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火星への第一歩

「もうすぐ火星に到着する! 全員、席につき、シートベルトを締めろ!」

ヤマトは声を張り上げた。日高国の一族の末裔として彼はこの移住計画の象徴的存在であり、その声に皆が従った。


数分後、鋭い警告音が船内を震わせた。

「ピー!ピー!ピー!」

操縦室から慌ただしい通信が入る。

「ガス圧が低下しています! 逆噴射が作動しません!」

一瞬、船内に緊迫した視線が交錯した。逆噴射なしの着陸、それはつまり制御不能な墜落を意味する。


「……エアロブレーキを展開する。全員、酸素マスクを!」

ヤマトは迷わず指示を飛ばし、操縦室へ駆け込んだ。


エアロブレーキ。それは船内の空気を外へ一気に噴出し、推進剤の代わりに減速をかける危険な手段だ。大気のない惑星であれば、全員が窒息死する可能性すらあった。

操縦席に座ったヤマトは、深く息を吸い、意を決するとスイッチを叩いた。

船体が悲鳴を上げる。

「ガガガガガッ……!」

圧力の逆噴流に揺さぶられながらも、彼は両腕で操縦桿を押さえ込み、軌道を必死に安定させる。

――そして数秒後。

大地を蹴るような衝撃が船体を包んだ。

「ドンッ!」


着陸は荒々しくも、成功だった。衝撃に歯を食いしばった乗員たちは、生き延びたことを悟り、思わず声を漏らした。

「爆発の危険がある! 全員、すぐに脱出を!」

ヤマトが即座にロックを解除し、ドアを開けたその瞬間、押し寄せる風が船内を駆け抜けていった。――空気がある。火星には、確かに大気が存在していたのだ。


人々は半ば倒れ込むように外へ飛び出した。ヤマトが最後に足を踏み出した直後、船体の奥から火花が走り、残った燃料に火がついた。


爆炎が波のように船を包み込み、たちまち宇宙船は巨大な火球と化した。赤い砂埃が吹き上がり、火星を明るく照らしていた。





ヤマト:日高国の一族の末裔で火星移住計画を立案した人物

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