクトゥルフの物語を書くと嫌でも水と関わってしまいます】

【これもそんな話なのです】

 それはとある男の夢に現れた存在。そしてその男が昇華し、すべてを引っ掻き回す邪神へと姿を変えた。

 そして世界中から物語が集まりそいつの心…感情が出来始めた。楽しい事が好きでやりたいことをやる…それがその邪神となった。

 色々な姿を持つそいつは様々な形で人の前に現れ惑わし奪い狂わせた。

 今夜、そいつがまた姿を現しまたほかの人の人生を狂わそうとしている。これはの黄衣の男とは無関係だがどうにかしなくてはならない事として受け取ろう。

 幸いなことに優秀な人材が近くにいてくれた。まとめてどうにかできるのだろう、いやどうにかしてくれる。

 今この大地にいるのは我々だ、いつまでたっても過去におんぶと抱っこしてはいられないんだ。

 ………だから現れた邪神様には異界へお帰りいただこう。






「何の音だ!」

 隣のベッドから伯父が目を覚ます。眠りも浅かったようでかけてあったシーツを一気に吹き飛ばす。

 私はというと伯父の言う音にはまったく気づかず、それに反応した伯父の声でゆっくりと目を覚ます。

「ぅぅ…。どうかしたんですか?」

「破裂音…銃声か? お前はここにいろ、良いな?」

 銃声、心当たりがあるとすればまず魔理さんだ。彼女なら一丁や二丁持参していてもおかしくはない、次点がアレンさん、銃社会…確証はないけどまぁ持っているかもしれない。

「私もいかなくていいんですか?」

「当たり前だ。そんな危ない場所にお前を連れて行ける訳ないだろ」

 伯父はそういうとチョッキを着込み部屋を出た。

 あぁ見えて優秀な探偵である伯父なら心配はいらないだろう。と部屋を見回すと懐中電灯がおきざられているのを見つける。

 廊下を覗いてみると真っ暗で月明かりもあるが十分とは言えない用に見える、伯父の姿も確認できない。懐中電灯を自分の分と合わせて二本持つと私は廊下へ身を潜めながら進み出た。






「ニャル…、えっともう一回いいか?」

「ニャルラトホテプです。様々な名前がありますが、これが一番有名でしょうか」

 なんだそりゃ、だがまぁとりあえずあの化物の名前だってことで良いらしい…多分。

 そのニャーなんとかが箱の中を見たら問答無用で襲ってくるのも理解した。トレジャー映画の鉄則みたいなもんだしな、宝物には番人がいるものだ。

「じゃあ私が当てた弾丸は無駄だったのか?」

「おそらく」

 私が明らかに嫌そうな表情を作るとそれを見ていた玲が呆れた。多分また銃を持ち込んだ事に対しても呆れているのに違いない。

 しかし自慢の銃が効かないとなると厄介だ、今回は上手く引いてくれたようだが次に襲われてもどうにもできないまま負けてしまうじゃないか。

「アイツは影でしか行動できません。言ってしまえばこの…懐中電灯こそ最高の武器でしょう」

 そう言って伊高氏は得意げに懐中電灯を机の上に乗せる。なるほど、それならこれはうってつけのアイテムだな。

「じゃあこの部屋は明かりをつけたままにしておけば良いのですね?」

「えぇ、どうやら時秋君はそれに薄々ながら気付いていたようですね」

 伊高氏の寝室からは時秋君の部屋や私たちの部屋の窓も見えるらしく、明かりがついたままであったことを伊高氏は覚えていたらしい。

 今朝少し眠そうにしていたのは慣れない環境…つまり明かりをつけたまま寝るという事でバランスを崩し…えーと…まどろっこしいので私は結論『明かりさえあれば大丈夫』とまとめることにしておいた。

「アイツはそこで休んでいる二人しか狙いません」

「注意します。それで、もう一つ…ホウさんの事ですが」

 私が失念していた事を玲が聞く。そうだそうだ、全く忘れていた。

 駆けつけた時には二人とよくわからないニャンなんとかがもみくちゃになっていた用に見えたが、ホウさんは火かき棒を持っていたし時秋君の頭部は負傷していた。その負傷は私が寝かせてからすぐさま手当した、ちゃんとした包帯使ったから大丈夫なはずだぜ、うん。

