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chapter2 集結

【年末にあげれればよかったのですが、遅れてしまいました】

【少人数でしたがクリックありがとうございました!】

 この世界には様々な街があって、その中に数え切れないほどの人々が自由に行動している。その中に例えばとても背徳的なものがあったとしても、別におかしことではないはずだ。

 古めかしい館の本棚だったり、下水道の中だったり、そこら辺のビルディングのオフィスにだったり。きっと溢れていると思うんだ。

 何処からか聞こえた声だったり、巷で言う幽霊だとかかもしれない。でも、ソレに直接触れてしまう人々はほとんどいない。

 そう、ほとんど。

 これもその数少ない人々の記録だ。





 広めで綺麗なキッチンの中は可愛らしい鼻歌が満ちていた。

「ふんふーん♪ お客様も来たし、掃除も終わり!ベッドのシーツも直した!」

 彼女はとても上機嫌に真っ赤かな紅茶に角砂糖を三つぽちゃんと落とす。そのあとすぐにティースプーンでくるくるするのも忘れずに。

 匂いを楽しみながら彼女は紅茶を飲む。ぴかぴかのキッチンに一人だけの空間を作っていた彼女の顔はとても嬉しそうだ。

 まぁ、その空間に入るのはちょっと気が引けるな。

「姉貴。楽しんでるトコ悪いけどさ、俺の分もお願いできない?」

 俺はこのメイド…卯月 時葉(うづき ときは )の弟、卯月 時秋(うづき ときあき )だ。

「わわわ。何してんの、時秋!」

 姉貴は真っ白いティーカップを皿の上に置き、あたふたと俺の分の紅茶を注ぎはじめる。

「それにしてもやっぱ、メイド服似合ってるね」

「お姉さんを茶化さない!砂糖は?」

 軽く手を振っていらないことを知らせるとちょっと照れる姉を見る。美人の『自慢の』姉だからな、お世辞じゃなくて本当に似合っているし家事手伝いも器用な彼女にはお手の物だ。

「はい。ちょっと熱いかも」

 ありがと。と小声で言ってティーカップを受け取る。そう、言ってしまえば完璧なメイドなのだ。家事手伝いの上手さよりも、何よりも…。

「んーおいし……あちちちっ!」

 このドジッ娘加減が何よりも完璧なんだ。

「熱いから気をつけてね。姉貴」

「こ、このぉ…」

 俺は結構有名なルポライターでカメラやボイスレコーダーを常備している。あと鍵開けなんかも得意だ。

 そんな俺がこんなパーティーに呼ばれたのは姉貴を雇っている主人の計らいとして、カメラマンとして雇われたのだ。まっ、そういうことにしてくれとの事だったけどな。

「仕事頑張ってね。俺は部屋で休んでるからさ」

 飲み終えたティーカップを流し台におろして、俺は用意された二階北側にある客室へ歩く。この屋敷は玄関が南側にあって、そこから一番遠い部屋になっているのが俺の部屋だ。

 正直歩くの面倒くさいな。





「あぁ、どうぞ。入ってください」

 午後十一時ぐらい、俺は二階中央階段すぐにある主人の部屋に入る。約束通り二人だけで話したいことを聞きに来たのだ。

「妻は寝ています。飲み物とかはいりますか?」

 手を使って不要なことをアピールしてソファに座る。この部屋は客間二つほどの大きさらしい、どうやら仕事の書斎を兼ねているらしい。

「では、話したいことというのをお願いできますか?」

「えぇ、勿論」

 そういうと主人、伊高 優(いたか すぐる )氏は書斎の方から古めかしく厚い本を取り出して、二人の間のテーブルに軽い音を立てて置いた。

 表紙はボロボロで読みづらいが、英語か何かでタイトルが書かれているように思えた。

 そして、相当に嫌な雰囲気がしている。糞みたいな空気がその本の周りだけに溢れている。

「……これは?」

 手を伸ばすと主人がそれを止める。無言で首を振る主人。

「これを読むことはオススメできません。私もまともに読んだことは…」

「貴方の本なのに、読んだことがないと?」

 主人は口元に手を当てて、それを離す。

「いえ、一度。その時についてお話しますよ」

「………。」

 そういって主人は語り始めた。


「それは三年ほど前でした。私はこう西洋的なモノが好きで…、ホラーとかも好きなんですよ。それで廃村を訪れたんです。そこには魔術師やらの噂がありましてね」

 三年前、R村…今は廃村となっているがそこで死体が発見された。井戸の底から男の死体が発見され、そこからどんどん不可解な事が起こっていった。確かそんな事件だったはずだ。あまり報道はされず、自然と消えていったのを覚えている。

