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プロローグ

「あれが火星です」

操縦席から静かに告げたのは、パイロットのキーザだった。


ヤマトは前方に浮かぶ赤褐色の惑星を見つめ、低く呟いた。

「あれが……。酸素さえあればいいが……」


古い記録によれば、数千年前の「テラフォーミング計画時」には、火星には確かに大気が存在していたが、その約95%が二酸化炭素で構成され、果てしない砂漠が広がっていたとされている。人が生きられる環境ではなかったことは明白だった。

だが同時に、かつて推進されていた「テラフォーミング計画」が予定通り稼働し続けていたなら、今は違う未来が拓かれているかもしれない。その一縷の希望に、ヤマトは賭けていた。


火星はみるみるうちに大きくなり、肉眼でもわかるほど表面が白いガスの層に覆われている。宇宙船からは火星の地表の状態は全く分からなかった。

「現在の火星の大気は、どうやら不安定のようです。一旦、接近を控えますか?」

キーザが慎重に問いかける。


ヤマトは目を細め、短く息を吐いた。

「いや、燃料は往復分ぎりぎりしかない。このまま突入するしかない」


その決断の響きに、キーザは小さく頷いた。緊張が艦内の空気をさらに張り詰めさせた。


ヤマト:日高国の一族の末裔で火星移住計画を立案した

キーザ:宇宙船の操縦士でヤマトの補佐役

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