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あべこべの傘 〜いたずらっ子と、おちょこになった傘の秘密〜

掲載日:2026/03/23

キーンコーンカーンと下校の鐘が鳴って、子どもたちが次々と学校から出てきました。


ポカン、ポカン、と傘の花が咲きます。

今日は雨ふりなのです。


元気の良い男の子たちが駆け出してきました。

男の子たちは我先に傘を開いて、ブンッと勢いよく傘を振りました。


バサッと傘がひっくり返ります。

傘って普通はキノコのように丸い形をしているでしょう?

それが、勢いよく振ったものだから、風を受けて、まるでおちょこのように裏返ったわけです。


あべこべの傘です。


男の子たちはおもしろくて、おもしろくて、ワハハハと笑いながら、何度も何度も、傘をおちょこにしました。


「こらぁ、早く帰りなさぁい!」

担任の先生が、ちょっとだけ怖い顔をして、男の子たちに大きな声で言いました。


「はぁい」

男の子たちはつまらなそうに答えて、学校を出ました。


「じゃあな、カズオ。また明日」

「うん、また明日」


友だちとバイバイして、カズオは1人で歩きはじめました。

カズオの家は、みんなとは反対方向なんです。


ひとけのない道まで来たので、カズオはまたブンッと傘を勢いよく振りました。

するとーー。


「痛い!」


小さな声が聴こえました。

カズオは驚いてまわりを見回しましたが、誰もいません。


「え?だれ?」


カズオがそうつぶやくと、また声がしました。


「ここだ、ここだ。おまえが手で持っているだろう」


カズオは自分の手を見ました。

ーー傘?


「さっきから、ブンブン、ブンブン。痛いったらありゃしない」


ーー傘が、しゃべってる?


カズオはドキドキして傘の柄を強くにぎりしめました。


「そんなにギュウギュウ握らなくても逃げやしないったら。本当に、おまえは乱暴だな」

「・・・ごめん」


カズオは素直にあやまりました。

なんだか急に傘がかわいそうになったのです。


「傘、振ったら痛かった?」

「痛かった。骨が折れるかと思った」

「ごめん」

「これからは、あれはなしにして欲しいな」

「わかった」

「わかってくれたのなら、よろしい」

「うん」


カズオは傘の柄をギュウッとにぎりかけて、慌てて手の力をゆるめました。


家に帰ったカズオは、台所で晩ごはんの支度をしているお母さんの背中に「ただいま」と声をかけて、こっそりと部屋に傘を持っていきました。

そして、机の前に座って、しげしげと傘を眺めました。

「うん」と1つうなずいてから、カズオは机の引き出しをゴソゴソとかき回して、お気に入りのシールを取り出すと、ペタリ、と傘の柄にシールを貼りました。


この傘は、カズオだけの特別な傘です。

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