「まだ不確かですが、なんらかの眷属だと思います」

「眷属? それは…どういう意味ですか?」

「眷属ってたらアレだろ? 何か親玉がいるんだ!」

 それぐらいは私だって知っている、きっとどこかにドでかい親玉が封印されていて、その子分なんかの眷属が復活の儀式に必要な生贄か何かを集めにやってきたのだ。そう私はしたり顔で言い放った。

「…………」

 玲の目が痛い。

「や、やめろ! そんな目で見るな!」

 哀しい目が玲が私を見てくる。それどころか目を合わせてくる、確実に精神を追い詰められて私は軽く発狂しかける。

 手が震え何故か背中が寒くなる。周りが誰か見えない存在で埋め尽くされていくような錯覚、息苦しくなる。潰れる、圧縮、よくわからない圧迫感の中で呼吸が止まりそうなほど小さくなっていく。

「まぁ、大体そんな感じでしょう」

 伊高氏がぽつり呟く。

 瞬間、押しつぶそうとしていた圧力は消散し、まぶたにあった熱は引いた。

「多方、ここにある送られてきた品を回収して儀式でもなんでも行おうという算段でしょうね」

 伊高氏の救いとも言える真面目そうな声が私を楽にする。

 玲は大きく目と口を見開き伊高氏を見ながら硬直していた。玲も玲で大変だな。

「倉庫にある木箱を調べた方がいいかもしれません。失くなっている物から対策が練れるかも」

 ここは二階の時秋君の部屋だから行こうと思えばすぐにでも行くことができる。早ければ早いほうがいいと伊高氏は立ち上がって窓から下の様子を伺う。

 二人はまだ目を覚ます気配がない。明かりをつけていれば安心だろうと伊高氏が言うので電気さえ落とさなければ問題はないだろう。

 やることが決まった、固まっている玲を起こして三人で固まって動く。

 道中は何事もなくすぐに倉庫の中へ入り、玲が廊下を警戒し伊高氏と私が箱を調べる。

 片っ端から木箱の蓋をこじ開けていく。夜にはうるさい音が鳴るがこの屋敷は広い、きっと迷惑にはなっていないはずだ。

 数分後、全部の木箱を調べ終わる。空っぽの木箱を眺める伊高氏は話しかけづらい雰囲気、玲も廊下を慎重に警戒していた。つまり私一人が暇だということだな。

「親玉ってどんなんだろうな」

「………」

 返事がない、そんなんじゃただの屍と何も変わらないんだぜ。

「玲、何か見えたか?」

「………」

 ここまで無視されるとさっきの狂気が戻ってきそうだ。

「なぁ…」

「ッ」

 玲が小さく舌打ちをする。その小さな音で私の精神が完膚無きまでに粉砕される。再びまぶたが熱くなってくる。

 その場にしゃがみこんで頭を抑える。色々と限界がきそうだ。

「あんたが何か言うから本当にきたじゃないのよ」

 玲はそう言うと目立たないように照らしていた懐中電灯の明かりを倉庫の奥へ向け、一寸も見えない闇を凝視する。その言葉を聞いた私は懐かしさを覚えた私はあの頃のようなチームワークで壁に銃を構えながら張り付く。

 それを伊高氏がいつもと変わらない笑顔で見ていた。

 伊高氏が手に持ったライトで廊下を照らさないように私と貼りついている壁を照らし私と玲の手元を照らす。玲が私にわかりやすく『合図があるまで待機』とハンドシグナルを出す、軽く頷く私、見えていないはずなのだが玲はすっと手を戻す。

 足跡は聞こえないが倉庫前まで明かりが来る、どうやら相手も懐中電灯を持っているらしい、どうやら宿泊している誰かのようだ。例の化物じゃないとわかって力を抜く。

「どうだ? 誰かわかったか?」

 光に照らされないように姿勢を低くしている玲へ話しかけると体ごと倉庫に戻り顔をこちらに向ける。

「何も…横に来たら仕掛ける。私が抑えるから銃構えて威嚇して」

「了解」

 そうしてそんなことを話していると懐中電灯の明かりが収縮していく、もう少しでその時が来る。

 相手が開かれていたドアを見つけ立ち止まる、なるほどこの隙を狙うつもりだったのか、私なら絶対に通り過ぎてるだろうな。向けられた懐中電灯の死角から玲が飛び出して相手を倒す。相手は倒れ込みながらも玲の腕を掴み逆に押さえ込もうとするが玲も負けじと掴まれた腕を揺らしながらもう片方の腕の肘を相手の首へと突っ込む。