「その死体を発見したのが、私なんです。それでその噂に巻き込まれまして」

「噂?その…魔術師やらなんとかーって言うのですか?」

「はい。あぁ、そうだ。一つ聞きたいんですが」

 そう言って主人はドス黒い雰囲気を醸し出している本を指差して、

「木原さんは、魔法ってあると思いますか?」と言った。

 何を言っているんだろうか。魔法?あの映画とかでよく見たアレの事を言っているのだろうか。

「いえ、まったく」

「そうですか。では神様とかは?」

「全然」

 主人は「そうですか」と言って、もう一度書斎へ歩くと、一冊のノートを持ってきた。

 そのノートを開くとこちら側に見えるように向きを変えて話を続けた。

「これはあの事件の事を僕なりにまとめたものです。報道されてないものがほとんどですが」

 ノートを手にとって読んでみる。まっさきに目に付いたのは『宗教』だとか『儀式』だとかいう単語だった。その中に『邪神の復活』という欄があった。

「神様…というのは、この邪神というのの事ですか?」

 主人はこくりと頷くと、もう少しノートを読むことを勧めてきた。

 とある宗教が邪神とやらの復活のために人をさらい、生贄にして儀式をしようとしていた。その儀式に失敗し、残った死体を遺棄していたのが廃村の井戸だったのだという。その死体を発見してしまった伊高氏はその宗教に目をつけられ、次に生贄にされかけていた女性ともう一人の仲間と共に宗教を潰した。

 どういうフィクションだコレは……。

「その女性というのが、彼女です」

 主人はついたてで隠れているベッドを指差す。そこには彼の妻が寝ているのだろう。

「そ、そうですか…。それで、これは…」

「まぎれもない現実です。信じてもらえるかは別としてね」

 急に主人が疑わしくなってきた。初印象は明るく話がわかる男だと思っていたが、今じゃオカルト好きだ。どういうことだ、本当に。

 時計に目をやるとすでに午前二時、かなりの時間が立っていた。

「そろそろ話はやめましょう。そのノート、持って行ってくれても構いませんよ」

 その言葉に甘えてノートを持たせてもらう。一階中央にある部屋まで戻ると思うと、骨が折れそうだ。そう思いながらドアを開け、階段へ向かった。





「………、いない」

 時計に目をやると0時。伯父と部屋を一緒にされてふて寝したのが午後九時、三時間寝ていたことになる。多分伯父も寝ているだろうと思っていたのだが、そのベッドはもぬけの殻だった。

 この屋敷の客間はすべて内側に作られており、中庭がよく見えるようになっている。中央の噴水がキラキラと輝いていた。

「綺麗ですね…。誰もいませんが…」

 その時、自分が寝巻きではなく昼の服のままで寝ていたことに気づく。やってしまった。

 伯父のベッドの近くには荷物が置かれており、ベッドのシーツは初めて見たときそのままだった。

 つまりベッドの上には触れてない、眠るなんてもっての外。

「どこに行ったのかしら…。あぁ、眠れない…」

 一度起きたら寝られない。あるある。

 そんなあるあるに苦しめられる私。こんなことなら本を持っておくべきだった。活字は気が落ち着くし、時間だってすぐ流れる。夜に読めば安眠だってできる。

 本…本、この部屋にはテーブルや小さな食器が置いてある棚すらあるのに、本がない。ずっと本に依存していた自分にとっては状況も状況、致命的なものだった。

 ベッド脇に置いておいたメガネをかける。

 このまま独り言で夜を明かすのは馬鹿馬鹿しいのでベッドから立ち上がり、もう一度部屋をぐるりと見回す。

「あ、これって」

 この館の見取り図だった。

 この部屋のとなりは小さいが書庫になっているらしい。この部屋の二・三倍の大きさはあるように見える。それぐらいの本があると思えばそこに行くしかない。

 急ぎ足で部屋を飛び出てとなりの書庫へと向かう。ノブに手をかけて勢いよく引くと、

 ガゴンッ!

