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第15話:ドラゴンスレイヤー

ジャスティナは荷車を上手にコントロールし、谷の平坦へいたんな場所を選んで着地した。

「ああ、久々の地面……!」

空中移動は楽しかったけれど、地面に足をつけるとやっぱり安心する。


谷とはいえ、その場所は意外と広い。赤茶けた地面は岩場になっていて、向こうの方には川が流れているようだ。


「ドラゴンの炎は遠くまで届いて危険ですからね。マコはお父さんと一緒に谷の散策でもしましょうか」

「え?お母さんは……」

カチリ、と硬質な音。

ふと見ると、ジャスティナは胸元に小さめの防具を取り付けていた。

「あっちの岩場の影。大物の気配がする」

そう言って、ジャスティナはニッと笑った。

「伝説のドラゴンスレイヤーの勘はおとろえていないようですね」

ヒジリもなんだか嬉しそうだ。

「伝説……ど、どういうこと……?」


その質問には答えず、ジャスティナが地を蹴った。


雄大な谷をすさまじい速さで駆けたジャスティナは、木々の生い茂るがけをひょいと登る。

「ひ、人って、あんなの登れるの?」

トントンと岩場を蹴りながらジャスティナが登った崖は、5メートル、いや10メートルほどの高さに見える。

「ああ、浮術を使ってるんです」


断崖だんがいの茂みに向かって、ジャスティナは何か魔術を放ったようだ。

ガサガサッ、と木々が揺れる大きな音がした。


「うわ……!」

マコは思わず声を上げる。

その茂みから大きな竜が飛び出してきたのと、ジャスティナが崖を思いっきり蹴ったのが同時だった。


その赤い竜は、ジャスティナの背丈の3倍くらいの大きさに見えた。赤黒いうろこに覆われた巨大なドラゴンは、いかにも邪悪といった雰囲気。

「オオオ!!!」

赤竜の咆哮ほうこうが谷間に響き、めちゃくちゃに反響した。

耳の奥がビリビリと痛くなった。


先ほど茂みに向かってジャスティナが放った魔術が刺激になったのかもしれない。赤竜は激昂げきこうし、ジャスティナの方に突っ込んでいった。

「ひぇ……」

恐怖に震え、一歩後ずさったマコに、ヒジリは言う。

「大丈夫。ジャスティナはヘマはしません」


腰につけた剣を抜刀ばっとうしながら、数メートルの崖からひと思いに飛び降りたジャスティナ。浮術をまといつつ、着地した地面を大きく蹴る。反動で飛び上がり、ためらいなく赤竜に突っ込んでいった。

金色の髪を振り乱して戦うジャスティナは、まるで獅子のように見えた。その優雅な剣術は戦闘というより、美しい舞いのようだった。

彼女の剣が、雷のようにバリバリと光っている。その剣で、ジャスティナは赤竜の首に力いっぱい切り込む。角度をグイと変え、叩き落とすような動きをした。


あとは、つま先から優雅に着地。スイッと剣を仕舞う。

その背後に赤竜が落下して、ズゥン……と重い音を立てた。

「はい、お見事」

ヒジリがパチパチ、と拍手する。


あまりのことにフリーズしていたマコも、

「す……凄い!」

我に返ってパチパチ、と拍手を送った。


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