 そしてその激しい応酬を傍から眺める私と伊高氏。

 隣で見てるだけにはいかないので銃を構えて「大人しくしてくれ」と勧告すると、相手はすんなりと大人しくなった。

 伊高氏がその間に玲が飛びかかった拍子に転がっていった懐中電灯を拾い上げて暗がりの中の相手を照らす。

「痛てて……っ、まさか突然飛びかかられるなんてね…」

 木原さんが頭を抱えていた。やっちまった…そんな空気が暗い廊下に溢れ始める。

 飛びかかったときと同じぐらいの速さで玲が押し倒した木原さんの上から離れる。伊高氏もいつもと変わらないように見えるが明らかに無表情になっているように感じられた。

「あ、あの……、これはですね…」

 玲が慌てて何かを話そうとするが言葉が出てこないらしくどもる。

「あー…なんとなくわかった。色々とな」

 木原さんはズボンを払いながら立ち上がると私の方を見て、「さっきの銃声はそれか」と呟く。手に握られた物を見る木原さんの目は冷ややかというより呆れに近かった、いつもみる玲の目だ。慣れた視線をもらい「なにか?」というふうに首をかしげる。

「ちょ! ちょっと!」

 突然もうひとつの影が現れる…、まぁいるとは思っていたが花音ちゃんだった。どうやらつい先ほど木原さんが忘れた懐中電灯を手渡し戻ろうとしていたらしい、そこに物音が聞こえ駆けつけてみたらこんな状況だったという事。

「いや、あのこれはね…。伊高さんと一緒に倉庫を調べに…」

 玲、頑張ってくれ。私はもう頑張れないよ、当事者だけどもう眠たくてしょうがないんだ。私はゆったりと銃を腰のホルスターにしまい、羽織った上着で包み込む。

 そういやさっき一発ナントカカントカって奴にぶち込んだっけか、それで木原さんが来て…そんなことはいい、確か装弾してないな、後でやっておこう。

「つまり…例の不審者だと思って?」

「はい…本当に申し訳ないです!」

 玲が木原さんに向かって頭を下ろす。私はあれだ…ギリギリセーフだろう、伊高氏だって笑ってるからな。木原さんは少し怒り気味の花音ちゃんにまぁまぁと宥めるように手のひらを向ける、それにため息をつく花音ちゃん。

 夜だっていうのに騒がしいな、パーティー気分が抜けきっていないのかもしれない。ちょっと飲んじゃったからかもしれないな。頭もちょっとくらくらする、たかが数杯ぐらいでくらくらするなんて困るぜ、と自分の体に聴かせる。

「魔理さん達、木原さん達も…そろそろ遅いですし、部屋に戻って休みましょう。玲さん、この事は明日になってからでも間に合うでしょう」

 この事というのは多分盗まれた品々に関する事なのだろうな。どうやら伊高氏の中である程度状況が理解できてきたようだ。

 瞬間、腰あたりを何者かに触られる。ビクッとした後に反射で真後ろへと振り向き空へ正拳突きを繰り出す。何もない場所を殴った拳は虚しく慣性そのままを体に伝えてあやうくバランスを崩しかける。

「何やってんのよ魔理、やっぱり酔ってるんじゃないの?」

「大丈夫だぜ、大丈夫。触られた感触がしたんだ、何かいるかもしれない」

 そう言うが早いか伊高氏が私の向く方向に懐中電灯を向け照らされた場所を見つける。全員がそれに続いて闇の中を眺めるがもう何の気配すら感じ取れなかった。

 少しふらつく体のまま腰のホルスターがある位置をぽんぽんと叩く、確かにそこには硬い感触があった。

「皆さん、気をつけて。おやすみなさい」

 私たちは木原さんらと別れて部屋へと歩き出した、途中で伊高氏とも別れて玲と二人で部屋につく。

 玲も相当疲れていたのかすぐにベッドの上で横になる。続いて私もとベッドへばすんっと飛び込むと、腰に銃入のホルスターをしまいこんでいるのを忘れていたのに気づいたが遅かった。