「へ?」

 手元をよく見ると暗がりの中で窓から射す月明かりを受けて鈍く光る錠前が鎖にぶらさがっていた。

 あまり利用されないのか、それとも夜間だからか、ガッチリとした鍵がかかっていた。

「ふふふ…、こんなこったろうて思ったわよ」

 勢いよく髪留めのピンを取り、ちょっとしたポーズを取る。

「こんな鍵、敵じゃないわ!」






 声が聞こえた気がした。

 部屋に戻り、この時間…人気のない時間に目を覚まして、古い資料でもなんでも見に来ようかと思っていたが、その為に来た一階書庫の前に何者かがかがみ込んでいるのを見てしまった。

 そっと袖をめくり腕時計を確認する、現在は0時半、大抵の人は寝ているハズなのだが。

「…無理…」

 人影は何かをつぶやきながらドアの前に居た。目を凝らすと体格や声から女性であることがわかった。体格には自信があるし、女性相手にビクビクするのもどうかと思ったので、いっそのこと話しかけることにした。

「どうかしましたか?」

 女性は声に反応して素早く顔をこちらに向けた。目が限界まで開いている、危険な顔だ。追い詰められているような表情だった。

 彼女の手にはヘアピンが握られており、目の前には錠前が揺れていた。

 そういうことかと、一人で納得するとヘアピンを借りて鍵穴に差し込んだ。初めてではない、記者の仕事で少し汚れた事には慣れている。

 鍵はカチリと心地のいい音をたてて地面に落ちた。

「どうぞ」

「あ、ありがとうこざいます」

 彼女と一緒に暗い暗い部屋の中に入る。部屋は夏の夜だというのに凍えるように寒く、並んだ木製の本棚が寂しげに見えた。

 明かりをつけようかと思ったが、鍵までかけていて、窓は内側でどの部屋からも丸見えになっているだろう。変にバレるのは嫌なので持ってきておいた小さなライトで床を照らしながら窓へ近づく。

「あ、あの。本当にありがとうございました」

 彼女は丁寧にお礼をしてくれた。メガネをかけていてインテリのイメージ。俺と同じ目的なのだろうか、まったくわからない。

「俺は卯月 時秋(うづき ときあき)、招待客さ。君も?」

「はい。通 花音(とおり かのん)です…」

 窓のカーテンを閉めて明かりを付ける。たくさんのハードカバーが一気に視界に現れた。

大半のそれは古びていて背表紙もボロボロだったが、花音は楽しそうに目に付いたものを抜き取り閲覧していった。

 自分も何かおかしいものが無いか辺りを見回してみる。暗くて気づけなかった場所とかがあるかもしれない。本棚の隙間、床、天井、隅っこにある読書用の机とイス…。

「なんもないか…」

 一人で不服そうにため息を吐くと、それを心配そうに見ていた花音が本そっちのけで近寄り声をかけた。

「良い本、ありませんでしたか?」

「ん?あ、まぁね」

 別に本を探しに来たのではないが、彼女の刺さる程の心配そうな顔が気になり近くの本棚へ目をやる。

 全部アルファベットかと思っていたが日本語の本が置かれているのを見てとっさに手に取る。

 タイトルは掠れて読めなかったが、中身を開くと延々とよくもわからない宗教観や宇宙人について語っている小説らしい本だった。興味はないが女性の手前、ちょっとだけ読んでおいた。

「まぁ、古い書庫だろうしね。僕はこれで」

 そう言ってドアノブに手をかけドアに力をかけると、思いっきり硬い音が鳴った。ドアは確かに動いたが少しだけの隙間しかあかず、そこからは鎖と先ほど落としたはずの錠前がぶらさがっていた。

 何者かがここに外から鍵をかけた。

「開かない?鍵が、誰かいるのか?」

 腕一本通るか通らないかの隙間に顔を貼り付け、薄暗い廊下に目をやる。全然外は見えないが、何者かの息遣いがあるように感じた。それは勘違いかもしれないが助けを求められるかもしれない、だがそうする気にはなれなかった。

