俺とお前の今昔
山奥のド田舎にある実家で、俺は遊びに来ていた親友に告白した。
「おれ、将来は魔王になるわ」
突然の俺の告白に目を丸くしながらも、親友は「ああ、そう・・・」とやる気の無い相槌を打った。
「世界を俺色に染めるー」
「お前色・・・性質悪いな」
「うっせーよ。そういうお前は、何になるんだ?」
「じゃあ俺は勇者になる」
「はぁ?ゆうしゃ?俺、お前と戦うの?」
「世界がお前色なんて汚ないから、早々に退治してやる」
「うっせー。返り討ちにしてやんよ」
15年後。
多くの勇者達が挑んだが、誰一人敵うことのない最強の魔王。
その魔王の居城、”世界の東の城”に行って帰ってきたものは誰もいない。
自分は今、その城で魔王と対峙している。
「ここまで降りて来い、魔王!」
漆黒のローブで全身を隠しているが、魔王から発せられるプレッシャーは覆い隠せるものではない。ビシビシと全身に伝わってくる。
数多の勇者を倒してきた魔王が、今、目の前にいる。
「数々の悪行も、今日までだ!」
「ハッ!勇者とはなんと愚かな生き物か!懲りもせず、まだ我に挑むというか!」
「黙れ!今日こそお前を成敗―――ってうぉぉぉぉぉぉ!!」
バサリと脱ぎ捨てられたローブ。
そのフードで隠れていた顔は、その顔は・・・
「お、おおおおお前!アルフォンス!?アルフォンス・シュナイダー!?」
「なぜ我が名を―――って、ヴォルフ!?ヴォルフ・オスバルトか!?」
「うぉぉぉ!マジでアルフォンスかよ!?お前、何やってんだよ!」
「それはこっちのセリフだ!」
「勇者になるんじゃなかったのかよ!?」
「魔王になるんじゃなかったのか!?」
かつて"魔王"になると言っていた俺、ヴォルフ・オスバルト、職業は何故か勇者。
かつて"勇者"になると言っていた親友、アルフォンス・シュナイダー、職業は何故か魔王。
「ガキ大将だったお前が勇者!似合わないな!!」
「お前こそ!優等生で良い子だったくせに、よりにもよって魔王かよ!」
「ああ。こっちでも、優秀で最強の魔王様だ」
「俺だって、世界最強の勇者様だ!」
「ふん。じゃあどっちが上か、比べてみるか?」
「望むところだ!」
2時間後。
「いやお前、あそこでゾンビ出すってありえないから。グロいから。夢に出たらどうすんだよ」
「お前こそ、何なのその馬鹿力?城壁壊すとか、非常識にも程があるだろう」
「勇者は城壁壊して、なんぼだろ?」
「いやいや。もはや人じゃないから。それ」
「あーそれにしても疲れたー」
「右に同じ」
「なあなあ。今日泊まっていいか?町に帰る元気もねぇよ」
「好きにしろ。・・・あー・・・ダルい。眠い」
「俺、どこで寝ればいいんだ?」
「その辺でいいだろ。テキトーに転がってろ」
「ひでぇ!久しぶりに会った親友に、冷たすぎるぞ!」
「あー・・・うるせー・・・こっちは眠いんだ・・・」
「おい!アル!アルフォンス!寝るなー!!」
勇者と魔王ものが好きなんです。
争っているシーンとかムリなので、ほのぼのとした仲良しのお話しになっちゃいます。