 妙な悲鳴をあげてベッドから飛び退く。おかげで酔いは覚めた。玲が横になりながらまた呆れた目で私を見ている。

「それちゃっちゃと脱いじゃいなさいよ。ホルスターも外しなさいよ」

 勿論、と羽織を脱いでハンガーにかける。ホルスターをそこらへんに転がしておくわけにもいかないので枕元へと投げておく。

「それにしても…伊高さんの言ってたあのオカルト話、本当なのかしら」

 ホルスターが枕元に落ちるのを確認してからハンガーに視線を戻す。玲は突っ伏しながらも伊高氏の言っていた事を思い出しているようだ。

「儀式とか…もう訳わかんない。あんたそーいうの好きそうよね」

「おう、任せとけー」

 まぁ今は伊高氏を信用するかしないかはどうしようもない事だ、やるべき事は疑いながらも指示通りやること、いつものお仕事となんら変わりないように思えた。

 休みでもお仕事となんら変わりない、自分で思った言葉が皮肉っぽく自分へ届きちょっと気が滅入る。せっかくの休みだっていうのにな。

「で、あんたはこの事どう考えてるの?」

 突然聞かれて少し悩む。どう考えているとかはないのだが、起こったら楽しいとは思っていたのかもしれない。結論として「特に何も」と答える。

「まぁそんなだとは思ってたけどね。電気消してくれる?」

 はいはいとハンガーをかけて電気のスイッチへ向かう。微妙にベッドから遠い位置にあるから手探りでいかなきゃならないのが大変だ。

 ぱちりと電気を消す。手探りでベッドのある方へ向かっていく。

 向かっていく途中、何かが静かな室内に響いている事に気づいた。廊下からじゃない、ドアには内鍵をかけたはずだ。窓はカーテンを締められ外は見えないが静かな夜だったはず。

 聞こえる音はぴちゃりぴちゃりと水が滴る音。玲は気づいているのかまったくわからないが、嫌に気になる性分の私はすぐにスイッチへ手を伸ばす。

「んー……、眩しい…」

 玲が言葉を漏らすが、私は全然違う方を直視していた。

 私の羽織っていた上着の内側…丁度ホルスターがあった位置が黒く濡れていることに気づいた。先ほど、ハンガーにかけた時からそうだったのか? 疑問は尽きないが慌ててあたりを見渡す。

 まず確認したのがホルスターと玲、両方共異常無し。次に床…部屋中をぐるりと見回す。どこにも異常がない、濡れているのはあそこだけのようだ。

 不安になりながらドアへ耳を当てる。何も聞こえない。

「早く寝なさいよ…明日に響くわよ…」

「あ……あぁ、消すぞ?」

 再びぱちりとスイッチを押すとベッドへ飛び込む。そして枕元に投げ捨てられていたホルスターを掴むと胸にぎゅっと抱きベッドの中で丸くなる。

 絶対に静かなはずなのだが、そこらじゅうの木が小さくきしむ音を敏感になった感覚が拾い上げて私に恐怖を与えていく。

 あの濡れた部分、何があったのだろう。私はふと地下通路へ降りた時を思い出す、そういえばあそこもそこらじゅうが濡れていた。関係があるのかもしれない、だとしたらびしょびしょの怪人でも住み着いているのだろうか。

 そんなんがいたらいつもなら会いたいと思ってしまうのだろうが、今夜の私はただベッドの中で丸くなり、早く意識が微睡み(まどろみ)の中に溶ける事を願っていた。

 卯月木目丸です、最近お疲れモードです。

 さてこの『6th』という話ですが実際にセッションを行い、それをある程度残して文にしているわけなのですが…。

 実際には『5th』も『4th』も存在します。それは実際にセッションを行った物や行う予定の物、または話の裏話や細かい補完ストーリーとなっています。

 『6th』が完結してもまた次のストーリーがあるというわけです。そして次にどれを書くのかはその時の気分などで決まるでしょう。

 それでは、また次章でお会いしましょう。

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