 鍵をかけたのはそこにいる奴かもしれない。いや、ほとんどそう思っていいだろう。

 かと言ってここにいることがバレたら拙いかもしれない、大声で人を呼ぶわけにもいかない。

「頼れるのは自分だけか…」

 そうつぶやくと、またしても心配そうな彼女の瞳を見てぽつりと言い直した。

「頼れるのは自分と君、だったね」

 彼女はこくりと頷くと三冊ぐらいのハードカバーを床において錠前に手を伸ばす。彼女の細い腕でも狭い隙間を通すのはギリギリのようだった。

「大丈夫かい?痛くない?」

「大丈夫です。どうすれば良いですか」

 彼女は先ほどその錠前を解いたヘアピンを必死に鍵穴に差し込もうと錠前に当てていた。

それを見た瞬間、俺の考えが何か変わった。うまく言えないが、もっと上手に他人に接するようになれるのかもしれないなって俺は思った。今まで記者として情報を得ることばかりに躍起になっていたが、これからは悪くなく生きれるかもしれない。

「あ、あの…。どうすれば」

 そういえば今、姉は寝ている頃だろうか。いや、彼女はメイドだからもしかしたら見回りだとか明日の仕込みとかしているかもしれないな。

「あ、あの!」

「うわっ!? あ?あ!あぁ!ごめんごめん。もうちょっと奥に入れれるかな?」

 こうして鍵開けをレクチャーしたのは初めてだったのでちょっと拙い言葉になってしまったが、少し時間が経つとまた錠前はゴトリと床に落ちた。

 二人で胸をなで下ろすとともにドアを押し開ける。

 その時、暗い廊下の奥の方へとさらに薄暗い人影が走っていくのを二人は見つけた。咄嗟に花音を反対側へと向かわせ安全な方へ誘導すると一人で人影を追うことにした。

 曲がり角を二つ、玄関ロビーが目に入ると人影はすでに消えていた。それと同じタイミングで花音が中央階段を全力疾走しているのを確認して、それを追う。

「ひゃっ」「うお?」

 花音の短い声と男の声が耳に入った瞬間に咄嗟に近くのくぼみに隠れてしまう。我ながら嫌な癖だ。

「伯父さん…何を?」「主人と仕事の話だ、お前は?」

 どうやら知り合いのようだ、彼女は安全だろう。落ち着いてもう一度あたりを眺めると自分と同じように正反対側にくぼみに隠れている影が目に入った。

「よし、戻るぞ。俺は眠い」「はい」

 この日の夜は結局その人影を見失って終わってしまった。

 要するにマトモに寝れなかったわけだ。






「お迎えにあがりました、羽呉様」

 市内の大きめのビルの前にちょっと豪華な車が止まり、その前にはそこに務める女性が一人立っている。

「えーと、私の友人とやらは?」

「いるぜ?早く乗りなって」

 中から金髪不良警察が手招きしているのがよく見える。傍らにはゴッソリと趣味物が詰め込まれた紙袋が置かれていた。コイツ、私の迎えだっていうのに寄り道してきやがったな。

 乗り込んでふと思う、コイツと一緒の席に座るなんて久しぶりだ。あの頃と全然変わらない匂いがしているし、懐かしい感触がする。

「いやー、楽しみだな玲!」

 魔理の一言でハッとする。気づけば二人のあいだは無いに等しかった。それを気にしないコイツもコイツだ、まったく。

「そ、そうね…」

「もうちょっとで着きますからね、一時間ぐらいで」

 久しぶりに会えた友人とお休みにパーティーなんて、楽しみじゃないわけない。

 やっと始まるんだ…やっと。

 そう…やっと。

お久しぶりです、またもや拙い文章ですがお付き合いください(自覚済み)

やっと主人公として描く六人が揃いましたので紹介したいと思います。

・羽呉 玲『警察』 警察学校では成績優秀だった万能娘。年齢は20前後

・霧斗 魔理『警察』 警察学校の同期、案の定トリガーハッピーです。

・通 花音『学生』 医学系学校二年生、伯父の手伝いをしている。

・木原 広『探偵』 探偵業を営む男、体格はいいが武術は苦手。知恵は高い。

・卯月 時葉『メイド』 メイド。家事が得意。弟想い。

・卯月 時秋『記者』 体躯もあり、技能もある有能な青年。非常に姉想い。


と、こんな感じになっております。一章6000文字ぐらいで投稿しますので軽く読んでいただけるかと思います。

次の投稿もいつになるかわかりませんが、お待ち頂けるとありがたいです。

【感想など、至らない点への指摘、お待ちしております】

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